おなかがペコペコペコペコだ
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S博士という人が『コバ・ミゴ』という、皆の悩みや鬱憤を全て食べてくれる素晴らしい機械の発明に成功しました。すぐさま特許を取ると、『コバ・ミゴ』の量産を始めて全世界に発送。これが大当たりし、ストレス社会に生きる人々が一気に買い求めたので瞬く間に売り切れました。生産も追いつかない状況が長く続く様子から歴史的ロングセラーとなるのは間違いありません。しかしながら『コバ・ミゴ』の人気は留まるところを知らず、後から後から注文が入り、百年後までスケジュールが組まれるほどでした。
S博士はこの機会を逃さず、各国に電話をかけました。
「もしもし、H国ですか。『コバ・ミゴ』を地域にお一ついかが? これさえあれば犯罪も起きないし、戦争も起きない。地域の人々も不満を言わなくなる。国家安泰間違いなしだよ!」
この魅惑的な売り文句に各国は財政をはたいて『コバ・ミゴ』を国のあちらこちらに設置しました。もはや『コバ・ミゴ』は全世界にあって当然のものとなり、人々は毎日のように『コバ・ミゴ』の元へやって来ては自分たちの悩みや鬱憤を食わせました。そうしてすぐ皆は穏やかな表情になって『コバ・ミゴ』に「ありがとう」と言って去っていくのです。そんな幸せいっぱいの人たちはもちろん犯罪も戦争も何も起こしはしませんし、『コバ・ミゴ』たちも毎日たくさんご飯をくれる人々に感謝していたので特に危険はありませんでした。世界は本当の意味で平和となったのです。
確かに、S博士の発明した『コバ・ミゴ』は人々にとって大変素晴らしい機械でした。
それから程なくして『コバ・ミゴ』にある女の子がケーキを持ってきました。
「ケーキよ。甘くてふわふわしていて、とっても美味しいの」
ケーキを一口食べた『コバ・ミゴ』はぴたっと止まり、「おいしい?」と女の子が訊いても答えてくれません。なので、女の子は何度たずねても答えない『コバ・ミゴ』を放ってどこかへ行ってしまいました。
それに『コバ・ミゴ』は呼びとめることもしません。
何故ならこの世界にこんなにも美味しいものがあると知り、感動して動けなかったからです。
このように全世界の『コバ・ミゴ』たちは美味しいものを知るとストライキを起こし、ストレス以外のものを毎日ねだるようになりました。
「不味いものはもう沢山だ。もっと、もっと美味いものおくれ」
最初のうちは人々も仕方なく彼らにお菓子やら何やら分け与えましたが、だんだんと彼らを疎ましく思いはじめます。このままでは自分たちの食糧がなくなってしまうからです。そんな市民の不満が爆発的なものとなったとき、各国は暴走した『コバ・ミゴ』一掃をついに開始しました。
出動したブルドーザーやクレーン車が、『コバ・ミゴ』たちを次々と押し潰していきました。
こうして『コバ・ミゴ』は短いブームを終わらせることになったのです。
しかし、それには問題もありました。そのときに人々が食わせたストレスが外へ噴き出して持ち主の元へ戻っていったのです。
けっきょく人は元のストレス社会の中で生きるしかないと諦めたところ、ごみ置き場から『コバ・ミゴ』たちの声が聴こえるようになりました。
「不味いものはもう沢山だ。もっと、もっと美味いものおくれ」
近々、市民たちはこのやかましい声についても国に訴えるそうです。
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