* 第17章  呪い*
龍が目をあけるとまっしろい空間にいた そこには何故か里奈もいた。

あたりを見渡すと里奈と龍以外には誰もいない。

里奈はこちらを振り向き何故か悲しそうな目をしている。 しかし決して目を合わせようとはしない。

龍は起き上がり 里奈にかけより話しかけようとするが 突然クリスが龍の目の前に現れ里奈と龍を阻む。

「君は里奈さんを救えない……もし救えたとしても……彼女は魂を持たない抜け殻だ」

クスクスと笑いながらクリスは龍に言う。

「お前は一体里奈に何をしたんだ! ……里奈を返せ……。」

クリスの言葉も聞かないで 龍は思ったことをクリスにぶつける。

「何をですか……簡単に言ってしまえば 少し僕たちに協力してもらうだけだよ」

「協力!?」

「まぁ詳しくはいいませんが 里奈さんを返してもらいたいのなら……」

だんだんクリスの姿と里奈の姿が薄くなっていく。

「今は里奈さんよりか他のに心配したほうがいいですよ……」

「他の……!?」

「もうすぐ分かりますよ……そして君の使い魔のカエルもそろそろ呪いが解ける頃かな…」

クリスは里奈の頭を撫でながら言う。

その光景を見ていた龍はもどかしさを感じる。

「では そろそろお時間みたいなんで おさらばしますね……」

「待てっ! まだ言いたいことや聞きたいことが……」

龍が続きを言おうとして ふとクリスと里奈を見ると もう既に姿はなかった。

たった一人龍はこの空間に残された。

すごく孤独感を感じる。何故だか怖い。

いじめにあっていた頃のことを思い出す。 胸がキリキリと痛い。

「里奈……」

目に涙を浮かべながら龍は小声で言う。

そして段々真っ白な空間が黒い何かに侵食されていく。

さらには自分の体までもが黒く色づいてくる。

「な……なんだこれは!?」

龍がもがき苦しんでいると 耳元でささやくように誰かが言う。

「このまま闇に食われるがいい……」

「いや……だ」

しかし龍の体は徐々に闇に食われていく……。

そして完全に龍は闇に侵食された。



どのくらい経ったのだろうか 龍は再び目を覚ます。

でも何故か目が見えない いや空間が黒いのか 疑問を抱きながら龍は立ち上がる。

すると何かが龍の頭に不時着する。

「……ん?」

手を頭の上に載せるとブニュと言う音がする。

「ブニュ……?」

今度は両手でその物体を掴みあげてみると それは紛れもなくケロ助だった。

「ケロ助……?」

「お前を助けにきたケロ」

いきなりケロ助の指輪が赤く輝きだす。

「ま…まぶしっ……」

思わず目を瞑った龍はその場に跪く。

先ほどの光が消え ケロ助は自ら龍の手をほどき着地する。 そして龍に言う。

「目を開けるケロ」

ケロ助の言われたとおり目をおそるおそる開けると 龍はアルケノス学校の保健室のベットに横たわっていた。

「えっ!?」

龍はキョロキョロとあたりを見渡す。

「今までのは多分 クリスの術ケロ 俺が助けに行かなかったら今頃龍は夢の中で殺されていたケロ」

「……よくわかんないけど とりあえずありがと……」

頭の中で今までの出来事を整理しながら龍は制服に着替える。

「そういえば ケロ助の呪いは……」

「プリム先生のおかげで解けたケロ」

「よかった……」

龍は作り笑顔をケロ助に向けた。 しかしケロ助にはもう知らされていた。

───里奈がクリスという禁魔法者にさらわれたことを────

「で…里奈のことはもう聞いてるんだよね」

「……もちろんだケロ」

「そうなんだ……でもなんで里奈はあんなことを……」

龍はプルボルス火山で起きた出来事を思い出しながら言う。

「多分 クリスの術によって里奈は操られているケロ 違いないケロ」

確信めいたことをケロ助は言う。

龍は何故言い切れるのか問う。

「それは……」

ケロ助が言いかけようとしたときに 勢いよく保健室のドアが開く。

ツカツカと一人の少女が龍とケロ助のベッドに真っ先に向かう。

「やっと起きたのね 龍 さぁ次の時間から授業にいくわよ」

「早苗……でも今はそれどころじゃないと思うんだけど」

「そんなの知ってるわよ……けど……」

「早く里奈を助けなきゃ…いけない……」

涙を必死にこらえながら龍は言う。 それを見て早苗はため息をつき龍に話しかける。

「今あたし達にできることは何もないの……むやみに探したってまた変な事件に絡まれるだけでしょ……
 あと このことは一部の先生しか知らないわけだし……とりあえずあたし達は新たな情報を待つしかないの」

「じゃあ 早苗はその間に里奈がどうなってもいいと?」

「………」

早苗が押し黙る。本当は答えたかったけど我慢するしかなかった。

龍は無言でその場を立ち去り 自分の部屋へと戻っていく。

その後姿を追いかけるようにケロ助は走り出す。

残された早苗はこらえていた涙をその場にポロポロと流しながら涙声で呟く。



「あたしだって……里奈のこと心配に決まってるじゃない……」

服で涙をぬぐい 早苗も保健室を後にした。

次の時間 なんだかんだ言って龍はその授業に出席した。

同級生に 今までどうしていたのか? ズル休みしていたのか? と色々なことをウザイほど言われたが

その度に早苗が気を使ってくれたのか追い払ってくれた。

2人は無言で食堂のホールにつき 龍と早苗は偶然にも隣同士になった。

最初に嫌な雰囲気を打ち破ったのは早苗だった。

「……で……テストの結果はどうだったわけ?」

唐突に早苗が話を切り出す。

「なんとかギリギリ赤点は間逃れた……」

「そう よかったわね……あと授業後アスベル先生の書斎に集合らしいわよ じゃ…」

早々に食事を済ませた早苗は席を立ち自分の寮へと戻っていく。

「はぁ……なんでこうなっちゃったんだろ……」

ガクっと肩を落とす龍 思わず視線が下に向かう。

するとひょっこりとケロ助がイスの下から顔を出す。

「食べ終わったらアスベル先生の書斎に向かうケロ」

「言われなくても分かってるよ……」

パンをもぐもぐさせながら龍はめんどくさそうに答える。

「先にアスベル先生のところにいってくるケロ……」

ピョコピョコと人の足を交わしながらケロ助はアスベル先生の書斎に一足先に向かった。

「さて……俺も行こうかな……」

重い腰をあげて 龍はのそのそと廊下を歩き出す。

途中 偶然にも早苗と会い一緒に書斎に向かことになった。

「今度さ……魔法街いってみない?」

「うん……」

「何よその嫌々した言い方は! 行きたくないなら行きたくないって言いなさいよ!」

「いくよ…いく」

「そう なら今度の休日ね」

そんな会話をしていると あっという間にアスベル先生の書斎に到着。

ドアからケロ助がじーっと見つめており 少し気色悪い。

「やっときたケロ」

こちらから目を離しアスベル先生の肩の上にちょこんとケロ助は座る。

「よく来てくれましたお二方 今日はいろいろと話しておこうと思いまして……」

「で…なんでしょうか」

「また術の修行?」

「いえいえ 違いますよ……まずはこちらを見ていただこうかと」

アスベル先生は奥の部屋からテレビらしき物を取り出し 二人の目線の高さに置く。

その後 ビデオテープらしき物を隙間に入れて スイッチを押すと画面にノイズが映る。

もう一度アスベル先生がスイッチを押すと イスに縛られた一人の老人が映し出された。



『あなたの名前を教えてください』

監視員が質問をすると老人は重い口をブルブル震わせながら答える。

「あんどう……あつ…し」

『あなたがさらわれた時のことを教えてください』

「………」

その質問にあんどうあつしと名乗る老人は答えようとはしない いや答えようとしても口が動かない。

なにやら術がかかっているようにも見える。

『ではあなたは一体何をされたのですか?』

「まるで操り人形みたいだった……自分の意思とは関係なく体が動く……」

小刻みに体を震わせながら老人は答える。

『あなたに呪いをかけた人物の特徴を教えてください』

「……答えられない……答えたら殺される……殺される殺される」

今まで以上に体が震える老人 右手の甲には変な模様が刻まれている。

『その右手の甲にある模様は一体なんですか?』

「呪いの印だ……これを消さないと俺は死ぬ……死んでしまう……早く消さないと消さないと……」

左手を縛っていた物がふいにはずれ その手で右手の甲を掻き毟る老人 血があふれ出しても尚掻きつづける。

咄嗟に監視員が取り押さえ再度左手を縛りつけ固定する。

「何度掻いてもこの模様は消えない……なんでだよ……なんで消えないんだよ!!」

ジタバタするたびに老人の白い髪の毛が地面に落ちてゆく。

『一度 彼を楽にしてあげましょう』

『そうですね』

白いローブを着た2人組が現れ杖を重ね合わせ 老人に向かって術を放つ。

『ディル・スリプト』

老人の体が動かなくなり 一瞬にして眠りについた。

白いローブをきた2人組は今度は老人の右手に向かって術を放つ。

『パフィ・ケイション』

老人の右手が輝き始める。

光の輝きが呪いの印をかき消そうとするが 模様から黒い光があふれ出し 逆に光をかき消したのであった。

その状況に二人組は驚いているように見えた。

さらに黒い光は2人組に向かって照らし始める。

とっさに防御呪文をしたが黒い光は防御呪文をつき抜ける。

数秒後には2人組は白骨化し無残にも地面に骨が転がっていた。

「ッハッハッハッハ………やめろ……」

黒い光は今度は老人を黒く照らす。

「────ッ」

一瞬にして老人の皮膚が剥がれ落ち さらには筋肉が腐ってその場に落ちる。

先ほどの2人組と同じように白骨化し首の骨が頭を支えきれず グシャリと落ちた。

『早く 魔法警察───』

最後 監視員の叫び声と共にビデオのテープは終わった。



龍は全てこのビデオを見たものの 早苗は途中から手で顔を覆っていた。

「ビデオ終わったの?」

震えながら早苗が龍の服を掴みながら言う。

「うん……終わった で…あの老人は」

「この老人は本校の生徒の 安藤 篤」

生徒表もペラペラとめくりながらアスベル先生は話を進める。

「調査結果によると 彼は禁魔法者にさらわれ何らかの呪いを受けたみたいなんだ
君達が彼を救助した後に魔法精神病院に搬送されたらしい……」

「確か操り人形みたいだった って言ったわよね これって」

早苗の表情が曇り始める。

「里奈と同じ……」

龍が早苗の後につけたしする。

「仮に里奈を救えたとしても 彼と同じようになっている確率はかなり高いと予想される」

「その後無理に呪いの印を解こうとすると禁魔法が邪魔をする……」

「じゃあどうすれば……」

「ひとつだけ方法はあるんですが……」

アスベル先生が奥から一冊の本を取り出し 机に広げる。

「これは……?」

「これは ホリジストの一部が載っている文章」

「ホリジスト?」

「ホリジストとは太古の術で 全ての呪いを消し去る効果がある
 しかしホリジストの完全版の本はあっても魔法界に1冊……
 もし見つけたとしても特殊な文字で現段階 解読が不可能……」

文章を読み終え本を閉じ アスベル先生は元の場所に戻す。

「それ以外に方法はないの?」

「うーん……今のところはこれだけですね……」

「そう…ですか」

早苗が悲しそうに答える。龍も同じ気持ちだ。

「何かありましたら また呼び出すので……」

「はい…」

「俺はアスベル先生と話があるから ここに残るケロ」

「はいはい……」

「ほんとあんたは気楽でいいわね……」

ケロ助はピョンピョンと跳ねて 元気をなくした2人を寮まで送る

数分後 ケロ助が戻ってくるなり アスベル先生が心配そうに言う。

「いいんですか? 彼らにあなたのことを話さなくても」

「まだその時期じゃないケロ でも近いうちに話すことになるケロ……」

そういってケロ助はあくびをし アスベル先生の机の上で寝てしまった。

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