* 第15章  炎の精霊 *
ルナンとカナンの杖から炎を帯びた物と冷機を帯びた物が出始めそれが交じり合う。

「あんた達 融合術って知ってる?」

「融合術? 知らないわ」

早苗が冷めた口調で言う。

「じゃあ 無知なあなた達に教えてあげるわ 融合術とは二つ以上の魔法を混ぜてより強力な力を生み出すの」

「でもねそれは 簡単にできるわけじゃなくてお互いの意思が大切なの……」

クスクス笑いながら ルナンとカナンの杖からは強力な魔気が出ているのがわかる。

3人は杖をしっかりと握り身構えた。

「融合術 ボルブリス!」

二人は杖を振りかざしてそう唱えた。 炎と氷が入り混じった球体はものすごいスピードでこちらに向かってくる。

「二人とも 杖を重ね合わせて!」

里奈の掛け声で二人は里奈の杖に重ね合わせるように添える。

そして3人は同時に唱えた。

「強化呪文 ディル・シルド!」

3人の周りを囲むように透明な膜が包み込む まだ完全に包み込んでいないところに姉妹が放った球体がぶつかる。

「す…すごい…融合術ってこんなにも強力なの!?」

早苗が苦しそうに言う 龍も必死に杖を持ち続ける。

なんとか球体を消したものの 3人の体力は一気に消耗されてしまった。

「流石にやばいかも……魔法銃使うよ」

「うん…」

龍は魔法銃を取り出し 腕を空高く上げ 引き金を引いた。

空に乾く音がして 赤い色が空一面に広がった。

「魔法銃ねぇ…でもそんなことをして何になるわけ?」

「ルナンのいうとおりだよ ここには結界があるし…まぁもし破られても…ねぇ?」

魔法銃を撃った龍はその場に跪いた。

「先生……助けて……」


一方そのころ先生は魔法銃が放たれるのをじっと待っていた。

「そろそろ龍達がついているころなんですがね……」

「想像したくはないのですが もしかしたら……」

渚先生がそう言った時 向こうの空から微かに赤い色が見える。

「あれは 龍達のサインですね……」

「アスベル先生…やってみましょう」

アスベル先生と渚先生は 杖を重ね合わせて唱えた。

「融合術 シルド・メルトニア!」

結界が徐々に溶け始めて最終的には大人一人が潜りにけれるような隙間ができた。

「成功ですね……龍達の所に…」

アスベル先生が渚先生に声をかけると 渚先生の顔が硬直しているのに気づいた。

「渚先生?」

「上……上……」

震えながら渚先生は精一杯アスベル先生に伝えようとしている。

「こんばんは アスベル先生…渚先生」

黒いローブに身を包んだ者は杖をこちらに向けながらニヤリと笑った。

「おやおや 禁魔法者さんではありませんか……」

そう言いつつもアスベル先生の体は少し震えている。

渚先生はそれ以上にガタガタと震えている。

「おもしろいことを言いますね アスベル先生……本当はすごく怖いくせに…」

黒いローブの者はクスクス笑い そっと呟いた。

「邪魔者は排除しないと……ね」

「邪魔者はそっちですよ…禁魔法者……」

アスベル先生は黒いローブの者に向けて術を放つ。

「オル・サンダ!」

「そんな弱い術で倒せると思って?」

アスベル先生の放った術を魔法なしで消し去った。

「ど…どうなっているんだ!?」

「さぁね…今度はこちらの番…」

ぐっと手に力を込めて 2人に向けて唱えた。

「オル・スリプト」

2人の周囲が白い霧に包まれる。

さらに段々風景がぼやけ始める。

「くっ……」

「アスベル…先生…」

2人は眠るようにしてその場に倒れこんだ。

「さて私の仕事はここまで…あとは頼みましたよ…」

そう言って黒いローブに身を包んだ者は消えてしまった。


魔法銃によって赤く染まった空を見ながらルナンは呟く。

「魔法銃撃っても来ないわよ…」

「どうして決め付けることができるんだ」

龍の問いに姉妹が今まで以上に笑う。

今度はカナンが答える。

「禁魔法者は私たちだけじゃないのよ? もっといるんだからね」

「……もしかしてその中に健一は入ってないよね」

唐突に龍が質問をする しかし姉妹は答えることもなく杖を構えてニヤリと笑う。

「ディル・ボルズ!」

「ディル・ブリズ!」

姉妹の杖から冷気と炎が出てそれが入り混じり強力な球体と化す。

「ちょっと! どうすればいいわけ!?」

早苗が焦りだす 無論 里奈も龍も呆気に取られていた。

これほどの強力な術を見るのは初めてで もうどうすることもできない。

「そうよ! 私たちも融合術すればいいんじゃない!」

早苗がポンッと手を叩き言う。

「えっ!?」

龍はその発言に驚いたが それ以外に方法は残っていない。しかも術は目の前に迫ってきている。

「うん…やってみよう」

ゴクリと唾を飲み込んで龍は言った。 里奈も頷き3人は杖を重ね合わせた。

「融合術 ディル・ボルズ!」

唱えたがなんと不発 3人の思いが重ならなかったためだ。

「嘘! な…なんで!?」

「とにかく逃げ……」

「えっ?」

すると3人の前に一人の女の人がたたずんでいる。

「あなたは…?」

術の鈍い音がして粉塵があたりを包む。 ルナンとカナンは3人の生死を確認するため粉塵を振り払っている。

「直撃だったみたいね ルナン」

「ええ……私たちの敵でもなかったわ」

クスクスと笑っていると粉塵の中から人影が見える。

「私の場所で何をしている」



その中から出てきたのは赤髪をした女の人であった。

「あんたは……」

ハッとルナンはその女の人の正体を見抜き一歩下がる。

「炎の精霊……ディア」

「ほぉ…私の名を知っているのか……」

そしてディアの後ろからひょっこり姿をあらわしたのは紛れなく龍・里奈・早苗であった。

姉妹が術を放ったとき ディアが盾となり3人を守ってくれたのだ。

「どうやら私の所を荒らしているのはお前らのようだな」

ディアの目が赤色に変わる。

「ルナン……一旦引き返さない?」

カナンのさっきまでの余裕が一気になくなる。

何せ精霊の力は魔法界の中でもトップレベル そうそう勝てる者はいない。

「いえ…駄目よカナン……私達には任務を果たさなければならない」

「そうだよね……あたし何言ってたんだろ……禁魔法の力を使えば精霊なんかイチコロだよね」

姉妹の体からどす黒いオーラが見える。

「本当の禁魔法の力を見せてあげる」

そして杖の色がだんだん黒色に変わっていく。

「タウスト・バーン……」

姉妹はつぶやいた。 この術は 黒川彰に放ったあの心まで焼き尽くす禁魔法。

到底3人では打ち消すことは不可能。

「アハハハハハ……心まで焼き尽くしてあげるわ」

姉妹は高笑いをする 3人は杖を構えて強化呪文で防ごうとするが目の前に炎の精霊が立ちはだかる。

「お前らの術じゃ 無理だ」

はき捨てるような言い方でディアが言い放つ。

「と言っても私の術でも相殺できるかどうか……」

自信なさげにディアが3人に言う。

「じゃあどうすれば……」

「そうよ……どうすればいいのよ!」

「私と契約をするのだ たしかお前の名は早苗だったかな」

「えっ!?」

「早苗と!?」

早苗以上にビックリしたのは龍だった。

あのいつもうるさくて傲慢なあの早苗が精霊と契約だなんて思ってもいなかったからだ。

「もう時間がないよ!」

しきりに里奈が焦りだす もうそこまで術は迫ってきているからだ。

「契約の仕方は知っているな?」

「うん……里奈の契約するときに見てたから……」

恥ずかしそうに早苗は杖をディアに向けて唱えた。

「コントラクト!」

そう唱えるとディアは杖に吸い込まれていく。

「早苗!急いで!」

「早苗……早くディアを召喚しろ!」

「で……でも…あたし…」

内心早苗は不安だった。 もし召喚したとしても あたしがディアの足を引っ張るだけかもしれないっと。

姉妹の放った術は里奈と龍がなんとか防御呪文で必死に防いでいる。

「あらあら頑張っちゃって……どうせ無理なんだから諦めなさいよねぇ」

「そうだね カナン……もうあいつらに勝ち目がないわね」

姉妹は次の攻撃をやめ 3人の様子を伺っている。

「早苗……!!」

「わ……分かったわよ!」

早苗が目を瞑り 覚悟を決めて目を開き唱えた。

「炎の精霊 ディアよ 私たちを守って!」

早苗の杖から炎の精霊ディアが召喚された。

「私と早苗の力があれば大丈夫だ……心配などするな」

「えっ……そ…そうよ! ……私とディアがタッグを組んだら強いんだからねっ!」

早苗は怒りながらも心配してくれるディアに少し感謝していた。

なんだかディアとならこいつらに勝てそうな気がした。

「里奈…龍! 防御呪文を解除して!」

「うん…」

「…早苗の力を信じてみるよ」

龍が半信半疑の言葉を早苗に返す。

「ふんっ! 信じてみるじゃなくて 信じるでしょ!」

早苗の指示通り里奈と龍が防御呪文を解除した瞬間 里奈と龍の前に早苗とディアが身を乗り出す。

「いくわよ! ディア! もうあいつらにブス女って呼ばせないんだからね!」

ディアと早苗の心が一つとなる。

そして早苗の心に直接ディアの言葉が聞こえる。

無言で早苗は頷き杖を構えた。

「フレア!」

二人は同時に唱えた。小さな球体は姉妹の術の中に吸収されるように入り込んでいく。

「フフフ……最後に何を見せてくると思ったら 術の不発ね……アハハハ」

「本当にあなた達面白かったわ……」

姉妹が余裕をかましていると 姉妹が放った術に変化現れ始めた。

表面に泡ができ始め 次第にグツグツと音を立て始める。

「いまだ 早苗! 何でもいいから術を放て!」

「う…うん」

ディアの言うとおりに早苗は初期呪文を姉妹の放った術に当てた。

「ルナン見てよあれ ……何をしてるんだか……もうあきれて…キャッ!!」

「くっ…!!」

ルナンとカナンは反射的に後ろに下がり衝撃を防いだ。

なんと姉妹が放った術が突然爆発をし打ち消しのだ。

「や…やった!」

早苗は里奈を抱きしめると満面の笑みで喜ぶ。

「すごいよ……早苗」

「き…奇跡か!?」

「奇跡じゃないわよ! これぞあたしとディアの連携技ってわけよ うんそうよ!」

自慢げに早苗がずいっと顔を龍に近づける。

「はいはい」

龍が苦笑いをしながら言う。

しかしその一方で姉妹は少し驚いていた。

「まさか炎の精霊と契約して かつすぐに連携技ができるなんて……」

「あのブス女 結構やるわね アリスストーンに選ばれてもないのに」

姉妹は衝撃によってついた砂を払い 走って3人と一人の精霊を囲んだ。

「これで勝っただなんて思わないでね!!」

「そうよ 私たちはまだ力を5割も出してないし……」

姉妹の力がさらに増す。 見ているだけでも威圧感が感じられるぐらいだ。

ちょうどそのとき近くの岩影で黒いローブに身を包んだ者が様子見をしていることに3人と姉妹は気づいていなかった。

いや気づくはずもなかった。

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