だからって
「いや、だからさ。おもしろいことに他の世界覗いてたわけよ」 「ほぉ」 「で、ココとは別の俺たちの世界のお前達が、また別の世界に飛んでたわけだ」 「で・・・?」 「だから。人間に出来て神に出来ないってことは無いだろ?」 だって俺、神様だし。 これでも空間を統べる神だし。 だから。 「つい、な」 「「ついですむかぁぁぁぁぁ!!!」」 「あーぁ、バッカだよねぇ」
人時邂逅
眠っている人を数えてみよう。 指を刺しながらシカマルがゆっくりと口の中で数を数える。 一人、二人。 ずれていく視線、視界の中にまだ人は納まりきらない。 三人、四人。 五人、六人。 最後に、桃色の髪とその横で寝ている自分と同じ顔の人物を見た。 七人、八人。 数え終え、ポツリと呟く。 「未成年集団誘拐・・・」 「おい、人聞きの悪い事言うなよっ!」 柳が彼らにタオルケットをかけている。 真夏とはいえ、コレぐらいはした方がいいだろう。 微かに、身じろぐ者が数人。 けれども、起きない。 それはそうだろう。 空間移動はとても体に負担が掛かる。 慣れている自分や三神はともかくも。 きっと、彼らはそんなモノをしたこと無いはずだ。 あってもきっと、一瞬で転移できる簡易のモノ。 移動距離が限られた、自分達にとってはとても稚拙な物だ。 「つーかさ、コレって、あいつらだよな」 サスケがいねぇけど。 「おー、本当はな、お前だけ引っ張ってこようと思ったんだよ。  けどなー、なんかたくさんついてきた」 「・・・なんか、シカマルとその隣の女の子。  変なのつれてるわね。具現化できないみたいだけど・・・」 「獣かな。式に近い獣だね。意思を持ってる」 「なんっか敵意丸出しだなぁ。ま、俺らに適うわけが無いって判らせてやるか」 具現化できたらの話だけどな。 はぁ、と額を押さえて溜息をつけば柳に肩を叩かれる。 常識のある奴がもっといればいいのに。 常識のある奴が。 「あ、ナルトたち来たね」 きたんかい。 シカマルが心中ツッコミを入れる。 今日は任務詰めだからと言って生贄になることを逃げたのは何処のどいつらだ。 額に薄っすらと青筋を立てながら、もう一度寝ている面々を観察する。 ふと、どこか違和感を感じて寝ているほうのナルトの頬を引っ張ってみる。 限界まで引っ張って、あぁ、と声を上げた。 眉がピクリと動いて微かな殺気が漏れている。 「・・・お前」 睥睨して、次の言葉を紡ごうと口を広げた時。 背後から気配がしたので、本能のままに避けた。 次の瞬間、聞こえたのは同じ声の舌打ちと短い悲鳴。 「あたれよ」 「あたるかバカ」 「俺に対する謝罪は無いのか、おまえらっ!」 ガバリと身を起こして、目の前で冷戦を繰り広げようとしていた二人に文句を言う客。 その客を見て、ナルトがカパリと口を開けた。 シカマルが振り返れば、ナルトに遅れてついてきたのだろう他の四人も口を開けている。 そりゃそうだ。 自分も始めて見た時はココまでじゃなかったが驚いた。 もう一度視線を戻せば、客のほうも呆然としていて。 どうすっかな、と頭に手をやれば。 「「ドッペルゲンガーーーーーっ!!!」」 二重音声が響き渡った。 とりあえず名前だよな。 そうだな。 そう言う二人に呆気に取られる。 いや、確かに不便なのだろうがそれ以前にちょっともうなんか別のことをどうにかしろよ。 心中ツッコミを入れたのはナルトたち五人と客人たちで。 後の三神とこちらのシカマルはいつものように茶を啜っている。 「暗部名だと俺と被るしな」 「だからってお前も、なぁ」 「あーあ、どうすっかなぁ」 「もう一つの方でいいんじゃない?」 「けどおまえら暗部名でいくだろ」 「三人もいたらさすがにばれるって」 「ずりぃなー」 だらん、と上半身を後ろに反って。 カゲが長い髪を畳に垂れ下げる。 その後に決定事項を引き継ぐのは柳だ。 「じゃあ、名前ややこしいから暗部名でいこう。  シカマルは・・・あぁ、こっちのね。影護。これは狼舞」 自分は風冴、こっちが宮守。 で。 「セッキョウ。こいつら正式な暗部じゃねぇから、名前ない」 助っ人なんだ、と夕香が付け加えて。 「あんたら暗部名で、こいつら本名でいいだろ」 「・・・ちょっと待て」 「私達、暗部じゃないわ」 はぁ?とキバが声をあげる。 声を上げなかったものの、怪訝そうに眉を顰めるのはネジもシノもヒナタも一緒。 鼻で笑うのはナルトだ。 そして、飲んでいたお茶を目の前の客人たちにぶっかけたのはシカマル。 あまりの熱さにかけられた全員が全員悲鳴を上げる。 それを見て涼しい顔をしているのは剣だけだ。 カゲと柳は微かに顔を歪めている。 きっと、シカマルがやらなければ剣がやっていたのだろうなとは思いつつ。 どうしてこんな子に育ってしまったのだろうかとカゲが遠い過去を思い起こす。 八割がた自分が原因だと気づいていない所が痛々しい。 「下手な冗談に付き合えるほど導火線長くねぇんだよ」 「だからってコレはねぇだろ・・・」 「ひっどーい!火傷したらどうしてくれんのよっ」 「治せばいいだろ」 「「ちょっとー!シカマル、あんたどういう神経してんのよぉぉぉ!!」」 「俺じゃねぇだろっ!こっちの俺だろ、おい!」 混乱。 同じ顔が二つあるからいけないのだ。 「よし、こうしよう」 ぱん、と手を鳴らしたカゲに、視線が集る。 誰かに何かを言われる前に言葉を口早に紡ぎだしていく。 コレまでの経験の賜物だ。 「そっち組全員変化。名前は暗部名でいいな。  泊まるところは二つに別れろ。ナルト、お前んとこ半分泊めてやれ。  で、着替えとかはこっちで用意してやるよ。どうせ俺ら金つかわねぇし。  あとは・・・おぃ、何やってんだ。とっとと変化しろよ」 「わー、めずらしい」 「お前仕切ってんの久しぶりじゃねぇ?」 「慣れない事すると疲れるよ」 「うっせぇ!」 ズタボロに言われてカゲが怒鳴り返す。 客人たちはとりあえず変化をしようと印を組むが、サクラが微かに眉根を寄せていた。 『・・・ばれてる、って事でいいのよね?』 『いいんじゃねぇの?』 心話でボソリと呟いて。 相棒に確認を取る。 『あいつらだせねぇし・・・』 『もう、こんな事でばれるとは思わなかったわ!』 『話進めるべきかー?』 『・・・そう、ね。めんどくさいけど。  しょうがないわよ。この人たちに不況買ったら帰れる保証が無いんですもの』 ふぅ、と溜息をついて。 まだ騒いでいる彼らに一礼する。 騒ぎがピタリと止み、視線がこちらへと向いた。 「改めて名を申し上げます。我ら、異端の黒桜と呼ばれるものです」 「私は朔。相棒は異月」 「正体はご覧の通りです」 「本来ならばココに式を出すべきなのでしょうが、生憎と出せません」 二人を抜いた客人たちが目を剥いた。 どうやら、それを共有している仲ではなかったらしい。 悪い事したかな、とシカマルが頭をかいた。 責めるような視線が、二人へと向いている。 このまま放って置けば、何時戦闘になるか分からない。 それほどまでに、殺気が。 「お前らだったのか」 低い声で、唸るように呟いた。 「サクラ、シカマル・・・?」 「あの『異端』がこの二人だと」 「ネジとテンテンじゃなかったのかよ!」 「馬鹿じゃねぇの。そいつの性格で自分の基準で判断するな」 「そうよ。だから気付かないのよ」 ぱしり、と火花が散った。 あー、とカゲがシカマルと同じ様に頭をかいて、 とりあえずと、柳に目で合図した。 瞬間、鼻先を掠めるように客人たちの目の先に木の根が同じ数だけ振り降りてきた。 術を使った気配もないからか、素で驚いている八人。 「ま、とりあえずはそっちも名乗れ」 「・・・要。俺の横から淵其・深鷺・柚璃葉・楠藻・汐和祁。  正体は見ての通りだ」 「こっちの世界にもいるんだよね。僕たちと同じ人」 「・・・一つ、聞きたい。こちらに同じ人物がいるという事で支障は無いのか」 三神が顔を見合わせる。 その間僅か三秒。 パッと同時に八人の方へ顔を向けて。 「「「ないだろ(でしょ)」」」 「お前ら血液型あったら絶対Oだよな」 暗に『あまり答えを期待するな』と言っている。 このへんで、そろそろ場を仕切っている(のかいないのか)四人の人間関係が見えてきた気がする。 ただ、やはり目の前の大人勢が神だということは気付かずに、 来訪者達はとりあえず、と次々と変化を始めた。 それを眺めながら影護がポツリと呟いた。 「さー、めんどくさい事になりそうだ」 せいぜい有効活用させてもらいましょう。 オマケ 「あ、火影の心臓止めるからあいつら使って脅かすの禁止な」 「「えー・・・」」 「えー、じゃないよ。仕事増えるから却下」 「おもしろいのに」 「お前ら何でそういう時だけ結束すんの? あとがきと言うか説明と言うか。 『心〜』はあの話の後です。 ナルトたちに正体ばれてませんでした。 からかって遊びまくりです、異端のお二人。 『古』はえーと、中忍試験前ぐらい? 捏造の中の捏造って事で。 シカとナルは微妙に仲が悪かったり・・・だって、第一印象アレですから。 シカは小さい頃より容赦がなくなってます。 確実に保護者の影響です。
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