* 第9章  憎悪 *
次の朝 龍は時間通りに起き仕度をすませて健一の部屋を覗いたが既にいなかった。

寮を出ると早苗と里奈が既におり 3人は一緒にアスベル先生の書斎に向かった。

「それにしても健一は何処にいったのかな?」

龍が早苗に向かって心配そうに言う。

「多分もう健一はもうアスベル先生のところにいると思うわ」

スタスタと歩きながら龍の問いに早苗は答えた。

「あ……二人とも急いで……もう約束の時間まで少ししかないよ」

里奈は時計を見ながら足の運びは徐々に速くなっていた それに続くかのように龍と早苗の足も速まっていった。

「はぁはぁ…先生おくれてすいません」

龍が勢いよく扉を開いた。

「いえいえ 大丈夫ですよ それよりも健一が30分前にきたのが驚きですがね」

アスベル先生の後ろから健一がぬっと顔を出した。

健一の顔は相当疲れており 見るからに不健康そうな感じがしていた。

「やあ……みんな遅いじゃないか……」

健一は杖をこちらに構えていった。 もういつもの健一とは何かが違うのには明らかだった。

「ねぇ 健一あんた大丈夫なわけ? なんかすっごい疲れているように見えるんだけど」

早苗が少し心配そうな感じで言う。

「大丈夫だよ こんなのいつもじゃないか……それよりも先生修行しましょう」

「あ…そうだね もう時間はとっくに過ぎているから始めようか」

先生は昨日とはまた違う本を取り出して ページをパラパラとめくり あるところで手が止まった。

「今日は攻撃呪文の中でも結構難しいのを教えようと思うのだが……」

アスベル先生はそのページの部分を4人に見せて言った。

そこに描かれていたのはまぎれもなく雷の絵だった。 これが何を意味するのか4人は想像がついた。

「もしかして…雷呪文ですか?」

健一がアスベル先生に問いただす。

「そうその通り この呪文は術者にもダメージがあると言われているんだよ」

「つまり 中途半端な気持ちで唱えると被爆するということですよね」

「よく知ってるね健一は…ということで君達にはこの雷の呪文をマスターしてもらおうと思う」

4人は同時にえーっ!!という表情した。これは龍にも聞き覚えがあるのだ。

下手して呪文を唱えたら感電してしまうということを……それで死者が出たこともあるというのは

魔法歴史学の授業で小耳にはさんでいた。

「大丈夫!君達には才能があるしできると思う そう先生は信じている」

アスベル先生は4人の目をじっとみて言い ローブから杖を取り出した。

「では始めますか」

それを聞いて4人はローブから杖を取り出して同時に構えた。

「今回は魔力を相当消費するから 一回きりだと思っていてほしい」

アスベル先生はもう片方のポケットから紙を4枚取り出しそれぞれの足元においた。

今回想像してもらうのは 雷であるが集中しないと感電してしまうと何度もアスベル先生に注意を受けた。

そしてとうとう実践の時がきた。

「みんな集中して唱えるんだ……サンダ!」

「サンダ!」 4人は同時に唱えた。 龍の心の中は何故か複雑だったことには知る由もなかった。

龍を覗いた三人の杖からは眩い閃光が飛んで紙を燃やすことができた。

「やったー! できたよ先生!」

「うんうん できた!」

「まぁこんなもんだろ」

3人はそれぞれ喜んでいた しかし龍は身動き一つしなかった。

「龍どうしたんだ? まさか雷が怖いとか?」

健一が龍を冗談で叩くと龍の体はドサリとその場に倒れた。

「まさか……」

アスベル先生は急いで龍のところに駆け寄り体に触れようとした。 するとバシッと指がはじかれた。

「みんなプリムを呼んで来るんだ! 早く!」

「は…はい!」

里奈は急いで保健室に向かいプリム先生を呼んだ ちょうどプリム先生はケロ助に栄養剤を投与していた時だった。

里奈とプリム先生はアスベル先生の書斎に駆け込むと早苗が泣き崩れていた。

「早苗……? どうしたの!?」

「どうしたもないでしょ…龍の心臓が止まったわ……」

「そ そんな訳あるわけ…」

里奈は倒れている龍の胸に手をあててみた。早苗の言うとおり既に龍の心臓は停止していた。

「龍君! 龍君!……嫌だよ……目を開けてよ」

早苗と里奈の頬からは涙が滴れていた 一方の健一はニヤニヤと笑っていた。

「龍なんて死ねばいいんだよ 死ねば」

健一は口に手を抑え泣いている振りをした。内心では龍が死ねばこの学年の中では僕が一番だと思っていた。

「そこをどきなさい!!」

プリム先生は里奈の手をなぎ払い 急いで治癒呪文を唱えた。

「ケアフル!」

プリム先生の杖からは光の玉が形成され龍の体の中に入っていった。

「あとは龍君の生命力にかけるしかないわ」

「とりあえず3人は寮に戻っていなさい」

「で…でも」

里奈は迷いながらも健一と早苗のあとに続いて寮に戻った。

寮にもどった里奈はなんだが落ち着かなかった。

早苗は早苗で自分の部屋にこもったきりで里奈と顔を合わせなかった。

のこりの健一はというと部屋のあかりは全てけされカーテンも締め切っている中でイスに座っていた。

「龍なんて死んでしまえばいいんだよ あははははは」



ドンッとイスが倒れたのもしらず 健一は立ち上がり両手を広げ笑い続けた。

「僕は才能があるんだ そうだよあるとも……あははははは」

するとそこに一人の黒いローブを身につけた男が突然健一の前に姿を現した。

「どうです? そろそろ私共と一緒に来ませんか?」

冷たい口調で健一に問い掛けた男はそっと健一の手を触った。

「そうだね……いこう もうこんなところつまらない」

健一はニヤリと笑い黒いローブの男と一緒に姿を消した。

今日の授業は里奈も早苗も口一つかわすこともなかった。 健一が姿を消したことも知らずに龍のことばかり考えていた。

授業はもうテスト勉強の時期に入っていてあと1週間でテストというところだ。

無論2人は勉強していたが今日の朝のことがまだ気がかりなのか勉強に手がつかないでいた。

今日一日の授業が終わり2人は急いで保健室に向かった。

「龍君は生きてるよね 早苗」

初めて今日里奈は早苗に向かって喋った そのことに早苗は当然のことばかりに言った。

「何いってんのよ あいつが死ぬわけないじゃない 悪運だけは強いからね」

「うん!」

里奈は涙目で笑った。 二人は保健室の扉をひらくとそこには龍がプリム先生と楽しく会話していた。

「あーもー何やってんのよあんたは! ちゃんと寝てなさいよ!」

「だってもうなんともないんだもん だって寝てても暇だし」

龍が淡々と言っていると里奈が龍を抱きしめた。

「龍君よかった……心配したんだよ……」

「ご…ごめん」

里奈は大声で泣き続けていた それを見ていた早苗は何故か怒りが湧き出した。

「里奈離れなさい 龍なんかに涙をみせたら女として終わりよ」

「なんだって!? プリム先生に聞いたよ 早苗泣いてたんだってな」

「ふん 何よあんたまさか雷が怖くて呪文失敗して感電したんじゃないの?」

「えっ…あー…」

龍は痛いところを突かれてしまった 早苗の言うとおり失敗して感電した理由が雷が怖かったからだ。

「図星なんでしょ? ほーんと弱虫ね」

「まーまー二人とも」

里奈がいつもの仲介役をして2人の言い争いはそこで中断された。

そしていつもこの言い争いに拍車をかける健一がいないことに3人は気づいた。

「そういえば健一はどうしたの?」

「えっ? 見てないけど」

「あたしも授業始まってからずっと見てないよ」

「でも健一君が寮に戻っていたのは見たわ」

プリム先生が話しに割って入った。

「じゃあ一回見に行きましょ」

「うん」

龍はローブをはおり 3人は健一の部屋の前にたどり着くとドアを叩いた。

「健一〜! いるなら返事しなさーい」

早苗が適当な口調でいう いつもなら 「何?」と反応するのに返事はいつまでたっても返ってこなかった。

「おかしいわね」

早苗がドアノブを引いて隙間から様子を覗くと誰もいなかった。

「誰もいないわ」

「健一君何処いっちゃったんだろ」

「とりあえず中入ってみるか」

龍がドアを全部あけるとそこには真っ暗な空間が広がっていた。

「健一も趣味が悪いわね カーテンぐらい開けたらどうかしら」

早苗がカーテンをバッと開いた瞬間 3人は目を疑った。

「どういうこと……」

「部屋が……」

なんと健一の部屋は真っ黒に染められていたのであった。

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