* 第7章  アリスストーン *
その夜隣の部屋からうなるような声が聞こえてきた。

「うわ・・・あぁぁぁあ・・・はぁはぁ」

その声は龍の眠りを一気に覚ました なぜかというとその声の主は紛れもなく健一だったからだ。

何が起きたのかわからない龍はとにかく健一の部屋のドアを叩いた。

「健一 大丈夫!?」

ドアの奥からはぶつぶつとつぶやいているのが聞こえる 他にだれかいるのか・・・。

「健一・・? 健一!?」

何度も呼ぶとドアの鍵を開ける音がした。

中から出てきたのは健一とは思えない感じがした 酷く疲れた感じで顔からは汗が噴出していた。

「龍・・・心配してくれたの・・・?」

「もちろんだよ・・本当に大丈夫?」

「うん・・気にしないでちょっと悪い夢みちゃってさ あははは」

そういって健一は無理やりドアを閉めた。

「本当に 健一大丈夫なのかな・・・。」

龍は心配しながらも本人が大丈夫といっているので信じることにした でもおかしいのは確かであった。

次の朝 今日の授業は午後からということで龍はみんなを集めて ケロ助を探すことにした。

「でも何処から探せばいいんだろ」

「そうよ あのカエル何処にいったかもわからないのに探しようもないじゃない!」

早苗が朝っぱらからイライラしながら言う。

「あれ・・?健一君は来てないの?」

「うん・・なんか昨日の夜から様子がおかしいだ」

龍は二人に昨日の晩のことを話した。

「あのさ・・しってる龍・・・健一はこの学年の中でもかなりの努力家って言われてるの」

「へー・・そうなんだ・・。」

そう 健一は入学してからずっと夜中まで魔法学の勉強をしている そういえばドアの隙間から光が漏れ出していた

のは龍にもかすかに記憶があった。

「健一君 最近疲れているように見えたし・・」

里奈が不安そうに言った

「とりあえず カエルを探すんでしょ で何処から探す訳?」

「うーん・・わかんない」

龍があっけなく言う。

「わかんないだって!? あんたそれで探そうだなんて頭の神経おかしいんじゃないの?」

「と・・とりあえず 校内を全部見てみよう・・ね?」 里奈が仲裁を取る

 でも校内を全部みるといってもかなりの大きさ到底午前中には終わりそうにもない。

「校内を全部見てまわる必要はないんじゃよ」

廊下に突然現れたのはアルケノス校長だった 普段は生徒の前には滅多に姿を見せないので有名なのに・・。

「もしかして探しているのはこのカエルかね?」

そう言って両手を広げるとケロ助が姿を現した しかしいつもの元気がなくむしろ弱っているようにも見える。

「ケロ助に何があったんですか!? 校長先生!」

「ただ事ではなさそうね」

早苗が興味深々に聞く

「とりあえず保健室にいくのじゃ わしもさっき見つけたばっかりじゃからのぉ」

アルケノス校長の呪文で4人は一気に保健室の前に到着した。



「あら・・校長先生に 早川君達・・・どうしたのかしら」

プリムが校長先生の両手に横たわっているケロ助をみて表情が硬くなった。

「プリム先生・・ケロ助に回復呪文を・・・」

「無駄じゃ」

アルケノス校長がピシャリと言った そのわけはケロ助が呪いをかけられいるとのことだ。

いくら回復呪文を唱えても治らないと・・・・。

「だったら誰かケロ助君に呪いをかけたんですか?」

里奈がアルケノス校長に聞く。困った表情でその問いに答える

「この呪いは特別なのじゃ 簡単にいえば 禁魔法の呪文がかけられおる」

「き・・禁魔法!?」

「でも禁魔法はこの世に存在しないんじゃないの?」

早苗が食って掛かる。

「雑誌にも書かれている通り 最近禁魔法がらみの事件が多くなってきておる」

「そして禁魔法を受けた者はのろいがかけられる・・・。」

プリムが今までになく真剣な表情で言う。

「で・・ケロ助はこのまま放っておくとどうなるんですか?」

龍の問いにアルケノス校長があっさりと答えた 死ぬと・・・でも一つだけ方法があるらしい。

「その方法は 水の精霊のミル族と契約してもらうしかないのじゃ」

「水の精霊?・・・ミル族・・契約?」

龍の頭は混乱していた その代わりとはなんだが 里奈が丁寧に教えてくれた。

「ようするに水の精霊さんを私達の仲間にするってこと でも契約って2年生からじゃ・・。」

「そうなのじゃ 召喚魔法は2年生からなんじゃが・・」

「でもそれしかケロ助が助からないのなら・・俺そいつと契約する」

「あんたにそんなことできると思ってるの? まだろくに初期魔法もできないのに?」

早苗が龍をいつものようにけなす。

「実は 精霊というものは滅多に姿を見せないのじゃ・・じゃから契約するにも・・・。」

そう言ってふと龍と里奈のある部分にアルケノス校長は注目した そして目を疑った。

「君達が首に下げているその首飾りは・・まさかあの」

二人はなんだろうと首をかしげた そしてプリム先生がボソリとつぶやいた。

「アリスストーン・・まさかあの伝説の魔石がこんなところにあるなんて・・。」

「アリス・・ストーン?」

「アリスストーンは精霊達の源なのじゃ そして精霊達はその魔石に引き寄せられるのじゃ」

そうこのアリスストーンは はるか昔に優秀な錬金術者が作った伝説の魔石。

この魔石には膨大な力と精霊達を引き寄せる力を持っており多くの人を釘付けにした。

そしていつしかその魔石をめぐって大きな紛争が起こり始める。

それを知った錬金術者はこの紛争を止めるためにアリスストーンを葬ったと言われている。

「これを何処で手に入れたのじゃ?」

「親から・・ですが・・。」

二人は同時に答えた でもそれ以上アルケノス校長は追及しなかった。

すると奥から背の高い男の先生が入ってきた みた感じはまだ20代前半だろうか。

「皆さんおそろいでどうしたんですか? もしかして私はここに来てはいけなかったとか・・。」

「いやいや むしろ歓迎ですぞ アスベル先生」

どうやら アスベル先生は召喚魔法専門らしい 今日はプリム先生にお話があったのか・・。

アルケノス校長はアスベル先生にこそこそと何かを話している うんうんとうなずくアスベル先生。

「そういうことですか・・君達の事情はわかったよ 本当に助けに行く気があるなら私がある程度君達に教えてあげよう」

「本当ですか?」

「ああ もちろんさ」

アルケノス校長によると 2日間で水の精霊のために修行をするとかどうとか

その間ケロ助はプリム先生が面倒をみてくれるらしい。

今日の授業を終えたらアスベル先生の書斎にくるようにと言われ3人は保健室を出た。

早苗が振り返って龍に向かってこう言った。

「本当にあんたあんなこと言ってよかったわけ? どんなに危険か分かってるの?」

早苗が言うのもわからないでもない 精霊達と契約するのは至難の業 たとえであったとしても

力があまりにも強力 そして姿をはっきりと見ないうちに返り討ちにされるといわれている。

でも龍には考えている余裕はなかった ケロ助を助けるためならなんだってしてもいいと思っていたからだ。

いつもあんな感じの奴だが いざとなれば助けてくれるし 失いたくないと早苗に正直に言った。

いつもなら 反論してくる早苗だが今日は素直に そうね と言って先に行ってしまった。

残された二人は一緒に話しながら次の授業の場所に向かった。

今日の授業はどれも退屈で龍にとっては絶好の昼ねだった 気づくと既に授業は終わっており

黒板には無数の文字が描かれていた。

「え・・あ・・うーん」

「また龍君 寝てたの? そろそろテストだっていうのに・・。」

「だーいじょーぶ・・多分・・・」

実は本当のところテストが近いだなんて今知った龍は少し動揺していた。

「ほら そろそろアスベル先生が書斎で待ってるし いこっ!」

「あーうん」

二人は急いで階段を上りアスベル先生の書斎に入ろうとすると既に 早苗そして健一が中にいた。

「あ・・龍 遅かったじゃないか・・。」

健一はニヤリと笑みをこぼしながら言った。

その笑みが一体何を意味するのか龍にはまだ理解できなかった。

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