* 第14章  プルボルス火山 *
「さて 本当にあの子達プルボルス火山にくるのかしら」

「さあね どちらにしてもこの男は始末しろって言われてるし……」

ルナンとカナンは夕日を見ながら会話をしていると後ろから男が姿を現した。

「おやおや ルナンとカナンではありませんか……仕事の方は順調なんですか?」

「ええ でもこの仕事が終わったら本当に私達に力をくれるわけ?」

カナンがその男に詰め寄る。

「ええ 本当ですよ 仕事が終わればの話ですが……」

「どういう意味なのその言い方は…」

ルナンがカナンの前に立ってその男の服を掴みながら言った。

「まぁまぁ 手を放してください ルナン……まずは仕事を終えることに専念しましょう」

「……。」

ルナンはあっさりと服から手を離すとカナンの腕を掴んで消えていった。

「さて あの子達がちゃんと仕事を成すことができるかどうか拝見しないとね……」

笑みを浮かべたその男も風と共に消えていった。



───アスケノス学校では

「はぁはぁはぁ」

息を切らしながら3人は校長室の前までたどり着くことができた。

龍がドアをノックしようとすると中からボソボソと声が聞こえる。

「───が行方不明なのじゃ」

校長先生が小声で言う それにつられてアスベル先生らしき声の人も小声で返す。

「ええ 二人の部屋も確認しましたが特に変わった感じはなかったです」

「一体どうしたものか まさか ───との関わりではなかろうか」

龍は耳元をドアに当てながら一生懸命話の内容を聞いていると後ろから早苗がわざと背中を押した。

「うわっ!! なっ何すんだよ!」

「何ってただ押しただけよ まさかこんなにも驚くとは……流石 龍ね」

「それってどういう意味で……あ…」

3人が上を見上げるとそこには 校長先生とアスベル先生が立っていた。

「あ…あの…俺たち何も聞いてませ…」

「龍がドアにへばりついていたことなんてもう分かりきってましたよ」

ニコリと笑いアスベル先生は龍に言った。

「えっ……」

「で…一体校長室まで来て何のようだい?」

「実は…」

里奈がさっき手紙と血がついた生徒手帳を先生に見せると目の色が変わった。

校長先生とアスベル先生は重い表情を浮かべた。

そして3人を手招きし入ったのを確認すると校長室の鍵を閉めた。

「で…これは何処でもらったのかのぉ」

「俺が寮に戻ったら机の上に置いてあったんです…」

ふむふむと校長先生はうなずき 3人に生徒手帳を見せた。

「これは普通の血痕だと思われるが 実はこれは模様で禁魔法者の証の模様と同じなのじゃ」

「ってことは まさか室長も禁魔法律者!?」

龍のその発言に校長先生はしかめっ面をした。

「わしは この子が禁魔法律者に囚われていると思うがのぉ」

「ええ ぼくもそう思います 多分龍をおびき寄せるための手段ですよね…」

アスベル先生が手紙をたたみながら言った。

「内容的には 龍一人でプルボルス火山に来い と書いてありますが…校長先生…」

「ふむ とりあえず一人で行かせるのは危険じゃ 先生達もついていきたいが」

校長先生が腕を組みながら考え込む それを見てアスベル先生が話しを繋げる。

「僕たちもこんな危険なところに行かせるのは山々なんだけど 実はこの火山にも結界があるんだよ」

「また結界!?」

早苗がうんざりした感じで言う。

「ってことはまさか そこには古の森の時みたいに精霊がいるのかしら」

里奈が手をポンをたたき言った。

「その通りだね 里奈…でも何故指定場所がプルボルス火山なのかも分からない…」

おでこに手を当てながらアスベル先生は真剣に考えていた。

ひとまず約束の時間まで十分にあるので各自部屋に戻るようにとの指示。

また何かあれば連絡するとのこと 3人はため息をつきながら廊下を歩いていた。

「なんかあたし達 どうしてこうもトラブルに巻き込まれるのかしら」

頭を掻きながら早苗が迷惑そうに言う。

「ただ単に…運がないのかな…」

「とりあえず 明日の勉強でもしてようかな」

里奈が気楽な発言をする こんなときに勉強をすると言う里奈の精神がはおかしいと早苗と龍は思っていた。

だがあえて口に出すことなく3人は各自の部屋に戻ったのであった。

夕食時 3人はいつもの時間 いつもの席に座わり 料理を待っていた。

だんだん生徒達も集まっていき 数分後には数百あった席が一気に人で埋まった。

チャイムの音と共に食べ始めるのがこの学校のしきたりである。

そしてチャイムがなった瞬間 ホールの照明がパッと全部消え あたりは暗闇に包まれた。

「ど…どうなってんの?」

「早苗も龍君も無事みたいね」

早苗のあわてぶりとは裏腹に里奈は冷静に対応していた。

ひとまず魔法であたりを照らしながら3人はじっと待っていた。

回りの生徒はパニック状態に陥っており ドタバタと走ったり食器が割れる音が響いていた。

数分後にパッと明かりがつくとあたりはむちゃくちゃの状態。

中には転んで怪我をしている生徒 お皿の破片で傷を負っている生徒もいた。

「ねぇ……あれって何?」

龍が上の方を指して言った。 早苗も里奈も指の方向をみると なにやら物体が引っかかっている。

それはだんだん角度を変えて真っ逆さまに龍の目の前に落下した。

その物体は 焦げ付いていて人間らしき形をしており 少し悪臭がした。

「何……これ…」

「ねぇ…これってまさか 人間じゃないよね?」

苦笑いをしながら早苗は言った。

里奈はその物体の横に落ちている 焦げ付いている紙を拾いこちらに向けて広げた。

「どうやら生徒手帳みたい…名前は……黒川彰」

「えっ!? 黒川彰!?」

「じゃあ この物体いやこの死体は黒川彰だって……?」

その発言に 生徒達が集まってきて物体を囲んで様子を伺っている。

「とりあえず先生をよんだ方が…」

そう言って里奈が一歩進んだ瞬間 またしても照明が消えた。

ものの数秒でまた明かりがついたがなんと さっきの物体が姿を消していた。

「ど…どうなってるの!?」

「消えるなんて…そんなまさか」

野次馬の生徒達は なんだ ただのゴミだったのか と思い各自席に戻り食事を再開していた。

しかし3人はさっき物体があった位置をじっと見つめていた。

「やっぱり…さっきのは黒川彰よね」

「見る限りは…だって実際 行方不明らしいし…」

少なからず3人は この学校に異変が起きていることに気づいた。

「とりあえずこのことは内密にしておきましょ」

「うん…本当がどうかわからないし…」

里奈と龍そして早苗は 各自席に戻り食事を食べた。

さっきの出来事は一体なんだったのか そう考えながら───

約束の時間まであと1時間と迫ったときのことだった 校内放送で3人が校長室に呼ばれた。

急いで龍は校長室に行き ドアを開けると既に 里奈と早苗は椅子に腰掛けていた。

「やっと着たのね 先生揃いましたよ…で…」

「ふむ やはり龍一人で行かせるわけにはいかんのじゃ それで3人一緒にいってほしいのじゃ」

「で…でも 3人で行ったりしたら 室長の命は……」

「大丈夫よ」

ドアを開いて現れたのは 魔法学担当の相田渚先生とアスベル先生だった。

「渚さんが言うように 僕たちも結界のあるところまでついていきます 何かあったらこれで…」

そういってポケットから取り出したのは銃だった。

「これで ルナンとカナンを殺せと?」

龍が真剣な顔でアスベル先生に言う。

アスベル先生はニコリと笑い この銃の説明をし始めた。

この銃は 「魔法銃」 と呼ばれている物で市場にはあまり出回っていない代物。

使い道は もちろん銃としてもできるが 大半は緊急事態のために空に向かって撃ちだし救助を求めるため。

「何かあったら直ぐにその銃を空に向かって撃って……」

そしてそれを龍に渡して3人と2人の先生はプルボルス火山を目指して出発したのであった。

約束の時間まで残り30分────

「ここまでが私達がついていける場所ね」

結界を見つめながら相田先生は言った。

「じゃあ 何かあったら直ぐに銃を使ってね…君達なら人質を救えると思う…」

龍の肩にポンッと叩き アスベル先生は手を振った。

それに答えるように 3人は頭を下げて結界の中に入っていった。

「本当に彼らは大丈夫なんですかね…」

相田先生は心配そうに言う。

「大丈夫ですよ 相田先生……何せ彼らは選ばた子なんですから…」

「とりあえず 非常事態に備えてここで待機しましょう」

「ええ……そうですね」

その頃 3人はゴツゴツした岩道を登っている最中だった。

上に登るうちに段々暑さを感じる 最近のプルボルス火山は周期的に噴火があるせいだ。

そのせいで地表の温度が少なからず上がっているみたいだ。

「あー微妙に熱いかもー」

「そうかなぁ〜私は別に感じないけど」

「で…あとどれくらいで頂上なんだろ」

龍は時計を見ながら少し焦っている。

もう約束の時間まで5分前であった。

「行く前にアスベル先生にもらった地図を見ると もうそろそろだと思うけど…」

「あーもー歩くのめんどい」

早苗は息を切らしていた そして足はよたよたの状態で今にも倒れそうだ。

「もうすぐだよ 早苗……あ…向こうに何か見える」

里奈はそっちの方を指差して言った。

早苗もその方向を見ると紛れもなくルナンとカナン そしてしてぐったりとそこに座っている室長が見えた。

「あ! ルナンとカナンだわ…あたしをブス女と呼んだあの忌まわしき姉妹…」

さっきまでの早苗とは違い足取りが一段と速くなる 表情はいつもより険しく周りにはオーラが見えるくらいだ。

「早苗…ちょっと待ってよ」

里奈が早苗の服を掴んでも構うことなく姉妹に向かって突き進む早苗の怒りは頂点に達していた。

そしてとうとう 3人は約束の場所に到着した。

「あれれ…おかしいわね 私達は早川龍を呼んだのに邪魔者がいるわね」

「そうだよねー まぁ沢田里奈がいるのは一石二鳥だけど おまけはいらないわ」

ルナンとカナンはクスクスと笑っている。

「おまけですって!? あんたたちあたしに恨みでもあるわけ? あー分かった あたしのこの美貌に嫉妬してるのね!」

「はぁ!?」

「んなわけないじゃない? ほんとこの女むかつくわ」

カナンがイライラしながら杖を上下に振っている。

「まぁいいわ とりあえず室長をこちらに引き渡しなさい!」

本来の目的をようやく思い出した早苗はいつもよりも声を大きくしていった。

「駄目よ だってあんた達約束守れなかったんですもの……返すわけにはいかないわ」

「あーじゃー アリスストーンをくれたらこの男を返してあげる」

ルナンとカナンは再びクスクスと笑った。

この様子だと室長を平気で殺しそうな感じがする と龍は思った。

「じゃあ 俺たちを殺すことができたらアリスストーンは渡してやる」

その発言にルナンとカナンは爆笑した。

笑いこけたあとに杖をこちらに向けて言った。

「いっておくけどあたし達強いよ……」

「ええカナンの言う通りよ…あなた達が死ぬ前にあなた達に土産をあげるわ」

思い出したようにルナンはおもむろに物体をこちらに投げ出した。

「これって……嘘でしょ…」

「そんな……」

愕然とした表情で里奈は言った。 それはなんと無残にも切り裂かれた黒川彰の生首であった。

「フフフ…あなた達もこの男みたいにしてあげるから……」

「せいぜいあたし達を楽しませてよねぇ〜」



ルナンとカナンは杖を重ね合わせて先制攻撃を仕掛けてきたのであった。

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