* 第10章  禁魔法 *
「なんで部屋が真っ黒なわけ!?」

早苗が電気をつけて言った。

「そんなこと言われても それが健一の趣味だったかも知れないし……」

龍は健一の部屋をぐるりと見渡すとふと白いものが見える。

その白いものにたどり着くと龍はそれを拾い 里奈と早苗のところに歩み寄った。

どうやら手紙らしきもので あて先はなんと3人に向けたものだった。

龍は早速手紙を開封して中身を読んだ。

手紙の内容は────── 早苗 里奈 そして龍へ

多分この手紙をみるころにはもう僕はいないだろう。

もうこんなところ……つまらない…だから僕は旅立つんだ。

3人とも短い間だったけどありがとう。

次会う時は僕が僕じゃないから気をつけたほうがいいよ。

では────さようなら

龍は手紙をくしゃくしゃにしてポイッと投げ捨てた。

「どういうことなんだよ! 勝手すぎるにもほどがあるよ……」

「でもそれが健一の選んだ道なら 私は文句は言わないわ」

龍の投げ捨てた手紙を拾い広げていった。

「それにしても気になる部分があるのには気にならないの?」

「え?」

龍は早苗からくしゃくしゃ手紙を受け取りもう一回文を読み返した。

「どう分かった?」

「うーん……わかんないや」

「えっとだから早苗が言いたいのは『次会う時は僕が僕じゃないから気をつけたほうがいいよ』って部分よね」

そのとおりと言わんばかりに早苗は里奈を抱きしめた。

一方の龍にはというときつい張り手を早苗から与えられていた。

「で……わかった?」

「あーうん 要するに何だろ」

ぽかーんとした表情で龍はあっけなく言う。

「駄目だわこいつ…とにかく先生を呼んでくるからあんた達二人はそこで待ってて」

そう言って早苗は手紙を龍から奪い取り寮を出ていき 廊下を走っていると男の人にぶつかった。

「きゃっ! もーどこ見て歩いているのよ!」

「何処と言われてものう わしはただ歩いていただけじゃ」

その声に早苗はビクッと反応し その男の人の顔を見上げるとなんとアルケノス校長だった。

早苗は動揺しながらも健一の失踪のことを言うと校長先生はにっこり笑って言った。

「では健一の部屋にいくとするかのう 私の服に捕まるがいい」

早苗は言うとおりに服を掴んだ それを確認した校長先生は呪文を唱えた。

「ジャラール!」

すると2人の体がたちまち透け始め10秒後に姿が見えなくなったと思ったら今度は

龍と里奈のところに突然と現れた。

「うわっ!」

龍は驚きのあまりこけてしまった 里奈は突然現れた早苗と校長先生に驚きもせずに淡々としゃべりかけていた。

「で……健一の部屋はここかな?」

「あ……はい 僕たちが来たときにはもう……」

静かに校長先生はうなずき扉を開けて健一の部屋の中に入った。

「これはどういうことじゃ!」

校長先生は驚いた口調で言った。

「どうしたんですか? もしかして部屋が真っ黒なことですか?」

龍が校長先生に問いただすと返答しなかった 体を見ると小刻みに震えているのがわかる。

「そのことではない……もっと恐ろしいことがおきとる」

いつにもない怖い表情をしている校長先生に龍達は疑問を感じた。

「でその恐ろしいことって一体……」

「すまないが各自部屋に戻っていてほしいのじゃ」

「え?」

すると校長先生は杖取り出し3人に向けた。

「何するんですか!?」

「ジャラール!」 

校長先生が唱えると3人の体はだんだん透けていく。

「ど どういうこと……」

龍は透けた手足を見ながらそう呟く だんだん視界が明るくなっていき次第に目が開けられなくなった。

3人が消えた場所を校長先生はしばらく見つめていた その目はなんだか悲しそうだった。

「まさか健一が禁魔法術者の一人だなんてあの子達にはいえまい……」

校長先生は再び健一の部屋に目を戻した。

一方の龍はと言うと部屋の中でぼーっとしていた。

なんで健一が突然いなくなってしまったのか 校長先生の異常な驚きはなんだったのか

いろいろな疑問が頭を飛び交う中 窓の外がなんだかうるさく感じた。

龍が窓を開けて空を見るとなんだか遠くの方から音が聞こえる。

その音はどんどん大きくなっていき突然龍の目に飛び込んだ。

「え? 機関車?」

その言葉もかき消すような大きな音と共に健一の窓に密着するかのように停車した。

中から黒のコートに身を包んだ数名の男の人が窓から入っていくのを龍は確認した。

「それにしても 黒煙が……ゲホッゲホッ」

龍は何をするのか見たかったが機関車の黒煙せいで健一の部屋を見るどころではなかった。

窓を閉めて おもむろに壁に耳を当てるとなにやら話し声が聞こえる。

「これはこれはよく来てくださった 魔法警察の方々」

その声は紛れもなくアルケノス校長に間違いないと龍は思った。

「連絡ありがとうございます あなたの学校にもとうとう───ですか」

男の人は残念そうな口調で校長先生に言った。

「このことはまだ公には出さないでほしいのじゃ」

「大丈夫ですよ むしろ秘密にしなければならないことですから」

「それよりも誰かわしらの話を聞いているみたいじゃな」

この言葉に龍はビクリと反応した。

素早く壁から耳を離して ベッドに横になり寝たふりをした。

「このことはまた後ほど ということで……」

「わかりました また何かありましたらご連絡願います」

そう言って男の人は機関車に戻り 再び大きな音と共に空の彼方へ発車していくのを龍はふとんの隙間からチラリとみていた。

そして次第に眠たくなり そのまま龍は寝てしまった。

小鳥の鳴く音 窓に入ってくる心地よい風で龍はふと目を覚ました。

明るさからしてどうやら夜を通り越して朝になっている ふとんを蹴飛ばし龍は急いで着替えをし始めた。

今日は水の精霊との契約の日だったからである ドタバタしながら荷物を持ち寮から出ると早苗と里奈が座り込んでいた。

「ちょっとあんた遅いわよ 昨日はあのあと姿見せないし」

「まぁいろいろあってね」

「じゃあそろそろいこうか アスベル先生の書斎に……」

里奈を先頭に3人はアスベル先生の書斎に向かうと既にドアの外にアスベル先生が立っていた。

「やっと来たようだね」



アスベル先生はニコリと笑い手を振った。

「今日は一緒に来てくれるんですよね?」

龍はアスベル先生に問いただす。

「できれば君たちをサポートする形で水の精霊がいるといわれている古の森に行きたいのは山々なんだけど」

「だけど……?」

「実は古の森には特殊な結界があって 一定の魔法能力者以上は入れないんだよ」

「てことは3人!?」

「結界がないところまでは案内できるから……」

早苗は驚きを隠せなかった 実はアスベル先生がいれば契約なんてすぐに終わると思っていたからだ。

「大丈夫 僕の修行を耐え抜いたから心配しないで」

やさしくポンッと早苗の頭に手を添えてアスベル先生は正門に向かって歩き出した。

3人も先生のあとに続き正門に向かいだした。

その後姿を見ている一人の男の子がニヤリと笑いつぶやいた。

「水の精霊との契約頑張ってね……」

そして龍をジロリと睨みつけその男の子は姿を消した。

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