* 第28章  裏切り*
闇の精霊が召喚された瞬間

魔法界では闇の住人が次々と降り立っていた。

アノスにより 闇のエネルギーが解放され 今まで眠っていた闇の住人が復活したとのこと。

ただちに魔法警察が緊急の知らせを魔法界全体に流し さらに有力魔法使いは集められ

被害の大きい 場所へと派遣された。

無論 アルケノス魔法学校もその大きい被害のうちに入っており

生徒達は学校地下に避難させられ 先生方は闇の住人に迎え撃とうとしていた。

校内にいるアスベル先生はコレウスとの戦いで気を失った渚先生を保健室に寝かせ 配置に戻ると校長先生が既にいた。

「アスベル先生ではないですか……持ち場を離れてはいけませんよ」

「す…すいません いろいろありまして……あの校長先生
僕たちはこの先どうなるのでしょうか……」

今のことを全く聞いていない様子の校長先生は 意味ありげに周りをキョロキョロと見渡す。

「それを考えているよりも まずはこの闇の住人を倒すことに集中することかのぉ」

「え? まだこの学校内部には闇の住人は入りこんでいないはずなのでは?」

「とりあえず 今すぐに右に転がることをお勧めするのぉ」

「!」

突然 壁が崩壊し闇の住人が二人の前に姿を現す。

アスベル先生は間一髪で避けることができ 体制を整える。

「まさか……もう既に学校内部に侵入していたとは」

「ふむ……久々に力を解放してみようかのぉ」

校長先生は杖を大きく掲げ 呪文を唱え始めたのであった。




「ウフフフ……私のしもべたちが魔法界を破滅へと運んでくれているみたい」

「アノス様……はぁはぁ」

「修斗よ よくぞ私を召喚してくれた 感謝するわ」

「ありがたきお言葉……」

アノスは修斗の頭を撫で こちらをチラリと見た。

目には憎しみが込められ 龍のアリスストーンをじっと睨みつけている。

「あなたがアリスストーンに選ばれし 早川家の子ね
 昔と違ってずいぶんと気弱そうな男の子だこと
 前に私を封印した早川家の奴はもっと豪胆な感じだったなぁ……
 もしかしたら一瞬で片がついちゃうかも」

不適な笑みをこぼし 鎌をこちらに向ける。

修斗は一歩後ろに下がり 壁に腰掛けてグッタリとしていた。

「修斗……お前はそこで見ていろ 一瞬で片付けてあげるから
 その代わりお前と私は一心同体ってことは忘れないでね」

地面を強く蹴り上げ 宙に舞うアノス

長い髪の毛がフワフワがと浮き 鎌は龍のアリスストーンに向けて振りかざされる。

「死ね!」

「くっ!」

龍は即座に防御呪文を唱えようとしたが あまりの速さに唱えられない。

鎌は龍の体を意図も簡単に傷つけた。

「───!」

アリスストーンは無事だったものの 自分の体に直線上の切り込みが見える。

それがパックリと口を開き 血があふれ出した。

「龍君!」

後方にいた里奈が斜めがけのバッグをあさり 回復薬を手にとり龍に渡そうとする。

しかし アノスが里奈の前にすぐに移動しそれを阻止しようとした。

「お友達を助けたいの? でも残念……友達を助ける前に あなたが死ぬから」

今度は鎌を2回おおきく振ると 衝撃波が起き 里奈に襲い掛かろうとした。

里奈は手に持っていた回復薬をバッグにしまい 今度は中くらいの瓶を取り出し蓋を開ける。

「岩石龍の粉よ……私の盾になりたまえ!」

瓶を垂直にあげ 初期呪文で瓶を割る。

「ロクドラゴ・ガード!」

粉は輝きはじめて 里奈の前に岩石を形成する。

この岩石の耐久力は術者の力によって様々であるのが現状。

術者の能力が低いと石だけの場合もあるが 里奈は完璧な岩石を形成させた。

「魔薬なんてただのおもちゃじゃない」

衝撃波は岩石の盾にぶつかり 石の割れる音がする。

「嘘でしょ!? 魔薬の中では高ランクの盾なのに……」

徐々に自分の盾が崩壊していく様を里奈は絶望を味わいながら見ていた。

「くっ……なんとか耐えて……」

「脆い…脆すぎるわ!」

岩石は完全に崩壊し 里奈の体に次々と傷が刻まれる。

「もう駄目……私じゃどうにもできない」

「私だけじゃ でしょ? あたしを忘れちゃ困るわね」

里奈の肩をポンと叩く。

「早苗……」

「命の杖よ 私たちを守りたまへ!」

薄ピンク色の壁が里奈と早苗を覆い尽くす。

先ほどの健一の時よりか威力は衰えるが 十分相殺できる程度だ。

衝撃波は盾に吸収され アノスの攻撃を防ぐことに成功。

しかし これが限界だったのか 命の杖は粉々に散ってしまった。

「あらぁ……驚きね 私の攻撃を防ぐなんて
 でもその様子だとギリギリって感じみたい」

じりじりと近寄ってくるアノス 2人は身構えるがさっきの術をもう一度唱えられたら防ぎきれない。

里奈はなんとかしようとバッグの中を再びあさり 対応できる魔薬を探す。

そして 一つの瓶を手に取り思い悩む。

この魔薬は 里奈がアルケノス魔法学校に入学した時から作っていたもの。

最近やっと完成しまだ試したことはない。

効力は攻撃呪文でその威力は不明 里奈の研究によると昔その魔薬で闇の住人から多数の民を救ったとか……。

「お願い……成功して!」

祈りを込めながら 瓶を杖ではじき飛ばし その衝撃で蓋が取れ 中から白い粉が溢れ出し風に乗る。

「ホリネス・ジャメント!」

里奈が唱えると粉は形を変え始め 針状と化し アノスに向かって一斉に放たれた。

「エンヴィ・メンタル!」

アノスの鎌のリーチが伸び それを振り回し次々と針を粉々にしていくが数本だけ体に突き刺さった。

「──ッチ 数本防ぎきれなかったか」

自分の足に刺さった針を抜き取ろうとした時 里奈が素早く術を唱える。

「ディルエルム・サンダ!」

「ハハッ そんな術じゃ無理よ! 返りうちにしてあげるわ!」

得意げに鎌を振り上げ さきほどの衝撃波を生み出し 電撃を打ち返そうとする。

「私の術は絶対に返り討ちなんてならない……」

里奈の放った術は上手く衝撃波を避け アノスのところに向かう。

通常ならこんな複雑な動きができるはずはない アノスが驚きの表情を見せる。

「まさか……」

ふと足元を見ると 突き刺さった針が輝いている。

「もう分かったでしょ……私の雷は相殺されないって」

「フフフ……そんなことで調子に乗ってもらっちゃ困るわ 元の針を抜いてしまえばおしまいじゃない!」

アノスは鎌で振り落とそうとしたが 電気で弾き恥じ返され逆に鎌を痛みつける結果になってしまった。

「龍君の痛みはこんなものじゃないの……」

雷は針に到達し 眩い電光を放ち アノスの体を雷が突き抜ける。

「ッ────!」

衝撃で壁に打ち付けられ アノスはうつ伏せに倒れこんだ。

「アノス様!」

修斗は急いでアノスの元に向かうと アノスは修斗をにらみつけた。

何故にらみつけられたのか分からないが ものすごい威圧感を感じる。

「お前のせいだ」

アノスはボソリと言った。

「やはりお前とは契約するべきではなかった……」

「アノス様……?」

「お前の血がもっとほしい」

「へ?」

アノスは鎌を修斗の首筋に当てる 修斗は首に冷たさを感じた。

「じょ…冗談ですよね? 何かの空耳ですよね」

「これでもか?」

修斗は少し痛みを感じた それもそのはず首から少し血が垂れているからだ。

「お前と一心同体で召喚されているよりも お前の血を使えば私はここに留まることができる
よってお前の血以外は不要ってことだ」

「裏切るきか……」

「裏切る!? 私は別に裏切ったつもりなんてないわ ただ協力はするっていっただけじゃない」

アノスは鎌を振り上げ 修斗の首元を狙い 定める。

「ご苦労……」

「フッ……そんな簡単に俺が死ぬと思っているのか?」

修斗は素早く鎌を避け アノスの背後に回る。

「死ぬのはお前だな……アノス」

右手を剣に変化させ アノスの背中に思いっきり突き刺した。

アノスの体から力が抜け ダラリと腕が下がる。

すると不意に 笑い出し 後ろをくるりと向くと おぞましい表情を見せた。

「これで死ぬと思ったのか!? 修斗よ……」

先ほどまで手に持っていた鎌は 既に修斗の腹部に突き刺さっていた。

「……グハッ」

修斗の口からは血が溢れ 顎をつたって首筋に流れていく。

修斗自身もこのことを予想していなかったらしく 呆然としていた。

アノスはさらに大きく笑い 鎌を勢いよく引き抜いては血をペロリと舐めた。

「精霊はこんな簡単には死なない 甘く見てもらっては困るわね」

修斗は言い返す言葉もなく その場に倒れこんだ。

血は地面の亀裂を浮かび上がらせるように 修斗の吐息は荒くなっていった。

そしてその吐息は徐々に薄くなり 仕舞いには聞こえなくなった。

それは修斗の死を意味するものだった。

その一部始終を見ていた龍を含め 3人は唖然としていた。

精霊が契約した者を殺すだなんて聞いたこともない。

ましては契約者が死んだら精霊はここに留まることができない。

というのは 契約者の力を源に現世に留まっているからだ。

それを可能にさせているのは やはり早川家の血なのだろうか。

「修斗!」

龍はいても経ってもいられなくなり 修斗の元へかけよろうとする。

禁魔法を広めた張本人だけども 龍にしては兄という存在。

「こんなことをしても 兄を心配するなんて……でも愚かよね
 何故人間というものは自分よりも他人を気にかけるのかしら」

アノスは大きく鎌を振って風を起こし いとも簡単に龍を吹き飛ばした。

「こいつの血を利用すれば 魔法界だけではなく人間界も支配できる
 つまり私は2つの領域の神となるのよ」

鎌を修斗の体に突き刺すと 血を吸収しているのが伺える。

鎌は赤色になり それとは対照的に修斗の体は青くなっていった。

地面にしみこんでいた血さえも吸収し 完全に修斗の血を獲得した。

「素晴らしい 早川家の血がこんなにもすごいとは
 そして残りの貴様の血を手に入れれば もはや私の敵などいない」

龍をしっかりと見つめ 鎌をバトンのように回すと呪文を唱え始めた。

「ディスペル!」

闇色の炎が龍に向かって次々と放たれる。

そこに里奈と早苗が盾呪文を唱え防御しようとするが 簡単に破られて龍同様に吹き飛ばされしまった。

「里奈……早苗!」

龍は起き上がり 杖を構えるが盾呪文を詠唱するいとまもない。

するとそのときだった。 ほのかにアリスストーンが光ったのだ。

「アリスストーンが……」

手に取ると その光は増し龍を包むかのようにシールドを作り出す。

アノスの放った術は そのシールドにぶつかると解けるかのように消えてなくなってしまった。

アノスは驚くばかりかその状況を見て不適な笑みを浮かべていた。

まるでこうなることが予想できたかのように……。

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