* 第29章  希望の光*
「フフフ……やはりあの石にはあいつが眠っているのね」

アノスは確信を持ち 躊躇なく龍目掛けて襲い掛かる。

龍のアリスストーンは光り続け 今度は龍自身の体も輝きだした。

さらには里奈と早苗の体も光だし どうやらこれは龍のアリスストーンの力なのか。

「あいつが目覚める前に殺す!」

アノスは分身を作り出し 3人のアノスが 早苗 里奈 龍にそれぞれ攻撃を繰り出す。

「きゃっ……ってアレ?」

アノスの分身の鎌は里奈の体に突き刺さっているのに何も痛みも感じない。

当然 血も出ていない。

再度自分の体を見てみると ほのかに透けているのが分かった。

「体が透けている……あっ!」

今度は里奈のアリスストーンが光出し 何かを弾き付けるかのようにも思える。

「どうして……私のアリスストーンの力は奪われたはずなのに」

里奈が考えているその間にもアノスは何度も攻撃を仕掛けるが ダメージを与えることができない。

悔しながらも分身の術を解き 一旦距離を置く。

「アリスストーンが連動しているってことね…… もはやあいつの目覚めは防ぎきれないのか?
 いや 大丈夫……私は早川家の血を獲得したのだから!」

アノスの力はさらに増大し 鎌の形がおどろおどろしくなり もう鎌というよりかは剣に近い形になっていった。

乱暴に振り上げ 走りこんでくるアノス。

龍のアリスストーンはさらに輝きを増し 鎌の進入を拒む。

しかしアノスの力が強かったのか 鎌から出る邪悪なオーラに侵食され光は消えてしまった。

そのことを予感した龍は横に転がり 避けようとするが鎌の威力が絶大で体の節々に傷が刻まれた。

「フフフ……これであいつはもう死んだも同然よ」

しかし アノスの読みははずれてしまった。

アリスストーンからは再び光があふれ出し なんと里奈のアリスストーンを引き寄せたのだ。

「あっ!」

「うわっ!」

二つに割れたアリスストーンが一つにつながる。

石の色は無色透明になり 龍と里奈の体が宙に浮きはじめる。

龍と里奈はあたふためいて 自分が今浮いていることに驚くばかりである。



『今こそ力を解放するときです』



聞いたこともない声が脳内に響き渡る。

それは里奈も早苗も同様で 耳を傾ける。

一方アノスには何も聞こえないらしく 詠唱を続けている。

『三精霊を召喚し私を呼び覚ましてください』

「えっ!? あなたは一体……誰なの!?」

『私はアリス 光の精霊……』

「光の精霊……そんな……本当に存在していただなんて」

『残念ですが時間がありません……もうじきアノスが詠唱を終えます それよりも前に……』

「わ 分かったわ!召喚すればいいのね!」

アリスの気配が消え 龍と里奈はゆっくりと地に下ろされアリスストーンの光がまた消える。

3人は上に杖を掲げ召喚呪文を唱えた。

水の精霊アリア 炎の精霊ディア 雷の精霊レキア

召喚されるとすぐさま手をつなぎ始め 何かの儀式を行い始めた。

「お前たち 今から我らはアリス様を召喚するための儀式を行う。
 防御呪文の方は頼んだぞ……」

「あっ……ハイ!」

「はい!」

里奈は急いでバッグの中から回復薬の瓶を取り出し 二人にそれぞれ渡す。

いつもなら色や臭いを気にするのだが そんなことをしている場合ではない。

龍と早苗そして里奈は一気に飲み干し 瓶の転がる音が部屋に木霊する。

「フフッ……召喚させはしないわ!」

詠唱を終えたアノスは三精霊目掛けて突進する。

薬である程度回復した3人は強化魔法を唱え アノスの鎌の攻撃を防ごうとした。

「私の鎌はね……変化するの」

「変化!?」

鎌は針状に変化し 盾の一点に集中攻撃を仕掛ける。

盾は嫌な音を出し ひび割れる音もし始めてきた。

「やばい……破られる」

「ど……どうするのよ!」

「アハハハハ 今度こそおしまいねぇ!」

盾全体にヒビが入り 隙間ができる。

そして とうとう盾は崩壊した。

アノスの笑う表情が三人の目に映る。

針と化した鎌は目の前に突き出されいた。

龍は目を瞑り考えた。

もう終わりだ。 何もかも全て……。

こんな結末は自分でも納得できないが もうどうにもならない。

元に戻った鎌が首元で光り輝く アノスの口がにやけて言った。

「死ね……」

猛烈なスピードで鎌が動く。

その鎌が何かに刺さる音が響き渡る。

龍は恐々しながらもそっと目を開けた。

しかし自分の体には何一つ変化が起きていない。

何が変わったといえば 3人の目の前に見たこともない人が立っていること。

そしてアノスの体に自分の鎌が突き刺さり悶え苦しんでいること。

一体全体何がどうなっているのか 動揺していると

一つの答えがふと浮かび上がった。

「まさか……」

「成功したみたいね……光の精霊アリスの召喚に」

「これが……アリス」



銀色の髪の毛 背は高く 上品な雰囲気をかもし出している。

アリスはこちらを振り向き ニコリと笑い3人に話しかけてくる。

「私はアリス……
 この世界の秩序を見守る精霊
 私がここに留まることができるのは持って数分です
 それまでにアノスを滅ぼすことが使命です」

「私たちも出来る限りサポートします!」

「ではあれをやっていただこうかしら」

アリスは人差し指で光を作り出し 3人の脳に直接情報を伝達する。

「では頼みましたよ」

「はいっ!」

言われたとおりに3人は行動を開始。

「アリス……アリス───!」

自分の体から鎌を乱雑に抜き取り 赤黒い血が地面を染める。

「ひさしぶりね……アノス 何百年ぶりかしら やはりあなたは封印するのではなく
 滅ぼすべきでした」

「滅ぼす!? あんたも知っていると思うけど 精霊同士では怪我を負わせることはできても
殺し合いをすることは不可能……」

「そう……精霊同士ではできない」

「ハハッ まさかこの世界で一番愚かな人間で私を滅ぼすとでも!? 一度失敗しているのによくそんなことを言えるわね!」

そう 昔一度私は早川家に召喚された。

しかし その時の早川家の受け継ぎし人は野心に溢れ 魔法を手荒に扱い 負の力が強かった。

だからあの時はアノスを滅ぼすことはできず 封印という形を取った。

私も同じく自らを小さな石に封印した。 この男はいずれ力に浸り 自我を失ってしまうと……。

私は待った。 いつかきっと私の力を最大限に引き出してくれる人を……。

何百年の時を越え私の目を覚ましてくれる者が現れた それが早川龍だった。

「あの子は私の希望の光なの……この魔法界に平和をもたらす……」

「じゃあその光……私が今ここで消してあげるわ」

アノスの標的は定まった。 それは言わずもわかるが龍。

「くっ!」

攻撃を避けるために技と曲がりくねって突き進む龍。

息を切らしながらもアノスの攻撃射程距離からずいぶんと離れることに成功。

「ボルズ!」

龍はなんと地面に向かって術を放った。

アノスは首をかしげ ニヤリと笑う。

「何をしているのかしら!? とうとう血迷っちゃったのかしら?」

「さぁどうだろね……ブリズ!」

続けて今度はアノスの足元に攻撃。

里奈そして早苗も続けて地面に向かって攻撃を開始。

地面にひび割れができ 一直線上に土がえぐれた跡が残る。

「ゴミ虫が……これ以上悪ふざけをすると……こうだ!」

鎌を宙に放り投げ 手を重ね合わせ詠唱をし始める。

黒々しい球体が生み出され それを鎌に吸収させた。

「貴様らに破滅というものを教えてあげるわ!」

鎌の色が黒に変化し 小刻みに震える。

これは何か悪いことが起こることは確定。

3人は攻撃を中止し固まって防御魔法呪文を唱えた。

「ディルエルム・シルド──!」

円形が3人を囲み 攻撃に備える。

「アハハハハ 無理よ! そんな脆い盾じゃ一瞬にして壊れてしまうわ!」

大きく両手を広げ 笑い続けるアノス。

すると突然 こちらを見つめ呟く。

「ワルドズ・エンド」

鎌にひび割れが起き 中から赤い光が漏れ出す。

「何!? 何が起きるの!?」

「やだ……体の震えが止まらない」

「俺も……それだけの魔気が」

地面が揺れだし 塔の壁が剥がれ落ちる。

足に力を入れないと倒れてしまいそうだ。

「もがき苦しむがいいわ!」

ひび割れはさらに広がり 赤い光が龍達の目を刺激する。

仕舞いには鎌が崩壊し 破片が宙に舞う。

「さよなら」

鋭い破片が盾に次々と刺さる。

「この程度ならなんとか防げ……」

「!」

突き刺さった破片は形を変え 盾を溶かしていくではないか。

そしてその隙間から次の破片が飛び込み 早苗の左腕に直撃した。

「早苗!」

「だ……大丈夫 それよりも術に集中して!」

早苗の言うとおりどんどん破片は突き刺さり 盾を溶かしていく。

「溶かすだけじゃ物足りないのよねぇ」

意味深な言葉を発するアノス。

龍はすぐさま 盾の中に入り込んだ破片を見る。

小さい音ながらも 一定のリズムを保ちながら音が鳴っていた。

そしてどんどんリズムは早くなり ピーっと高音に変わった。

「まさか…」

「里奈! 早苗! 術を解いて!」

「で…でも そんなことをしたら破片が」

「は…早く!」

無理やり 早苗と里奈に術をやめさせる。

「フフフ……間に合わない」

破片はなんと爆発をした。

普通この程度なら致死には至らないが 今のこの状況からしてはありうる。

何故なら盾を張っていたからだ。

「円形の盾を張ったのがそもそも間違いだったわねぇ!」

盾内で爆発後の破片が飛び散り 跳ね返り 速度を増す。

「プリフィケイション!」

「アリス!」

アリスの放った術は盾と破片を意図も簡単に消滅させ 3人を光の盾で包み込んだ。

「アリス……」

「なんとかしてできたよ……」

「ありがとう」

アリスは3人の頭を撫で アノスの方を振り返り言い放った。

「時は満ちたわ あなたはここで消滅するのよ!」

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