* 第25章  作戦*
焦げた匂いがフロアに立ち込める中 3人はリアムの攻撃から逃げていた。

まともに戦っては勝てる見込みがないと考え 相手の体力を消耗させる作戦だ。

しかし その作戦とは裏腹にリアムの攻撃はさっきよりも強くなりそして詠唱が早くなっている。

里奈は一大決心をしたのか 2人に自分がやろうとしていることを逃げながら伝える。

そのやろうとしていることを聞いた 2人は迷わず頷き準備に取り掛かる。

「これが私たちに残されている最後の作戦かも…」

「大丈夫だよ 里奈……絶対上手くいく」

「そうよ!……里奈ならできるわよ!」

3人は足を止め杖を構え 里奈が先頭に立つ。

「やっと 追いかけっこも終わりみたいね……」



リアムがニヤリと微笑む その眼は勝利を確信しているようにも見える。

すぐさま里奈は斜めがけのバックから何かしらの液体が入った瓶を取り出す。

「なぁに? その小瓶……」

「さぁなんでしょうねっ!」

右手で思いっきり空中に投げ 小瓶は宙に舞う。

それをリアムは目で追う。

天井付近まで上がった小瓶はだんだんスピードを下げ 降下を始める。

ちょうど里奈の目の高さまで 落ちてきたところをタイミングよく術で当てる。

「アイ・イリティション!」

「───!」

小瓶は割れ 仲の液体がリアムの目に直撃。

見事 里奈の作戦通りになり リアムにダメージを与えることに成功。

「っ……目が……目が……あぁっ」

両手で顔を押さえ 苦しい声を上げるリアム。

頬を伝って涙がこれでもかと滴る。

「そういえばそうだったわね……あんた魔薬の調合ができるんだったわ……」

震え震えした声で言う。

「これであなたは視覚を失ったことになるわ……お願いです ここを通してください」

里奈は決して リアムを倒そうとはせず あくまでも犠牲者を出さずに先に進もうと考えていた。

「ここを通してください ですって!? 里奈甘いわ……視覚を失っただけで私が負けるとでも?」

「えっ!?」

リアムは両手を顔からはずし ローブをきつく握る。

「私は負けない……必ずや あんた達を倒してアリスストーンをマティス様に差し上げるの
それが私の使命なんだから……」

「渡せない……お前らに渡せるわけない!」

「アリスストーンは我ら禁魔法者のものになる……なるのよ!」

リアムは杖を上に掲げ 聞いたこともない詠唱 すなわち禁魔法を唱えようとしている。

「ディル・アクリス!」

詠唱を妨げようと里奈は術を放つがリアムの周りには結界ができはじめ 術が上に跳ね返る。

天井に当たった里奈の術ははじけ リアムの周辺に雨をもたらし 体全体を濡らす。

「冷たい水だこと……そんな糞魔法じゃ私に傷一つつけることはできないんだよ!」

一気に緊張がまし 空気が重々しくなる。

リアムの詠唱を妨げられなかったことに 早苗と龍は落胆の表情を隠せない。

なんとかして術を防ごうと盾呪文を唱えようとするが それを里奈がやめさせる。

「大丈夫……絶対勝てる…」

自信に満ちた表情しかしそこには少し悲しさが混じっている様子に 早苗と龍は一体何を考えているのかさっぱり分からない。

「私からなるべく遠くに離れて!」

「離れるって……でも」

「早くして! リアムの術が完成しちゃうから!」

里奈に強い一言を言われた龍だが傍から離れようとしない。

すると早苗が龍の右腕を引っ張り里奈から離そうとする。

「ちょっ……早苗!」

「大丈夫よ……里奈ならなんとかしてくれるわ……」

里奈は2人が遠くに行ったのを確認すると 深呼吸をし杖を地面に向ける。

「ブリズーラ!」

里奈の放った術は 地面を凍らし その範囲を広げる

「ペリッシュ・ダ……っ」

リアムが言っている途中に杖が凍結した。

その状態に驚く。

周りを見ると 先ほどまでの赤色の景色とは逆に青い景色が広がっていた。

「なんなの これは…あぁっ!」

凍る場所は杖に留まらず 足・手・髪の毛と広がる。

「そういうことなのね……あれは計算された術だったってわけね」

「そうです……水であなたの体を濡らし それを凍らせることで術の発動を防ぐ方法」

「ふふふ……今回の勝負が私でラッキーだったわね もしもマティス様だったらあんた達は
一瞬で殺されていたわよ」

唇が振るえ 紫色に変色 まつげも凍り始め もう時間の問題だった。

「禁魔法は永遠に不滅なのよ あんた達に止められるはずなんてない
マティス様……ばんざ……」

リアムの体は完全に凍り そのまま後ろに倒れ粉々に散っていった。

「ごめんなさい……本当はこんなやり方で……うぅっ」

勝利はしたものの 里奈は目から涙を流し 声を上げて泣く。

「里奈……」

龍は里奈の肩に手を置き少しの間そのままの状態にする。

今の龍にはこんなことくらいしかできなかった。

早苗は里奈の手をとり 頭を撫で 包み込むように抱く。

「仕方なかったのよ……こうするしかなかったのよ」

「……早苗」

早苗に抱きつき さっきよりも大きな声でなく里奈。

少しの間龍はその様子を伺っていた。



「もう大丈夫……ごめんね 2人とも」

「いいの いいの……」

「それじゃあ そろそろいこうか……」

「あっ待って……」

里奈はバッグから 小瓶を2個出し 二人に差し出す。

色は半透明で開けても匂いは特にない。

里奈がいうには これは回復の薬らしい。

次の相手に備え万全に整えたほうがいい ということで飲むことにした。

味は少々甘く 喉越しもいい。

どう? と聞かれ龍は おいしい と答える。

すぐにその効果は現れ 顔の傷が消え 力がみなぎった感じがした。

「よし……」

気合を入れ 3人は力強く階段を上る。

さきほどと同じように扉を開けると そこには手錠をかけられた男がぐったりと横になっていた。

龍はすぐに健一だと分かり 一目散に向かって意識を確認する。

まだ脈はあるが かなりの重傷なのは目に見えて分かった。

服は汚れ 手足は灰色に変わっており 顔には焼けどのような痕があるからだ。

「健一……」

早苗と里奈もかけより 健一の手錠をはずす。

「早くここから運びだして 応援を呼ばなきゃ……」

「うん」

龍が健一を運ぼうとした時 突然目がパチッと開いた。

「健一……?」

「あぁ?」

健一はムクリと起き 頭を掻きながら立ち上がった。

「リアム倒しちゃったんだ……流石だな 龍……」

「どうしてそれを知ってるの!?」

なんだかうれしそうな健一に 龍は寒気に襲われる。

昔の健一とは明らかに違う感じ もしかして健一も禁魔法者ではないかと疑う。

「龍そんなに 見つめないでよ……何か僕の顔についてる?」

「いや別に……あのさ健一 お前まさか禁魔法者じゃないよな?」

おそるおそる龍は問いただす。

「……禁魔法者だよ クフフフ…」

衝撃の一言に 龍はその場に固まってしまった。

里奈も早苗も 同じく硬直状態になっていた。

「そんなに驚くことだった? なーんだ 知らなかったのか」

健一は服の右腕部分を破り 3人に禁魔法の印見せる。

「アハハハ……もしかしてもしかして 僕を助けに来てくれたの?」

龍は何も答えず 後ろに身を引く。

里奈も早苗も 距離を取り健一から離れる。

「龍にずっと会いたかったのに……」

「会いたかった!?」

「そうだよ 会って僕の手で君を殺したいんだよっ!」

健一が全速力で龍に突進してくる。 右手には既に杖を持っており 先制攻撃をしかけようとしている。

龍も杖を構え 術を唱え始める。

「マシブ・ペイン!」

健一の杖から 亡霊が次々と現れそれが固まりと化し龍に襲い掛かる。

「スパーク!」

電気を帯びた球体が怨念の中に吸い込まれ 内部で爆発を起こした。

お互いの術は相殺され 粉塵があたりを覆う。

「龍は本当に優秀だね……僕の術を意図も簡単に相殺させるなんて……」

健一は小声で呟くと 杖を2つに思いっきり折る。

「僕はねぇ 禁魔法使っているうちに杖が必要なくなったんだ」

「えっ!?」

「それって……まさか……肉体で魔法を使っているんじゃ!?」

「そうだよ……だってそっちの方が威力がますんだよ 例えばこんな風にね!」

無数の炎の球体が3人目掛けて飛んでくる。

数個は避けれたが 数え切れないほどの球体はどんどんとこちらに向かって飛んでくる。

盾呪文を唱え防ぐが この数だと時期に破られる。

「……はぁはぁ」

「なんとか 避けれたみたいね」

術はなんとかしのいだものの フロアの地面はえぐられその威力を現していた。

「何この術の威力……並じゃないわ!?」

「どうにか隙を作って ホリジストをかければ……」

「あっ……作戦はあるわ」

里奈がまたしても名案を思いつく。



その作戦というのは まず霧を出しその後 地面に向かって術を撃ち 飛び散った石を利用し
健一目掛けてホリジストをかけるというものだ。

成功するかなんて 分からないが今はそんなことを考えている暇はない。

「アリスストーンを早くマティス様に届けなきゃいけなかったな……クフフ」

健一の視線は龍の首に掛かっているアリスストーンに向けられ じっと見つめている。

その間にも作戦の準備は整えられ あとは健一がこちらに走りこんでくるのを待つのみ。

「攻撃してこないなら こっちから行くしかないようだね」

地面を蹴り上げ ジャンプをしこちらに向かってくる健一。

「いまだ!」

「スモグ・リーン!」

「!?」

早苗と里奈が放った術は 黒煙を生み出しフロア全体を見えなくした。

着地した健一は耳を凝らし だれが何処にいるのかを把握しようとしている。

すると周囲から何かが飛び出してくる感じを察知し 健一はその方向に攻撃をする。

「そんなあからさまじゃ 無理なんだよ 龍!」

しかし攻撃したのは龍ではなく 石の破片であった。

それが幾度となく続き 健一の思考を狂わせる。

「糞……視界を奪うとは中々やるじゃないか」

健一は目を閉じ 深く呼吸をする。

音に集中をし 人の気配を上手く読み取ろうとした。

「そこか!」

後ろを向き 術を放つがまたしても石の破片だった。

「こっちだよ! 健一!」

「何っ!?」

咄嗟に後ろを向くと そこには龍が迫ってきているではないか。

体の向きをかけようとするが間に合わない。

「ホリジスト!」

龍は禁魔法の印がある 右腕に当てる。

「ぐあぁぁ……!」

健一は悲痛の声をあげ 顔からは汗が噴出す。

「龍……やめろ……やめてくれ!」

左手で龍の杖を掴み 術を妨げようとするが力が入らずできない。

「それをしたら俺が……俺が」

健一は不安な表情をし 次第に体が震える。

里奈の時とは明らかに違う感じで 何だかおかしい。

ホリジストの術は続き 禁魔法の印を打ち消そうとするが中々できない。

「ああぁ……あぁ!」

禁魔法の印から 黒い靄が出てホリジストを完全に打ち消す。

その反動で龍そして さきほどの黒煙は吹き飛ばされた。

「ど…どうなってんだ!?」

「ホリジストは完璧だったはずなのに……」

吹き飛ばされた龍が 再び立ち上がるととんでもないことが起こっていた。

健一の周りが黒ずみ そこから黒いローブをまとった男が姿を現していたのであった。

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