* 第13章  人質 *
「ふぅ……到着っと 4人を同時にジャラールするのは結構魔法力を消費するなぁ」

アスベル先生と3人はアルケノス魔法学校の保健室に不時着した。

「とりあえず 3人をベットに寝かしてっと……」

一人一人をベットに移し終えて椅子に腰掛けると 保健室の扉が突然開いた。

「あれ…? アスベル先生 いつの間に戻っていらしたんですか?」

プリム先生は少々驚いた表情でアスベル先生に言った。

「ええ…たった今着いてちょうど3人を寝かしたところなんですよ」

「と言うことは 水の精霊との契約ができたのですね」

はい と言わんばかりにアスベル先生はうなずき 微笑んだ。

疲れたアスベル先生に気を使っているのか プリム先生はポットでお湯を沸かし アスベル先生の好きな

コーヒーを机の上にそっとおいた。

「お疲れ様でした アスベル先生どうぞ」

「あ…ありがとうございます」

コーヒーを片手に持ち 一口飲んだ瞬間 不意に ドンッという乾いた音が微かに聞こえた。

「なんでしょうか 今の音は……」

机にコーヒーを置いて アスベル先生は立ち上がった。

「もしかしたら 魔法学の実技をやっているとか……」

「うーん やはり気になるのでちょっと見に行ってきますね」

そう言ってアスベル先生が一歩前に足を踏み出した時 あたまがぼーっとし始めた。

「アスベル先生 お疲れじゃありませんか? 代わりに私が様子を見に行くのでゆっくりしてください」

「ごめんなさい…気を使ってくださ…って…」

力がゆるみそして椅子に もたれかける様にアスベル先生は眠りについた。

「お休みなさい……アスベル先生」

眠ったのを確認した後 プリム先生はポッケから 白い小瓶を取り出しそれを見つめると ニヤリと笑った。

「早く後片付けしなきゃね……」

そう呟いて プリム先生は颯爽と保健室を後にしたのであった。


数時間後 不意に誰かに肩を叩かれたアスベル先生は はっと目を覚ました。

周りには既に プリム先生と3人がケロ助の寝ているベッドに集まっていた。

「もー先生 爆睡してたわよ アホみたいに口をあけたままで」

早苗が ずいっと身を乗り出し じーっと見つめた。

「あーごめんごめん 先生も疲れてたみたいで あははは」

「アスベル先生 そろそろ始めるので……こちらに来てください」

プリム先生が真剣な表情でケロ助をベッドから取り出しながら言った。

「じゃあ 先生始めます……」

里奈は杖を取り出し 呪文を唱え始めた。

それと共に周りの空気が徐々に冷たくなっていくのが体で感じることができるぐらいだ。

「水の精霊 アリアよ 癒しの力を我が手に……」

すると里奈の杖が輝きを増しそこから水の精霊アリアが姿を現した。

先生方2人は見るのは初めてで 水の精霊がいるだけで 圧倒されるのを少なからず感じた。

「里奈よ 早速私の力が必要になるときが来たのか……」

「うん この子の呪いを解いてほしいの…できる?」

「それくらいのことなら私にかかればすぐにでも……」

アリアはその後意味不明な言葉を呟きはじめると両手から光の玉ができはじめた。

そして両手を重ね合わせてケロ助の胴体に触れた。

「キュア・カーズ」

アリアが唱えると光の玉がケロ助の体に入り込み 体全体がほのかに輝き始めた。

それと同時に 顔色も良くなり ケロ助は目を覚ました。

「ん……ケロ?」

長い間寝ていたため疲れていたのが 虚ろな目で周囲の人達をぐるりと見渡したあと 再び寝てしまった。

「えっ!? どうなってるの!?」

「多分水の精霊の力で呪いは解けたみたいだけど 体力までは治しきれないみたいね」

プリム先生が龍に答える。

プリム先生によるとあと二日は安静にしていないといけないということらしい。

「では私の役目は終わりのようだな また何かあればいつでも呼ぶが良い 里奈」

「ありがとう アリア……お疲れ様」

里奈がお礼を言った後 アリアの体が透け始め 里奈の杖に吸い込まれ消えてしまった。

「じゃあ あとは先生達が見ておくから あなた達は各自寮に戻っていなさい」

「えーっ…」

早苗が駄々をこねる。

「そうそう……明日からテストだってこと…」

わざとらしくアスベル先生が3人の前で呟く。

「あ……」

「あああぁぁぁぁっっ!!」

3人は慌てふためき 急いで自分の寮に走って戻っていった。

修行をしていたせいなのか すっかりテストのことを忘れていたのだ。

この学校のテストは 人間界と同じで ある一定の点数を取らなければ2年生になれない。

しかし一年生のテストはたったに3教科(魔法学(実技・筆記)・魔法歴史学)

人間界の教科よりもはるかに少ないのはいいのだが 範囲が半端なく多いというのが難点。

数学のように計算はないのだが 全て暗記物のためやらなければ点数は取れない。

崖っぷちに立たされた3人は徹夜で1教科数十ページの範囲をまる覚えしようと努力するのであった。

次の朝 龍は目をこすりながら のろのろとした足取りで歯を磨き 魔法着に着替え部屋を後にした。

やはり健一の部屋は固く閉ざされており今は誰も入ることもできない状態だ。

「健一…一体何処にいったんだよ…」

龍は健一の部屋の前で立ち止まり独り言をいった。

男子寮内ではいつもとは違う雰囲気をかもしだしていた。

片手に魔法書を持ちながら歩く生徒 ブツブツと呟きながらソファーで横になっている生徒

龍もそれと同じで魔法書を片手にパンをかじっていた。

時間はすぐに過ぎていき 生徒達はいくつかの場所に分かれて試験を受け始めた。

龍は早苗と里奈と同じ試験場で3人一緒に座った。

「龍あんた寝不足ね まぁあたしもなんだけどね…」

「うん……」

ちらりと里奈の横顔を見るといつもと変わらず魔法書をじっと見つめている。

「そういえば 里奈は昨日どれくらい勉強したわけ?」

「まぁまぁかなぁ」

「まぁまぁ ねぇ…」

試験時間に近づくにつれて 段々人も集まってきてボソボソと暗唱するのが聞こえる。

そのときちょうど その声を掻き消すように一人の生徒がドタドタと走ってきた。

「すまん ここ開いてる?」

「え…あー…開いてますよ」

「ありがとう」

そう言って龍の隣に座ったのは なんと寮の室長だった。

「でもどうして2年生の室長がこんなところに?」

「実は魔法学を去年 単位落としちゃって」

恥ずかしそうに室長は小さな声に言った。

「そうだったんですか……」

龍が気の毒そうにいうと室長は苦笑いをして魔法書を取り出し暗唱し始めた。

「そろそろ時間ね」

「あーなんか緊張するなぁ」

コツコツと廊下からこちらに近づく足音がする 徐々に音が大きくなりそれが気持ちを高ぶらせる。

扉を開いた先生は 魔法学担当の 相田 渚 先生だった。

両手に支えきれないくらいの試験問題の紙をドサッと机の上に置くと一息ついて言った。

「では これは魔法学の実技のテストをします 赤点だった者には特別講習があるので…」

そのあとテストの注意点などを聞き テスト開始。

龍は早苗をちらりと見るとペンを器用に回しながらうーんと頷いていて 一方里奈はスラスラと問題を解いているように見える。

80分という試験時間は龍にとっては早く感じた。

なんとか全部は埋めたものの全然自信がなく どっちかというと赤点を取りそうな感じがしてたまらなかった。

次の試験の実技はというと サンダ系呪文以外は龍自身ではできたらしく まず単位は落とすことはないだろうと思った。

最後の魔法歴史学は プリネイス・オルジョワの脂肪のせいなのか やけに教室が暑く感じられた。

さらにはテスト中にプリネイスが寝たため 目を盗んで人の答案をカンニングした龍は テストが終わったあと少し罪悪感が芽生えた。

「…やっとテスト終わったわね まぁ中学校のテストよりかは教科数が少なくて楽といえば楽だったけど」

ため息をつき 筆箱にペンや消しゴムをしまいながら 早苗は言った。

「うん…でも問題用紙が5枚っていうのがビックリしたけど でも大体はできたよ」

余裕そうな感じで里奈が答える。

「で…あんたはどうだったわけ?」

「まぁまぁじゃないかな……」

本当は微妙なできだったのにもかかわらず 早苗に侮辱されるのが嫌だったので龍は小さな嘘をついた。

「じゃあ 今日は魔法街に遊びにいこうか!」

早苗が里奈の肩をポンッと叩いて言った 里奈は笑顔でうなずくと二人で教室を出て行こうとしたときに

早苗がふとこちらを振り向いて言った。

「あんたも来なきゃいけないんだからね! 準備ができたら正門の前に待ってるのよ!」

半強制的に龍は魔法街に行くことになってしまった この後 魔法街でどうせ早苗がはしゃいで大変だろうなぁと

思いつつ自分の寮に戻った龍は ふと机の上に茶封筒が添えられていた。

差出人不明 さらには魔法郵便局のスタンプもないので少し疑問に思ったがとりあえずあけてみることにした。

手紙の内容はこのような感じであった。


早川龍
明日の深夜2時にプルボルス火山にて待つ
もし来なければ人質をバラバラに殺す
嘘かどうかはこれを見ればわかる


一通り手紙を読み終えた龍は封筒の中になにやら手帳のようなものが入っておりそれを開くと

なんと室長の学生証であった ただそれだけではなく血痕で付着している。

「なんで 血なんかが……まさか人質って室長…!?」

まさかと思い 龍はちらかった部屋を飛び出して急いで里奈と早苗の寮に向かった。

ちょうど支度を終えて正門に向かい歩き出している早苗と里奈の前に龍は立ちはだかった。

「ちょっと 待って! これ見てほしいだ……」

はぁはぁ言いながら龍は早苗と里奈にさっきの手紙と室長の学生証を渡した。

「ふーん って納得できるわけないじゃない! もしかしたらいたずらってこともあるわ」

「とりあえず先生に相談した方が……ね?」

里奈の一声で 先生に一度この手紙の信憑性を確かめに行くことになり廊下を歩いていると後ろから気配がした。

普通に感じる気配ではなくなんだがおぞましい感じがする チラッと後ろを振り返るとそこには室長と二人の少女がいた。

「こんにちは 早川龍 沢田里奈 あと おまけのブス女さん」



「ブ……ブス女ですって!?」

ムカッときた早苗はズンズンと二人の少女に近づこうとしたら ピタリと足が止まった。

「どうしたのかしら ブス女 こないの? そうだよね来たらこの子 死んでしまうものね」

なんと室長の胸元にナイフが突きつけられていた。

室長はグッタリとしておりただ唸っている状態だった 早く治療しないと危ない感じた。

「そうだわ忘れてた…… 自己紹介が遅れたわ 私はルナン」

「あたしはカナン 仲のいい姉妹なの」

クスクスと不気味に笑うその姿は妙に怖い感じがした。

「あの封筒は私が出したの あんた達が 約束の時間に約束の場所に来ないと この子殺しちゃうから」

「そうそう…さっきまで監視してたけど 信じてないみたいだし 私達が本気だってことを証明してあげる…」

そういって胸元に突きつけていたナイフを今度は腕に突きつけたカナンは高笑いをした。

「じゃあ いくよ あたし達が本気だってことをね!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁああ」

室長の叫び声と共に鮮やかな赤色の液体は勢いよく宙に飛び出した。

そして室長の足元には小さな赤いみずたまりができた。

3人はまさかと思いながら 今起きている状況を簡単には把握できなかった しかし室長を助けないといけない

ということだけは分かっていた。

すぐさま室長のところへ駆け寄ろうとすると ルナンとカナンが杖をこちらに向けて言った。

「明日の深夜2時 プルボルス火山で待ってるわ」

「来ないと本当に 殺しちゃうからね……アハハハハハ」

そうしてルナンとカナンそして人質の室長は消えてしまった。

「早く校長先生にこのことを伝えないと……」

「うん」

3人は走って校長室へ向かうのであった。

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