* 第6章  才能 *
龍がふと目をあけて辺りの光景をみて騒然としていた。

─── ここは 何処だ!? でかい穴に落ちてそれから・・。───

周りは何一つなく 真っ暗で自分の体の部分しかみえないからだ。

叫んでみても誰も反応するものはおらず 一人ぽつんといる龍はなんだか怖くなった。

ここにずっとこうしていても 状況は変わらないと判断したのか龍は見えない空間を歩き出した。

しかし歩いても歩いても 何処に着くわけでもなく とうとう諦めて座り込んでしまった。

「どうして誰もいないんだ!? 俺は・・どうすれば・・」

すると遠くの方から誰かを呼ぶ声がした 龍は立ち上がり一目散にその方向へと走り出した。

「龍君! 龍君!」

進むにつれてだんだん声が大きくなっていく そしてその声は紛れもなく 里奈のものだった。

「り・・里奈!!」

そう叫んだ瞬間龍は目を覚ました 周りには里奈、健一、早苗、そして先生がいた。

「龍君! やっと目を覚ましたのね」

里奈は涙目でうれしそうに言った。

「やっと・・? どういうこと?」

「あんたはね 三日間ずっと寝てたのよ ぐーすかぐーすかって ほんと飽きれちゃうわ」

「でもね 龍のこと一番心配してたのは 早苗だったりする だってずっと龍のそば・・」

「あんたは余計なこと言わなくてもいいの!!」

早苗のメガトンパンチが健一の脳天に命中した 健一は頭を抱えて痛そうだった あいつに手加減はないみたいだ。

「早川龍君だったわね 私は保健の先生の プリムよ まだ少し安静にしていきゃいけないから・・」

「あ・・はい」

「うわっ! そろそろ次の授業だよ! 早苗」

「うっそぉ! こんな奴にかまってたらもうこんな時間 急がなきゃね! いくよ健一」

「あ・・うん 待って!」

3人はドタバタと保健室を出て行った けど龍には気になっていたこのがあった それは健一のことだ。

何故か彼の右腕にはグルグルと包帯が巻かれているのだ この3日間に一体なにが起きたのか・・・

あとから本人に聞いてみようと龍は思った。

それから数時間後 龍はプリムに言われたとおりに安静にしていた なんだか外がうるさい感じがした。

大体想像はつく そう早苗の馬鹿でかい声だ。

「お邪魔しまーす! 龍 安静にしてる? もしかして何かしでかりたりしてないでしょうね?」

「いや 別に ただ言われたとおり寝ていただけだよ」

龍はめんどくさそうに答える。

「あの 龍君・・・これ・・よかったら使ってくれるかな?」

里奈がバックから取り出したのはノートだった それも全ての教科のだ。

「龍君が眠っていた3日間の授業内容だよ 貸してあげるから・・」

「あ・・ありがとう」

「ほんとにいいの? 龍に貸しちゃって・・なんの見返りもないよ 絶対に」

早苗がいつもの皮肉っぽく言ったがここはスルーしておいた そうでないとまた口論になりかねないからだ。

「ところでさ 健一は何処にいるんだい?」

「あ・・健一君ね 自分の寮に行ってると思うけど」

「あのさ・・健一って何か怪我でもしたのか?」

里奈は言いづらそうな感じで事の真相を教えてくれた。

「実はね 昨日の魔法学で攻撃魔法の授業で実践があったんだけど 
それで健一君が唱えた呪文が勢いがありすぎて自分の腕に燃えうつったの
 それで先生が慌てて治癒魔法を唱えてくれて少しのやけどで済んだってわけ」

「まぁ 自業自得って感じね ちょっと気合いれすぎたのかしら」

人の不幸までも皮肉そうにいう早苗の心は絶対に鬼だと龍は思った。

「早川君 もう体の調子が大分よくなったみたいだから 明日から授業出なさいね」

プリム先生が不意に龍に向かって言った。

「あ・・はい わかりました」

龍は荷物を整理して2人と共に保健室にでた3人はふと何かを思い出した。

「ケロ助は何処にいるんだ!?」


その頃ふと思い出されたケロ助はある小部屋の隅に倒れこんでいた。

「おやおや えっと・・早川君からはこう呼ばれていたね ケロ助だったかな」

冷たい口調で黒いローブに身を包んだ男がいう。

「さぁ 教えてもらおうか 例の物について・・・言わないと今度は黒こげにしてやるよ」

嘲け笑いをしながら 黒いローブの男は杖を器用に回しながらケロ助をじっと見ている。

「教えないケロ お前の目論見は全てお見通しだケロ」

「やせ我慢はやめたほうがいいですよ・・・じゃぁこれで最後にしますよ 例の物について教えろ」

さっきよりも強い口調で黒いローブの男はケロ助に向かって言った 右手の杖はケロ助を指していた。

「何があっても教えないケロ」

「ほぉカエルごときが私に歯向かうのか? やっぱりもう一度痛い目に合わせないといけないようだな」

黒いローブの男は杖を強く握りこう唱えた。

「タウスト・バーン 燃え尽きろ・・・。」

それと同時にケロ助の紅色の指輪が輝いた。

「ボル・オルズ!」

二つの炎は入り混じり打ち消しあうように思えた しかし違った。

突然 黒いローブの男の炎が黒に染まりだし ケロ助の炎を食うかのように包み込んだ。

「ケロォォォォ・・・。」

ケロ助は見るも無残な姿になっていた 一瞬にして体の全身が重度の火傷を負っていた。

もし呪文を唱えていなかったらいまごろ死んでいただろうとケロ助自身実感していた。

「うぅぅ・・・。 ボル・オル・・・ズ」

しかし唱えても炎は出なかった もう呪文を唱えるだけの体力もなかった。

「アハハハハ 無様な姿だ まぁこれで殺してしまってもいいが面白みに欠ける・・今日のところは見逃
してもいい・・次会う時は一瞬にして殺してあげるからさ・・・アハハハハ」
甲高い笑い声をあげながら黒いローブの男は姿を消した。

ケロ助は体力が尽きたのか意識を失ってしまった。

そんなケロ助がピンチの時に龍は寮に戻っていて里奈から貸してもらったノートを自分のノートに写している最中だった。

そこにふと健一が扉を開けて入ってきた。

「あれ・・? 健一どうかしたの?」

「あ・・うん・・いや・・なんでもないんだけど ほら・・ケロ助君どうしてるかなぁとか思っちゃって」

「あぁ あのカエル あー見えても強いし大丈夫だよ それよりも右腕大丈夫?」

「あ・・うん大丈夫だよ すぐ治るってさ あとそろそろ就寝時間だから寝たほうがいいよ あのうるさい室長が見回りにくるみたいだし」

「わかった ありがとう 健一 」

「じゃぁ また明日 お休み」

ばいばいを言って健一は部屋を出て行った。 でも健一に言われたとおり ケロ助がこれほどまでにもどってこないのは初めてだ。

前喧嘩しても数時間後に帰ってくるケロ助が一体どうしたのだろうか 何かに巻き込まれているのではないだろうか。

龍はだんだん心配になってきた 明日授業が終わったらケロ助を探そうと龍は思いながら眠りに着いた。

次の朝 龍にとっては初めての授業が始まる 1時間目は魔法学で校舎の3階の一番端っこの部屋が授業場所である。

4人は一緒にその部屋にはいり同じテーブルのいすに腰掛けた。

「皆さん おはようございます では今日も攻撃魔法の練習をします まずはこの前の復習から」

「この前の復習?」

龍は里奈に向かって問いただした 里奈は親切に 炎の攻撃魔法のことだよ と教えてくれた。

「机の中に入っている 紙を取り出して 中心に置きなさい」

生徒達は自分の机の中から一枚の白い紙をとりだす 龍もそれを見て一枚の紙を机の中心に置いた。

里奈が説明をしてくれたがこの紙は特殊で絶対に燃え尽きないという。

燃えたとしても表面が焦げるだけで水で洗えばすぐに白く戻るらしい。

「えーと前回もしたように 目を閉じて ロウソクが燃えているのを想像して・・・そして・・こう唱えます」

そのとき 先生の腕に力が入るのがわかった。

「オルズ!」



すると杖の先から小さな炎が飛び出し 一瞬にして紙が燃えだした。

「じゃぁ 加藤君 みんなに見本をみせてあげて」

先生はこげた紙を自分の机の引き出しに入れながらった。

実は健一はかなり魔法が得意な方だった 小さい頃から魔法を親から教えてもらっていたらしい。

その才能が先生の目にも留まったというわけだ。

「オルズ!」

健一がそう唱えると 前においてあった紙が徐々に燃えだして消えた。

「では 皆さんも一緒に・・・」

「オルズ!」

生徒達は同時にそう唱えた 杖の先から小さな炎が飛び出し紙が燃えるのがわかる。

でも中には 炎が出なかったり 出ても少しずつしか紙が燃えない人もいた

里奈も早苗も普通に先生と同じ感じで燃え尽き成功だった。

それに負け時と龍も頭の中にロウソクが燃えているのを思い浮かべて唱えた。

「オルズ!」

杖の先から炎が出たが 紙が一瞬で消えてしまった。

「あ・・れ・・?失敗?」

龍はかなり落ち込んだ 運動も勉強もできない・・さらには魔法も使えないなんて・・

そう落ち込んでいるとその光景を見ていた先生が龍のところに歩みよってきた。

「あなたは早川君だったわね すごいわ! 今の呪文は消失呪文と言って物体を消滅させるの・・まさか上級呪文が唱えれるなんて・・」

先生は一体なんのことを言っているのかさっぱり分からなかった龍だが 自分を褒めているのは少なからずわかった。

「龍君 すごいよ!」

里奈がまるで自分のことのように 喜んでいる。

「はいはいすごいわね でもオルズを唱えたのに消失呪文に変わるっていうのも問題あるけど」

早苗があきれた感じで言った まぁ彼女なりに褒めているのだろうか。

「龍すごいなぁ・・俺も龍みたいな才能があったらいいのに」

健一が羨ましそうに龍に言う。

「いや・・才能だなんて 健一の方が才能あるし・・。」

龍はそう否定したが内心はすっごくうれしかった 初めて自分が得意とするものができたと・・。

でも健一の拳は若干震えているのを龍は気づきもしなかった・・・・・・。

そして健一はボソリと呟いた。

─── 僕の方が才能あるのに・・・・。 ───

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