大広間での朝食は、いつもと違った。
久しぶりなみんなとの顔合わせなのに、ハーマイオニーは不機嫌で、ハリーとロンも気まずそうにしていた。
昨日の2人の登場をまだ許せないらしい。


「昨日済んだ事を翌日までひっぱるのはよくないよ?」
「私が怒ってるのは昨日の事じゃなくて。 あんな規則違反をしておきながら、2人が反省してない事よ」


ツンっとしながら牛乳入りオートミールを食べるハーマイオニーの隣で、は軽く溜息をついた。

そうこうしているうちに、天井から一斉にフクロウが飛び回り出した。
手紙の時間だ。くちばしに手紙を咥えてきている。
伯母さんからの手紙らしい。
と、隣に座るロンの元にふくろうのエロールが水差しの中に落ちた。

手紙を見てロンは青ざめている。


「どうかしたの?」
「ママったら『吼えメール』を僕によこした」
「吼えメールって何?」


魔法界の事に詳しくないとハリーが交互に質問する。
ネビルに促されて、ついに赤い封筒を破ると、中から女性の怒鳴り声が何十倍にも拡張されて大広間いっぱいに広がった。

手紙の内容が終わると、手紙は燃えて消えた。


「今のが…吼えメール…?」


呆然としながらは呟く。
てっきり「牙吠ー」とか言うのかと思った。

間もなく騒がしい生徒の声が戻り、マクゴナガル先生が時間割表を配り出した。


「うう、魔法薬学いらないーっ」
「何言ってるの。どれも大事な科目じゃない」
「闇魔術に対する防衛術、楽しみでしょ?」


ハーマイオニーがガタンっと椅子をひっくり返して真っ赤になって驚いている。


「なな、何でっ…!」
「いいじゃないっ教師と生徒の恋。応援するわよ」
っ!」


自分も今教師と生徒という関係でありながら結ばれたわけだし。
色々面倒な事はあるけど、ハーマイオニーが好きなら応援してあげたい。
そんな考えは、彼の授業で消えた。

今目の前には小テスト。
得意気に長い自慢話が終わってようやく授業かと思えば、何この問題。
…教科書は一応読んだけど、わかんねぇ…
は、適当に書くことにした。



問1:ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?
レインボウ。

問2:ギルデロイ・ロックハートの密かな大望は何?
日本でも全滅の危機に瀕している顔黒女子高生を、
このホグワーツで流行させる事。
 魔法薬学は「チョベリバー」と言ってスネイプ教授を混乱させる。

問3:ギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が一番偉大だと思いますか?
この間の夕食の時、隣にいたスネイプ先生の頬についた御飯粒を指でとって「御飯ついてるーっ」と、食べた事。



半分ふざけてかいて、最後になった。



問54:ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物は何?
11月23日(勤労感謝の日)。
贈り物は、ダンブルドア校長とお揃いの下着。


正直、学校でたまにある意識調査よりも面倒だった。
回収後、ロックハートは回答を延々と説明し、見事全問正解したハーマイオニーは10点もらっていた。
恐るべし、愛の力。

授業はピクシー小妖精をぶちまけて終わり。
一体何しに学校来たんだ。


「ロックハートのどこがいいの?」
「スネイプのどこがいいの?」


質問し返されて、うっと詰まる。
所詮恋は盲目。人の好みは十人十色。
そういう事…ですか。



クィディッチの練習がある、というハリーを見に、競技場へ向かった。
ああ、学校って始まって間もないうちにどんどんやる事がやってくるものよね。

着いた時には緑の団体さんもいた。
スリザリンチームだ。


「こっちにはスネイプ先生が特別にサインしたメモがあるぞ」


自慢気にスリザリンのキャプテンが見せびらかす。
…スネイプ先生。
何だかんだ言ってスネイプ先生って意外とクィディッチ好きなんだよねぇ。

やっと人ごみに追いついた時、マルフォイと目が合った。
スリザリンのクディッチ・ローブを着ている。


「あれ、ドラ子どしたの?」
「僕が新しいシーカーになったんだ」
「へーっおめでとー!」
「見ろよ。これがニンバス2001だ。メンバー全員にパパが買ってくれたんだ」


箒に疎いに言ってもわからないのだが、とにかくスゴイらしい。


「旧型のクリーンスコープなんかは比べる価値もないね」


フレッドとジョージの手にある箒を見て、マルフォイは鼻で笑った。
これにはさすがにムっとする。


「2人は箒で実力変わったりしないんだから。立派なビー…」
「「姫っ!!」」


後ろにいた双子に背中から抱きすくめられる。
変な鳴き声を出して驚くに、マルフォイは眉をしかめた。
が、後から来たロンとハーマイオニーを見るとすぐそっちに行ってしまった。


「よく言ったっ」
「え?あ、だって、2人が強いのは本当だし、大体、箒勝負じゃなくてクィディッチの勝負しに来たんじゃないの?」
「そうだよなっマルフォイの奴、試合で箒から落としてやるっ」


マルフォイの方を向きなおすと、何やらハーマイオニーと口論している。


「この穢れた血めっ」


そのマルフォイの一言で、周りは一気に反論の声があがった。
け、穢れた血って?
ロンが杖でマルフォイに呪いをかけようと失敗し、バーンと響いた音で我に返った。
芝生の上にうずくまり、次々と巨大ナメクジを吐き出した。


「……っ!」


苦しそうなロンには申し訳ないが、ナメクジを長時間見る事なんて、恐ろしくて出来ない。
それでも、気持ち悪くても、何とかしなければと思い、
は慌ててロンの背中をさすった。

どっと笑うスリザリンチーム。
人が苦しんでる時に笑うなんて、どんな教育受けてきた。


「うるさいわよ!!道を開けなさい!!!」


普段怒鳴るという事を滅多にしないに驚いたのか、無言で通って行く。
ハーマイオニーとハリーに抱えられたロンが球戯場を出て行ったが、はついて行かなかった。

マルフォイに向き直って、問い詰めた。
いつになく、お怒りモードのに、マルフォイが少し引く。


「穢れた血って何?」
「純血魔法使いじゃない、マグル両親から出た魔法使いだ」


軽く嘲笑いながら、マルフォイが答えた。


「そんな血で優劣を判断するとは嘆かわしい!」
「スリザリンお特有の純血主義め」


周りがどんどん陰険ムードに突入していく。
は、冷静にマルフォイに向かって目を見た。


「もし、ドラ子が出血多量で死にかけたら私を呼んでね。
…マグルの血、入れてあげる。心配しなくていいよ、私O型だから。」


マルフォイの表情は見ずに、は踵を返してそのまま球戯場へ出た。
遠くで、まだ言い争いは続いている。
その声が小さくなっていくうちに、ようやく頭の中を整理し始めた。

寮争いの度が越えてて、今までおかしいと思っていた。
教育委員会はコレでええんか、と思った事もあったが、 おそらく魔法界自体に亀裂があるのかもしれない。

…ドラ子とも、仲良くなれると思ってたのにな。
私が純血じゃないと知って、もう今度から口聞いてくれなくなるかもね。

ふぅっとため息をついた時、ある事に気付いた。
さっき、グリフィンドールの誰かが言ってたセリフ。
……まさか。




「何をふてくされているのかね」
「ちょっと色々あっただけです」

ちょっと、という割にはこの研究室に来てからずっと、ソファに座ってふてくされている。

「先生はマグル嫌いですか」
「好かんな」

やっぱりなー…
スネイプと付き合って2ヶ月。
しかも、1ヶ月以上は合ってない。
まだお互いの事を知らない。

もしかしたら、先生も血の事を知ったら嫌うかもしれない。
…でも、確かめずにはいられなかった。


「さっき、悲しい事知りました」
「誰か死んだのか」
「そうじゃなくて…その、血の事」
「ああ、汚らわしいとでも言われたか」


軽く言い放つスネイプに、思わず顔が強張る。
やっぱり…この人もスリザリン、という事。


「私の母はマグルです」
「そうか」
「私、じゅ、純血じゃないんですよ…?」


恐る恐る聞いてみると、スネイプは持っていた羽ペンを置き、
羊皮紙を巻いた。

「スリザリンは純血主義が多いから、我輩もそうではないのかと?」
「…はい」
「スリザリンに入る者全てが純血ではないし、考えも違う者もいる。 我輩とて、血で判断したりしない」


その一言で、一気に脱力した。


「な、なーんだぁ。よかったぁ。こんなんでふられたらどうしようかと…」
「グリフィンドール生は嫌うがな」
「じゃ、何で…」
「別に。お前は我輩をスリザリン寮監と見ていないのと同じなだけだ」


今も椅子に座って作業う続けるその後ろ姿を。
はチラリと見た。
何とでもない、という風に話すスネイプだが、言ってる事は何よりも嬉しかった。
その背中と自分の背中を合わせて寄りかかってみる。
体温が広がる。


「スネイプ先生が、スネイプ先生でよかった」


夕日がわずかに差し込む部屋。
歌の歌詞とかで、世界に2人しかいなければよかったのに、なんて言葉があるけれど。
ここだけは2人の世界。
外から届くのは、あの窓の明かりと、わずかな風だけ。

- continue -

2002-××-××


2style.net