「遅咲きくんの鬱屈」
ミリオン
 はっきり言って、圧倒的に不利だ。
 仕方ない、どうせいつものことだ――などと自分を諦めさせる呪文も今では単なる口癖と化し、もはや何の慰めにもならなかった。被害妄想以外の何物でもないが、道行くすべての人に『ダメな奴は何をやってもダメだ』と笑われている気がして、心の奥にある苦々しいものは決して消えることがない。
 大器晩成と言えば聞こえは良いが、自分はただ遅いだけで、皆より能力が優れているわけではない。逆にもし自分が、恵まれた奴らと同じことすらできないまったくの能なしだったなら、諦めもついただろうか。しかし幸か不幸か与えられた能力は、冷静に考えても皆と同程度のようである。
 能力が同程度ならば、できることも同程度。同じことをやって注目される奴もいるのに、自分は単なる二番煎じで、出遅れた分だけ間抜けだ。誰も注目なんかしない。
 そんなことを考えて泣き出したい気持ちになった瞬間、ほうっと光が脳天から降り注いできた。柔らかく暖かい光。
 こんな自分にも、たまには陽が射す瞬間があるのだ。まるでスポットライトのように、影と影の間を縫って光はやってくる。光はとても気持ちいい。
 できる奴とはできない奴は、スタートからして違うのだ。前者は素晴しい環境のもとに生まれ、何の障害もなくすくすくと育つ。誰にも邪魔などされない。初めからこの光を浴びているのだ。たったそれだけで、奴らは誰より早く才能を開花し、人々の注目を集め、賞賛される。なんて不公平なのだろう。
 この状態から抜け出したい。
 空を仰ぎながら、強く思った。
 間抜けな二番煎じのままで一生を終えるつもりなのか。死に物狂いで努力してみたら、逆転のチャンスがあるのではないか。
 幸い、光はまだここにある。この様子なら、近いうちに機が訪れそうだ。だとしたら、チャンスは今。
 恵まれた奴らより先に、もっと光を浴びて。
 つらい状況を、今こそ打破してやる!

「春らしい陽気となった昨日、不思議なことが起こりました。このS川に沿った桜並木で、少々奥まった日陰にある一本の桜が花を咲かせて――ご覧ください、既に満開です。温暖化の影響で早めの開花が予想される中、その予想より遙かに早く、周囲の桜たちを出し抜いたように咲く桜、見事ですね。散歩に訪れた地元のさんも、驚きながら、フライング気味の春を楽しんでいる様子です」
 興奮したように語るレポーター。賑わう見物客。
 木々の合間から注ぐ日光をスポットライトのように浴びた一本の桜は、頬を紅潮させたような花を咲かせて、人々を見下ろす。
 その姿はどこか誇らしげにも見えた。
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□名無しさんからの批評 (2007/03/09 15:14) フォント
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テーマが良くわかんなかったです。
表現で気になたのは「恵まれたやつらと同じことすら」という部分。おかしくはないんだけどちょっとひっかかる。「すら」ではなくて「が」でいいと思う。脳天からは脳天にかな?とか。
主人公が好きでないタイプでした。
□名無しさんからの批評 (2007/03/13 16:23) フォント
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文章上手だと思います。
最後まで読ませました。
特別なあらすじのない、思考的な文脈ですけれど、それでも
充分大丈夫な短編になってます。多角的で抽象的ですが、
どこか説得力がありました。
□名無しさんからの批評 (2007/03/13 17:35) フォント
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季節ものを良いタイミングで出せるというのはそれだけでちょっとした価値があると思うので、発想を花にしました。花見の季節も近いですね。
さて、この作品、二回読んだら上手いと思ったけど、一回目はいまいち分かりにくい気がしました。オチがあるのかわからない思考ばかりの文章を読むのは苦痛です、自分の場合。
構成を工夫することでうまく読者を掴めば解決できるのではないかと思います。がんばってください。
□名無しさんからの批評 (2007/03/13 21:21) フォント
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最後のオチが良いと思いました。
最初はてっきり人が主人公だとばかり思っていたので、正直意表を突かれました。
文章は上手だと思いましたが、上でも出ているように思考的な文章は読んでいて飽きてくる事が多いです。ネガティブな思考は特に。
思考的な文章でも読者が読み進められるような工夫が出来ればその点は大丈夫だと思います。
□名無しさんからの批評 (2007/03/15 21:06) フォント
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正直、つまらない男のぐちだなぁと、長々読んでしまった。桜ですか。いいですね。季節にもあって、良い発想だと思います。文章がわかりやすくて好感が持てる分、独白は長々読むと正直飽きてくる。
桜は早く咲くのは注目浴びますが、散るのも結局早いんですよね。長い分をもっと簡潔にして、三枚の中でそこもついてあればって、よくばりですかね。
□名無しさんからの批評 (2007/03/20 00:24) フォント
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遅咲きくんは人だと思ってたのに意外でした。
そして面白かった。
まさにこの枚数だから出来る小説ですね。
これが人だった場合、同程度の能力を持っている、遅い自分がいや、二番煎じはいやだという遅咲きくんにあまり共感できないなと思っていたのですが、桜だったとは!
□名無しさんからの批評 (2007/03/22 07:20) フォント
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前置きが長い。同じ表現で同じことを繰り返さないで、違う表現で同じことを繰り返して説明してほしかった。
正体あかしという掌編ではありふれた話の中では、うまくできているとは思えたが、桜で意表をつかれたかといわれると、そうでもなかった。
□名無しさんからの批評 (2007/03/25 11:43) フォント
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テーマは凄く好き。
ただ、前半の言い訳部分が長くて退屈だったかな。

しかし、その退屈な部分があってこそ桜のレポートの部分が生きるのか。
難しいところですが、なかなかよかった。
□名無しさんからの批評 (2007/03/29 22:36) フォント
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こういったものを書くにはセンスが必要であるだろうから、良いものを持っているのではないかと感じさせられた。
ただ、しっくりこないのはなぜだろう。論理展開に強引なところを感じてしまったように思う。
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