「直角二等辺三角形」
チェム
 私の家は貧乏だった。誕生日にケーキを焼いてもらったことなんてないし、ゲーム機なんて雲の上。そんな家で、母が唯一買い与えてくれたのが折り紙だった。
 他の兄弟が「やっこさん」や「騙し船」を作る中、未だ幼かった私は精々二つ折りにすることしかできず、半ば苦し紛れの状態で完成したのが「紙飛行機」だった。対角線上の両隅同士を折り合わせただけの、少し歪な直角二等辺三角形。生まれて初めてのフライトは当然大失敗に終わり、兄達から容赦無い罵声を浴びせられながら、二度と折り紙は作らないと心に決めたものだった。
 夜、部屋の片隅に投げ捨てられていたくしゃくしゃの紙片を手に取りながら、悔しさとは違う感情が心中を占めていくのを感じていた。今思えば、家事の手伝いすらロクにできず、常に役立たず扱いされてた当時の私は、飛べない飛行機に自分を重ね合わせていたのかもしれない。
「飛ばせたい」
 頬に流れる熱い雫を感じながら呟いたその一言が、それからの私の目標になった。

 最初の一年目。同じ作業、同じミスを只管トレースし続けた。調子が悪い。天気が悪い。或いは運が悪い。失敗しては、その都度何かの所為にして当り散らすだけの日々。
 次の一年。改善することを覚えた。折り方を変え、投げ方を変える。そんな事を繰り返す内に、徐々に飛距離は伸びていった。
 三年目。折り紙に満足できなくなり、模型飛行機にのめりこんでいた私は、同好の士と呼べる存在に出会った。暇さえあれば皆で飛行機を弄って過ごし、次の年には最初の電動式模型飛行機を完成させた。
 皆の歓声を浴び、空の彼方に飛び去ってゆく模型飛行機を見ながら、かつて感じた同類意識が改めて芽生えてくるのを実感していた。挫折も努力も、全てを載せて飛び去った飛行機。その行く先には何があるのか。自問自答した所で答えなど得られる筈もなく、ひたすら空を見つめ続けた。

「空に何か浮かんでましたか? 」
 当惑交じりの声により現実に引き戻され、視線を前に戻す。そこにはマイクを構えたインタビュアーの姿。
「ちょっと、子供の頃を思い出してね」
 一瞬彼の目が光った気がしたが、直ぐに本題を思い出したのか、慌ててメモを取り出す。
「数人で作った自作飛行機で世界一周。こんな途方もないことをしようと思ったきっかけを教えて下さい」
「判らないなら確かめればいい。そう思ったからさ」
 怪訝そうな顔をするインタビュアーを残し、チェックの為飛行機に向かう。途中何気なく指を入れた胸のポケットには、仲間の写真と、少し歪な二等辺三角形。
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□名無しさんからの批評 (2007/09/09 03:53) フォント
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どうも主人公が理解できない。それはリアルな人間の思考とづれているからだと思う。貧乏の中で育った人間が自身の成長を決意したとき、それははたして娯楽と思える飛行機作りへ心血を注ぐことに昇華されるのだろうか。またそれを許容している作品中の世界観にも違和感を感じる。
要するにつじつまが合っていないのだ。人の思考の流れや、それに対して環境はどう変わっていくのかということを掘り下げて考えてみるのはいかがだろうか。
□名無しさんからの批評 (2007/09/09 11:43) フォント
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話の流れはいいと思います。
改行のあとが個人的に不満。
ずっと同じミスを繰り返すのに1年は長すぎるかなぁ、と。
改善することを覚えたのが2年目ってのがちょっと頂けなかった。
あとかつて感じた同類意識ってのも???だった。
□名無しさんからの批評 (2007/09/09 13:18) フォント
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幼く貧しい少年が、努力の末夢を叶える。ありがちで、確立されたストーリー。その中でどれだけ個性を見せるかが重要になるが、この物語に真新しいものは見受けられなかった。
話の中に矛盾を感じる所や、違和感を覚えるところが多々あるので、細部まで練り込んで構成したほうが良いかと思います。
□名無しさんからの批評 (2007/09/12 21:01) フォント
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話の筋は面白いと思いました。
ただ、リアリティに欠ける。子供の感情は大人の思考回路で書いてもまったく意味ないので、もっと思いきりぶっとんじゃったほうが読者の目を引く。
ぶっとんだ思考から現在のインタビューにすとんと着地するなら、平凡な結末でも意外と予定調和感がなく、面白くなるんじゃないかと。
□名無しさんからの批評 (2007/09/14 06:47) フォント
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飛行機を飛ばしたいという出発点と、その実現に成功したという終着点はいい。ただその間に通る経路が矛盾点と疑問点だらけで、作品を不可解なものにしている。

例えば「精々二つ折りにすることしかでき」ないような年齢は2〜4歳程度では? その歳で「家事の手伝い」「役立たず扱い」云々というのはおかしいと思う。またそんな幼い頃の状況や心境を大人の自分が克明に思い出せるというのも疑問。大人の視点から回想する事に無理がある。

1年目〜4年目の設定もよく分からない。いつから数え始めての年月なのか。「飛ばせたい」と思った直後からなら精々小学生程度の筈で、「同好の士」や「同類意識の芽生え」が年齢設定と合わない。もう少し歳を取ってから「1年目」が始まったならそういう説明が必要。

実際に書き始める前に主人公の年齢設定や作品中での歳月の経過をきちっと自分の中で明確化してはどうでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2007/09/14 09:25) フォント
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共感するには客観性というか、書き手との距離が足らずはいりこめませんでした。
□名無しさんからの批評 (2007/09/19 23:35) フォント
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直角二等辺三角形を紙飛行機と呼ぶのは、いくら主人公が幼かったとしても苦しすぎるかと。
他にも矛盾を感じる部分が多々ありました。


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