「一秒」
古森はな
 発車のベルが鳴る。奥寺は必死になって階段を駆け上がったが、一秒足らず。無常にも目の前でドアは閉まった。乗り過ごした奥寺は手にある指定券を見て、頭上の列車案内を見直す。やはり今出ていったのぞみの券だ。
 間髪空けずに次ののぞみがホームに滑り込んでくる。迷うことなく乗り込んで、自由席である先頭車両へと移動した。
「またやっちゃったんですか?」
 出張先の速水は、時間にルーズな奥寺を呆れる口調で出迎えた。指定券をあらかじめ渡したのは、そうでもしないともっと遅れて来ることはわかっている。約束の時刻は十一時。一時間遅れですんだ。
「いいじゃないか、ほら。まだ十一時台だ」
 速水の背にある壁の時計を指差した。確かに十一時台。十一時五十七分。
「奥寺さん」
 諦めがちに、吐く息と一緒に速水は奥寺の名前を呼んだ。だが、その後に言葉は紡げなかった。――こんな人がこの仕事をするかね。心では繋いだが、口には出せなかった。
 奥寺と速水は時計の研究をしている。時計といっても時刻を示すものではない。一秒を正確に刻む、ただそれだけの時計。セシウム原子時計だ。
 時刻には全く興味のない、むしろルーズすぎるほどルーズな奥寺だったが、一秒という一定間隔には魅せられている。ただ一定に一秒だけを示しつづけるセシウム原子時計。腕時計すらしない奥寺は、今ではもう古臭い、黒画面に緑で映し出されている一定間隔の波を愛しているのだ。
「それじゃ僕はお先に失礼します」
 速水は先に帰るらしい。ああ、と片言の返事をして、奥寺は仕事を続けている。それを見た速水は、チラッと自分の腕時計に目をやる。多分、二時間後くらいが終電だろう。今日の奥寺は日帰りだと聞いている。
「奥寺さん。七二〇〇カウントしたら、ここを出てくださいね」
 奥寺は横目で速水を見返し、わかったといわんばかりに手を振った。それから七〇〇〇カウントほどの頃合に奥寺は仕事を切り上げ、七一九九カウントでそこを後にした。
 帰りのためにあらかじめ渡されていた、今日で期限ののぞみ回数指定券を窓口に出し、終電一本前の列車で席を指定することが出来た。実はここに中途半端な時間が生じる。発車ギリギリの席指定は出来ないシステムになっている。そのことを奥寺は知っているが、今朝の反省を一度くらいは活かそうと、早めにホームへと上がる。
 すると奥寺の目に、ドアを開いて待っている車両が飛び込んできた。するり。今朝の反省を活かして滑り込むことに成功したのだが。
 乗って一秒、指定席を取った新幹線ではないことに気づいた。そのうえ、下車駅に停車しないことに、次の一秒、ホームの案内板で知ってしまった。
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□匿名者さんからの批評 (2006/04/16 01:27) フォント
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構成と表現を直せば良い作品に仕上がると思います。
場面転換や、誰の視点で誰が喋っているのかがまったくもって解りづらい。
むしろ、解らないと言っていい程。
そこさえ無ければ、発想はとても面白気なものだった。
□名無しさんからの批評 (2006/04/16 20:21) フォント
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どの辺が青なのだかわからない……

時間にルーズな男が時間に関する研究をしているという発想はとてもおもしろいが、その発想が生かせていないのが残念。

もう少しアイディアを練ったらもっとおもしろくなると思う。
□名無しさんからの批評 (2006/04/18 05:22) フォント
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長編を無理やり小さくしたような印象を受けました。逆に言えば長編にもなりうる可能性を感じたという事でもあるのですが。キャラの説明で終わったという感じで話が始まる前の段階かなあと。
それと「無常にも〜」は「無情にも〜」ですかね。ちょっと自信ないんですけども。
□名無しさんからの批評 (2006/04/18 21:30) フォント
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なかなかおもしろかったです。
ただ少しオチが弱いかなぁ。
あと青はどこに? 個人的な意見ですが作者さんが青と思っているものがあってそれを作品にしても最低限それを読者に青と思わせる必要はあるのではないでしょうか。
ちなみに自分はこの主人公が好きですね。魅力的です。またこの主人公の小説を読みたいくらい。
□名無しさんからの批評 (2006/04/20 21:16) フォント
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セシウム原子時計!!こういう単語に萌えるんですよ。偏執的な技術者魂、面白かったです。
オチはちょっと残念でした。せっかく一秒にこだわるなら、一秒的なオチがきてくれたら素敵でした。「扉を通過するのには一秒以上かかる=はさまってしまった」みたいな・・・新幹線で扉にはさまる、ってことはないか。「目に、〜〜飛び込んできた。」という一文がものすごく違和感がありました。一秒の余裕をもって行動している主人公の洞察表現にしては、いささか派手過ぎると思います。前後の淡々とした雰囲気のままであって良かったと思います。
□名無しさんからの批評 (2006/04/21 05:03) フォント
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人物の個性がよく出ているところは面白い。
最後の文章が詰め込みすぎなのか、ちょっと分かりづらいのが残念。
セシウムで青は微妙かと。
□名無しさんからの批評 (2006/04/22 13:00) フォント
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終段を『オチ』という風に考えずに、してもう一度、書かかれてみると面白いと思います。世界観、登場人物等の描写は分かりやすくすんなり読み出せたので、やはり気になるのはそこらへんです。おそらく最初のプロット立てはキチンと出来ていたと思われますが、作品には反映されていないような。もう一度推敲で別の作品に生まれ変わるってもんでしょうか?
  
あと「お題」とのつながりというのもありますが、私はあまりお題に縛られることはないかと。新幹線≒青なのかと?
□名無しさんからの批評 (2006/04/22 15:58) フォント
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リズムを大切にしましょう。同単語を二文続けて書いたりといった試行錯誤が見受けられますが、やるなら徹底的に、です。
一度声に出して作品を読んでみることをオススメします
□名無しさんからの批評 (2006/04/24 14:29) フォント
発想
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総合
とまらないのかよ!と思わず笑った二段落ちが好き。
なんとなく一歩足らないカンジ。面白くなりそうなんだけどという不満が残る。多少、言い回しに違和感を感じるトコロもあった。
□無名さんからの批評 (2006/04/29 19:08) フォント
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文章が全体に荒く、テンポが悪い。設定もよくわからない。原子時計の出張って何だ? しかも原子時計のあるところに出張って……。
ネタを活かしきれていない印象がある。加えて、もう少し推敲を。
□名無しさんからの批評 (2006/05/08 21:48) フォント
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面白い。素直にそう思いました。よくある仕様もないオチに笑わされ、いいなあこの話! と思ったところでどこら辺が青なのか全く不明なことに気づいたため、総合は葉にさせていただきました。
読みやすい文ですし、今月の作品の中では一番好きですね。
□匿名さんからの批評 (2006/05/14 14:04) フォント
発想
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 何処が青なんだろう? と安易な作品ではないなと思いました。他の方の批評でセシウム = 青というのを知り、なるほどと思いました。これからもその発想を大事にしてがんばってください。おもしろかったです。
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