* 第19章  過去*
今から5年前のこと……

仲がいい男子2人がアルケノス魔法学校にいた。


「ふぅ……今日の授業も終わったね カイスはこの後の予定は?」

「うーん……実はこの前のテストが赤点で再試験受けなきゃいけないんだよね」

「そっか……俺も今から用事があるんだよねー……」

カイスは大の親友クリスと廊下を歩きながら喋っている。

ちょうどその時 今年入学してきたクリスの妹 ミサが走りながら二人に近づいてきた。

「あ……お兄ちゃん! 一緒にご飯食べにいこうよ! もちろんカイス君も!」

「あーごめん 俺ちょっと用事あるから……」

「俺なら大丈夫だよ 再試験まで少し時間があるし……」

「ごめんな ミサ 明日一緒に食べれると思うから」

ミサの頭を撫でながらクリスはニコリと笑った。

ミサは寂しげに小さくうなずき カイスと一緒に昼食の場所に向かった。

当時の昼食の場所は外で販売されている物を買うシステムであった。

カイスは気を使い ミサが大好きなホットドック そして自分の食べる物も買ってミサの元に戻った。

「はい ミサちゃんの好きなホットドック っと……」

「ありがとう! このお店のホットドックは本当においしいんだよねぇ……」



ミサは満面の笑みでホットドックを頬張っている姿にカイスの心臓の鼓動が少し激しくなった。

昔からの知り合いでありながら 実のところ最近になりだしてミサのことが好きになってしまったカイスはもどかしさを感じていた。

「ちょっと……トイレに行ってくるね……」

「あ…うん 早く帰ってきてね」

カイスは席を立つと足早にトイレに向かっていった。

数分後 トイレから戻ってくるなりミサを学校の裏側に連れ出した。

「ねぇ……カイス君どうかしたの? そんな真剣な顔しちゃって……」

「そうかい? 俺はいたって普通なんだけどなぁ……クスクス」

いつもとは少し変わった感じがする とミサは心の中で思っていた。

さらに こんな人のこないところに呼び出すということは 何かがあると……。

「で……人前では話せないことでもあるの? カイス君」

「うん……到底人前では話せない ……話せるわけないじゃないか……」

不気味に肩がビクつく動作に ミサは少し動揺した。

もしかしたら何かさせるのではないかと。

なるべく逃げやすいところに移動したミサはカイスに向けて 話の内容を聞かせてほしい と告げた。

それを聞いて カイスはニヤリと笑い杖を取り出しながら人前では言えない事を話し始めた。

「えっとね……それはね……君に死んでほしいんだ」

「えっ!? カイス君 何冗談いってるの!?」

作り笑顔をしながらも 一歩一歩 ミサの足は後ずさりしていく。

それと同時に カイスも一歩一歩 前に進む。

「聞こえなかった? 俺はミサちゃんに死んでほしい って言ったんだよ……」

「嘘でしょ……」

「じゃあ こうしたら本当だって信じてくれる?」

杖を持つ手に力が入り ミサの顔に向ける。

「ボルズ!」

あまりの術の速さにミサはよけることが出来なかった しかしわざとはずしたのか頬をかすっていった。

「……どうしちゃったの……今日のカイス君 変だよ!」

目に涙を浮かべながらミサは杖を取り出した。

「俺はいたって普通だって さっき言ったじゃん……何度も言わすな」

するとカイスの体から黒いオーラが出始めた 明らかにやばい状況になっていることにミサはようやく気づいた。

「早く……助けを呼ばなきゃ!」

杖を高く上げ 呪文を唱える。

「オル・ボルズ!」

「オル・ブリズ!」

ミサの放った術は天高く放たれたが 同時にカイスの放った術によって無残にもかき消された。

もうこれで助かる手段はなくなったも同然だった。

「誰か……誰か助けて!」

涙声でミサは必死に助けを求める。

「無駄だよ……この場所は滅多に人はこないし……クスクス」

杖をミサに向けて 高らかに笑い カイスはとどめをさそうとした時に あいつが現れた。

「ミサ……それにカイス お前たち何やってんだ?」

「お兄ちゃん!」

「やっときれくれたみたいだね……これで計画は上手くいく」

カイスはミサに向けていた杖を クリスの方に向けてつぶやく。

「オル・ボルズ……」

「カイス────!?」

「お兄ちゃん────!」

クリスは杖を取り出したが 間に合うわけもなく 壁に打ち付けられた。

服もこげ 意識も少し遠のき始めていた。

「お兄ちゃんに何するの!? あなたカイス君じゃないわ!」

「あーもー うっとうしいなぁ……早く死ねよ!」

さきほどよりも黒いオーラがカイスを包む。

ミサはクリスの元に行こうとするが 目の前にカイスが立ちはだかる。

「これも計画のためなんだ ミサちゃん……」

「計画って……」

「ディル・ブリズ……」

「お兄ちゃ────」

凄まじい音がし 校舎の一部が崩壊するほどの衝撃。

その衝撃でクリスも意識を取り戻し 血だらけになったミサ そしてそれを笑いながら見ているカイスの光景を目の当たりにした。

急いでミサの元へ向かい 涙を流しながらカイスに杖を向ける。

「どうして……どうしてミサにこんなことをしたんだ! カイス!」

「………計画のため それだけだよ クリス アハハハハハ」

クリスは涙を袖で拭く。

「お前のこと ずっと友達だと思ってた……でももう今は友達なんかじゃない」

「そうだね まぁ俺は最初からクリスの事 友達として見てなかったけどね」

「そうか……これがお前の本性か……ミサを殺した罪は大きいよ……カイス」

クリスは両手で杖を握りしめると 今ある力を思いっきり杖に込める。

「ディムエルム・ブリズ!」

「フリオス・エッジ……」

ブルズ系最強の術を放った クリスは息切れをしていた。

一方でカイスの放った術は 無数の空気の刃で氷を一瞬で粉々にしている。

ブリズ系最強の術でさえも カイスの放った術には適わなかった。

「なんだって! そんなはずは……」

残った空気の刃がクリスの頬目掛けてかすり そして消えた。

頬からは大量の血が滴り落ち 服を赤く染めていく。

杖も衝撃で真っ二つに折れて もう抵抗できない状態だった。

カイスは背を向けて クリスに手を振りながら消えていった。

「カイス……待て……」

カイスを追おうとするがクリスにはもう余力がなかった。

まぶたが重くなり クリスはその場で倒れてしまった。

数時間後 クリスは保健室で目を覚ました そこにはプリム先生が横で物を整理していた。

「目が覚めたのね……あなたの妹さんの件なんだけど……お亡くなりになられたわ」

「………そうですか……」

クリスは頬に手を当て カイスの事を考えていた。

あいつは今何処にいるのか 何故いきなりあんな事をしたのか……。

そう思うといてもたってもいられなくなり クリスは魔法着に着替えて保健室を出て行った。

魔法警察によるとカイスが今行方不明になっているということ。

「カイスがいるといえば あそこしかない……」

その場所はクリスとカイスだけが知っている秘密の場所。

校舎の時計台の倉庫室 いつも授業をさぼってはここに来てよく遊んだものだ。

きっとそこに カイスはいるとクリスは思い 倉庫室の扉を開けた。

「あっ……クリス!」

数時間前のカイスとは打って変わっている。

クリスは人を殺しておいて よくもそんな接し方ができるなと思っていた。

「カイス……お前は犯罪者だ 自首しろ」

「えっ? クリス何いってんの?」

「この期に及んで そんなとぼけたこといってんじゃねぇよ!」

クリスはカイスの頬を思いっきり殴った。

カイスはなんで殴られたのかわからなかった。

「な……なんで殴るんだよ!」

「当然だよ……お前はミサを殺したんだからな!」

「ミサちゃんを殺した? 俺が? そんな馬鹿な!」

「僕はこの目で見たんだよ お前がミサを殺すところをな!」

カイスの襟ぐりをぐいっと掴み ドサッとその場に放りなげるように飛ばす。

「っ痛……クリス何か勘違いしてるよ……」

「勘違いなわけ ないよ……」

「だっだって俺は トイレが終わってミサちゃんのところに行こうとしたら急にアナウンスが流れて
 再試験会場に向かったよ……証人ならいるよ…信じないならアスベル先生に一回聞いてみてよ!」

「苦しい嘘だな カイス……」

「だから本当だってばっ!」

クリスはその言葉に耳を傾けず 杖を取り出しカイスに向ける。

「ただ殺すだけじゃだめだ……もっと残酷で醜くしてやる」

「……クリス……」

「メタモ・フォシス!」

「その術って 変化の……────」

クリスの杖から白い煙が出てきて それがカイスを包み込む。

息ができないくらいの密度で咳き込むカイス。

「ケロッ ケロッ……ケロ?」

カイスが上に視線を向けると 以上にクリスの姿が大きく見える。

周りを見渡しても 自分よりも全てがでかく なんだか違和感を感じる。

ふと自分の手を見ると緑色だった カイスは必死にクリスに話そうとしたがどんなにやっても

ケロ ケロ としかいうことができなかった。

それを傍観している クリスは嘲笑い 思いっきりカイスを踏みつけた。

「醜くなったものだな カイス……今の君にはお似合いの容貌だよ」

「ケロ……ケロ───!」

「痛いかい? 痛いなら痛いっていえばいいのに あぁそうか もうしゃべれなくなったんだっけ……」

クリスは踏みつけていた足を退けて 颯爽と倉庫室を跡にした。

残されたカイスは途方にくれていた。

クリスはというと 自分の部屋に戻りミサと自分の写っている写真を見つめていた。

「ミサの代わりに 僕がカイスを懲らしめてあげたよ……」

「その憎き心 気に入った……」

怪しげな声が後ろから聞こえる。

クリスはとっさに 杖を取り出し黒い影に向ける。

月夜の光に照らされ その影は姿を見せた。

「俺は─── 君の事をすごく気に入った 是非協力してほしい」

「協力?」

「そうだ……ただ俺の指示に従ってくれればいい」

「従う? 部下になれと?」

クリスはその男に背を向けて部屋を出ようとすると肩をぐいっとつかまれ耳元で囁いた。

「君の妹を生き返らせてあげる………といっても?」

「なんだって? お前にそんなことができるのか?」

「そう あれがあればすぐにでも生き返らせてるんだ」

「あれってなんだよ」

少しクリスが興味を持ったことに 男はニヤリと笑った。

「アリスストーンだ……」

「アリスストーンって 幻の石……」

「そうだ それがあればなんだってできる……それを探すためにも君の協力が必要だ
 もし仲間になってくれるなら 大いなる力も授けてやろう……」

「力……」

迷いながらもクリスはミサを取り戻したい一身だった。

もう迷う余地はなかった。

「お前の仲間になってやるよ」

「そうですか……では俺のところにきてもらいましょう」

男は杖を取り出し 呪文を唱えると クリスと男の姿は一瞬にして消えてしまった。



─────ということだったケロ

カイスは大きくため息をつきゴロリと横になった。

その姿はなんだか悲しそうに見えた。

「ケロ助 いやカイスにそんな過去があったなんて……」

「元は人間だっただけでも驚きなのに……あんたの過去も結構すごいのね……」

龍と早苗は気の毒そうにいった。

アスベル先生はカイスの頭を撫でながら話を続ける。

「でもクリスの妹を殺したのは カイスではないことは断言できる
 何せ僕とカイスはその時再試験会場にいたんだからね……」

「それだと話がおかしいわよね? もしそうだとしたらクリスの妹を殺したのは誰だったの?」

「そうなるんだけど……考えられるのは一つだけ それは変化術」

「変化術?」

アスベル先生は書斎の本棚から変化術の書かれている本を取り出し広げて説明をする。

「カイスにかけた術も変化術の一部なんだけど 術を極めた人なら成り代わりをすることも可能なんだ」

「じゃあ アスベル先生はカイスに成り代わった誰かが クリスの妹を殺したっていいたいのね」

「そのとおり……で話を戻すけど手紙の内容なんだけどね」

先ほどからポケットから見えていた 封筒を取り出し広げ読み始めた。

“” 久しぶりだね カイス
 まだ生きていたなんて本当にビックリしたよ さらには言葉もしゃべれるようになって
 一体だれに術を緩和もらったのかなぁ?
 まぁそんなことはどうでもいいんだけどね……
 たしか君の連れで アリスストーンを持っている子いたよね
 その子からアリスストーンを奪ってきてほしいんだ
 明日の午後6時に “ミルケルドの塔” の最上階に持ってくることができたら
 君を人間に戻してあげよう
 君ならできるよね? いい答えを期待しているよ…… “”

読み終えたアスベル先生はカイスに目を向けた。

「もちろん渡す気なんてさらさらないケロ」

「明日の午後6時に その塔に行けば……里奈の居場所をクリスから聞きだせるじゃない」

「うん……」

「付け足して悪いんだけど そこの塔には 雷の精霊がいると言われている」

「一石二鳥じゃない! これはチャンスよ龍」

背中をバンバン叩きながら早苗のテンションが上がる。

「そうと知ったら もういくしかないわね!」

「どっちにしろこのままだと何にも解決しないし…」

「じゃあ明日の午後にまた僕の書斎に集合してください」

「はい……」

2人は書斎を出てそれぞれの部屋に戻っていった。

「そろそろ闇の精霊の復活が迫っている……なんとかして里奈そして雷の精霊と契約してもらわねば」

あごに手をあて アスベル先生は真剣な顔をして呟いた。

ちょうどその頃 禁魔法のアジトに禁魔法者が続々と集まってきているのだった。

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