* 第27章  死闘*
アリスストーン それは莫大な力を持ち 使い方によっては世界を滅ぼす呪いの石

その石を託された龍は あらゆる困難を切り抜け

今この場所に 里奈 早苗と共にいる。



「本当は俺がアリスストーンの後継者だった……代々早川家の長男と決まっていた
 だけどアリスストーンは俺には反応せず 後に生まれたお前に反応した
 でも別にそんなことは気にもしなかった 特に変わることなんてないと思っていたから
 けど違った…… お前が後継者と決まったその日から 両親はお前を寵愛して
 俺なんか邪魔者扱いのような振る舞いをされた 俺は思ったんだ
 光があれば 当然闇が存在する その闇が俺なんだと
 闇で光を打ち消してしまえばいいと……願わくば人生をリセットしたいと
そのためにはアリスストーンが必要不可欠なんだよ」

修斗は次々に術を乱発し 自らの住処である塔を壊していく。

完全に精神が崩壊していて 感情が上手くコントロールできないようだ。

「アリスストーン……俺が捜し求めていた石 全てを浄化させる石」

龍の後ろに瞬間移動したかのようなスピードで覆いかぶさる。

「龍君 後ろ!」

「───!」

アリスストーンの首飾りを強引に引きちぎり 修斗は距離を置いた。

「アハハハハハハ やった──やっと手に入れた! アハハハハ!」

アリスストーンを掲げ 高らかに笑っている。

目は血走り 口からはよだれがたれている。

まるで獲物を捕まえて 今から食す獣のようにも見えた。

「これで俺は……俺は……アハハハハ」

アリスストーンを強く握り締めると 手の隙間から光が漏れる。

「アリスストーンよ 俺に力を!」

さらに強く握りしめると 光は強まったのだが 一定時間経つと光は失われ

元の石に戻ってしまった。

アリスストーンが修斗を拒んだのだ。

里奈の時は自分の力の物にできたのに何故なのか ただの石に戻ったアリスストーンを見るうちに

修斗は段々怒りを覚えた。

「アリスストーンまで俺を見捨てるのか!? どうしてなんだよ!」

手に持っていたアリスストーンを龍達の方向に向かって投げてきた。

2 3回弾み 龍の後元に転がった。

龍は素早くそれを取り上げ 手に持つとほのかに光っている。

それを見て修斗はさらに怒りが増した。 修斗は気づいた アリスストーンが自分を拒んでいることを。

「もういいや……俺はアリスストーンがなくても十分だ だってお前らは使いこなせていないからな」

「使いこなせていない!?」

修斗の手から電気を帯びた黒い塊が出現し 大きさを増す。

それをもう一方の手で掴み上げると ボールを投げるようにしてこちらに攻撃をしかける。

「死ぬがいい……マシブ・エンヴィ!」

術の発動と同時に 大きさはさらに増し 球体から黒い光が漏れ出す。

龍達は盾呪文を唱えるが なんとその球体は盾を溶かし始めたのだ。

「何この術!?」

「盾を溶かすなんて……!?」

「やばいっ……持ちそうにない」

一旦盾呪文の発動を消し 左右に転げるように交わす。

黒い球体は壁に激突すると思われたが 龍達の予想をはるかに越えていた。

なんと壁を貫通していたのだ。

それによってぽっかり空いた穴からは外部からの風が入ってきて 髪を少しなびかせる。

「アハハハハハ……弱い……弱すぎるぞ……」

「っく……」

龍は素早く立ち上がり攻撃を仕掛けようとするが無理があった。

今の自分の力じゃ多分 簡単に返り討ちになると。

「攻撃してこないのか? 龍」

「………」

「まさか 怖気づいたのか? 俺との力の差に怯えているのか?」

龍は答えようとはしない その代わり目からは涙が溢れていた。

自分の力のなさに悔しくて悔しくて仕方がなかった。

でも何もできない どうすることもできない ただ泣くことしか出来なかった。

「これほどの気弱な魔法使いとは……見ていてイライラする」

修斗はとどめの一発を放つかのように力を溜める。

「こんな糞にソイルやリアムが負けたことに驚きだよ」

ふいに龍は我に返り 涙を手で拭うと 修斗を見つめた。

「ディプ・ヘイトリド!」

「ディルエムル・シルド!」

修斗の放った術は黒色でレーザーように一直線に飛んでくる。

龍は上級盾呪文で対抗するが すぐに盾に亀裂が走り破壊されるのは時間の問題だった。

「くっ……強すぎる」

「クハハハハ! 強いのは当たり前なんだよ お前が単に弱すぎるんだよ!」

修斗の力は増大し 龍の盾をぶち破った。

龍はもう駄目だと 悟った。

これで全ては終わりなんだと───

しかし 違った 後ろから駆け足でこちらに向かってくる音がする。

「龍どいて!」

「えっ!?」

「下がってなさい!」

「早苗!?」

早苗は龍の背中を強く押し 杖を構える。

「やっとこの杖を使うときがきたみたいね!」

「それって……あの時の」

その杖というのは 過去に早苗と龍 二人で行った時に魔法街の交換所で手に入れた“命の杖” 

「命の杖よ! 私たちを守りたまへ!」

早苗が唱えると 命の杖から薄いピンク色の壁が龍達を覆いつくす。

「命の杖か……中々の魔法道具を持っているな しかし」

さきほどの龍の盾呪文とは比べようにもならないほどの防御力は 修斗の術を一瞬にして吸収した。

そして術の効力が消え 盾がなくなると同時に早苗はその場にしゃがみこんだ。

「早苗! 大丈夫!?」

「うん……大丈夫……まさかこんなにも体力を使う杖だとは思わなかったわ」

早苗は整わない呼吸をなんとかしようと 深呼吸を繰り返す。

「クハハハ……お前……命の杖の意味を分かっていないのか? もしかして
術者の命を守るためだとか思っているのか? そうだとしたら間違いだ
命の杖は術者の命 すなわち体力を削って身を守る杖」

「えっ!?」

「プハハハ! こりゃ傑作だな……そんなことも知らないで発動させるとは
馬鹿にもほどがあるなぁ まずはお前から殺してやろうか?」

修斗は早苗をじっと見つめ ニッと笑う。

その表情に早苗はビクリと反応し 手足を震わせる。

笑っている顔なのにすごく不気味に感じる。

「龍君 早苗!」

2人の少し後ろ側で里奈が2人を手招きしている。

何かあったのか? と駆け寄ろうとすると 修斗が邪魔をする。

「何しようとしているか分からないけど……このチャンスを逃すわけにはいかないなぁ」

早苗の体力は残りわずか 龍は健一を失ったショックでいまだに精神が不安定

この今の状況が修斗にとってはチャンスだ。

自分の今使える最強の術を2人に当て殺せば 残りはいかにも弱そうな女一人しか残らない。

「クフフフ……君たちの負けだね」

修斗は先ほどと同じように 黒い球体を生み出し それを今度は両手で伸ばすと

剣に姿を変えた。

「デフィト・ソルド!」

持っていた黒い剣を宙に上げると 剣は分裂したかと思うと何十本にも増殖し

龍と早苗を目掛けて放たれる。

盾呪文を唱えようとするが もうそんな体力は早苗には残っていない。

頼れるのは龍のみ それを承知の龍は杖を高々に上げて盾呪文を唱える。

「ディムエルム・シルド──!」

「えっ!?」

早苗は驚いた。 盾呪文は自分達の周りではなく 修斗と修斗の放った術を囲んでいたのだ。

剣は盾呪文の内側に全て激突すると 跳ね返り先ほどよりもスピードを上げ修斗に術を返す。

「な…何!?」

何本かの剣が修斗の体に突き刺さり 血が飛び散った。

「こんなことが こんなことが……ありえない」

修斗は自分の血を見て発狂した。

こんなことになるとは100%思っても見なかったからだ。

「糞がっ────!」

握りこぶしを地面にたたきつけ なんとか精神を保とうとするが

もう駄目みたいだ そろそろ理性が失われると修斗自身感じていた。

「修斗……こんな無意味な戦いはもう嫌だ! もう誰も死んでほしくないんだよ!」

この言葉の意味は精神崩壊状態の修斗はこのように聞こえた。

“これ以上したって 君の負けは決定している おとなしく降参してほしい”

「無意味? 俺にとっては……この戦いは大きな意味を持つんだよ
 お前らさえいなければ 闇の力によりこの世界は俺のものになる
 何でも俺の言うとおりなり 俺がこれからの歴史を作っていくんだ」

龍の言葉を聞き入れず 修斗は突き刺さった剣を無理やり引き抜き

手についた自分の血をペロリと舐める。

「ウヘヘヘ……龍が血塗れになった姿が目に見えるよ
 悲痛の声をあげ 苦しみながら死んでいく姿が」

「修斗……」

「アハッ もう力を制御できないみたいだ」

修斗を見ると 体に薄く文字が浮かびあがるのが分かる。

段々濃くなっていき 終いには体全体に浮かび上がっていった。

「ちょっ……何なの!?」

「体に文字が……」

「龍君 早苗! 早くそこから離れて───!」

2人の後ろで誰かが呼んでいる。

「里奈!?」

里奈は何かを察知したのかは分からないが 早くこの場から離れさせようと必死だ。

もしかしたら 何か恐ろしいことがこれから起こるのだろうか。

とりあえず 早苗をつれて急いで里奈の元へと向かう。

「ムフフフフ……アハハハハハ」

フロアの中心で大声で笑う修斗 塔全体に響き渡り 尚一層大きく聞こえる。

修斗の周りには黒ずみ 円形の魔方陣が浮かび上がる。

その黒ずみからは闇の光が漏れ出し 塔を揺るがす。

「何!? 何なの!? 一体これは!?」

「まさか……嘘だろ」

「闇の精霊の召喚……」

里奈の当たってほしくもない予想は 残念ながら的中していた模様だ。

早苗と龍はしどろもどろになり 不安げな様子で落ち着かない。

平然とした様子を見せている里奈も 心の中では不安でいっぱいだ。

「なんとかして召喚を妨げないと 大変なことに」

「分かってるわよ! でも でもどうしたらいいのよ!?」

「私のせいだわ」

里奈は2人に突然謝った。

自分のせいでアリスストーンを力を修斗に奪われてしまったこと。

それにより闇の精霊を復活させてしまったことを。

「里奈のせいじゃないよ」

「そうよ! 悪いのは……」

早苗が続けようとした瞬間 周りが暗くなった。

外の天気ではない 闇の霧が漂っているのだ。

「まさか……」

龍が修斗の方を見ると 既に闇の霧で姿が見えない。

しかし詠唱の呪文だけは聞こえた。

「闇の精霊 アノス 召喚!」

修斗は右手に地面を強く置き 自分の血を闇に明け渡す。

闇の霧が消え 魔方陣が修斗の血で赤く染まっていく。

そして血で染まった魔方陣から 一人の女性が姿を現した。



黒髪で長髪 青色のローブに 大きな鎌を持っている。

「わらわは 闇の精霊アノス 破滅を望む者」

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