「Watch me!」
一滴
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「腕時計、プレゼントしてやるよ」 片想いの彼にそんなことを言われて、舞い上がらない女の子がいるだろうか。たとえそれが、腕時計も携帯も持たないで時間にルーズなことを笑われた直後の話だとしても。 少なくとも私は、期待が風船みたいにぶわっと膨らんだ。片想いと言っても、サークルの後輩たちに「航太さんと付き合ってるんですか?」と聞かれるほど仲はいい。その航太がいつも身に着けられるものをくれるだなんて、これは決めの一手を仕掛けてられていると勘違いするのも、無理はないはずだ。 なのに航太は全く邪気のない顔で続けた。 「実は女モノの時計、ひとつ持て余してるんだよね。昔、彼女にあげようと思って買ったんだけど、渡す前に別れちゃってさ。手巻のアナログ時計だから、まだ動くと思うよ」 弾けて虚しく空に散った期待。返す言葉もないまま、結局今日の二限終了後に部室で受け取る約束までしてしまったけれど。 一晩悩んで、やっぱり貰えないと思った。 貰っておけば、お礼と言って逆に自分から決めの一手をしかけるという道もある。でも、貰っておいて身に着けないわけにもいかないし、私の腕に巻いたそれを見るたび航太が元カノのことを思い出すのはつらい。 でも、さりげなく断る言葉がない。 元カノに悪いと言えば、きっと「気にしない」とか「昔のことだ」と言われるし。いらないと突っぱねれば、二度とおまえにプレゼントなんかするものかと思われるかもしれないし。いっそはっきり、航太を好きだから受け取れないと言うべきか……って、そんな告白をする勇気があるなら、とっくにカップルになってる――と、堂々巡りで答えが出ないまま、待ち合わせの時間が来てしまった。 いつもよりやけに重厚に見えるドアをやっとの思いで押すと、幸か不幸か部室には航太しかいなかった。なんとなく気軽な挨拶ができず、会釈。向かい合うと、空気は重い。 やがて、妙にバツの悪そうな表情の航太が、その沈黙を破った。 「悪い。時計なんだけど、昨日開けたら動いてなくてさ。たぶん使えないから、捨てた」 私は気の重さも忘れ、思わず首を傾げた。 「え? だって……」 手巻時計でしょ。ネジ巻かなきゃ動くわけ──言いかけてやめる。まさか私が航太の言葉をそこまで事細かに覚えているとは思っていないのだろうし、優しさか天然かは別にしても、渡さないと決めたのは航太だ。 「代わりに、今度バイト代が入ったら買ってやるよ。オモチャみたいなやっすい時計な」 「ちょっ……なにそれ、ひどい扱い!」 急に気が大きくなった私は、いつも通りの悪態をついて、笑う。笑いながら、航太がもし本当に新品を買ってくれたら、そのときは絶対に私から告白しようと決めた。 私たちの時間は、古い時計のネジを巻いても動かない。新しい時計とともに始まるのだ。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/16 22:01) |
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一応起承転結の体裁を整えていて、オチもきいてるんだけれど、文章力が足りませんね。 もっと先人の作品に学んでください。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/17 09:40) |
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ううん、コメントしづらいです。とりわけ奇抜な発想が見られるというわけでもなく、文章が飛びぬけて上手いというわけでもなく……。 良く言えば無難、悪く言えば特徴がないです。何かひとつ、光るモノが必要かと思います。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/18 05:37) |
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「私」が、恋愛に翻弄されるように、文章も翻弄されちゃってるような感じがして、世界観が幼い印象を受けました。幼いのは悪いとは思わないけど、同じ事を何度も繰り返して言ってる感じがした。 タイトルはちょっと洒落になってて面白いですよね。 はっきり言って、もっと練った言葉が読みたいっていうのが全体を通しての感想です。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/19 18:09) |
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前の方と同様です。 構成はきっちりされているようですが、文章に幼さが表れていて、マンガを連想させます。 できれば、小説とういうことを念頭に置いて書かれるといいと思います。
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□名無しさんからの批評 (2005/12/20 19:59) |
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読みやすいですね。読者のことを考えて書いてるなあと、好感が持てます。 そつのない作品です。次回作は発想にもう少し力を入れてみては? この筆力なら期待できます。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/21 12:33) |
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まず全くの個人的主観(偏見)を言わせてもらいますと、 恋愛モノは主人公に感情移入できるか、応援できるか、が「カギ」だと思ってます。 そういう意味で主人公を魅力的に、等身大に描けたかは疑問です。 自分の感情や好きでたまらないことに酔ってるようで人物像まで至らない。
でも、こういう手法でも世の中には受け入れられるはずです。恋愛の「恋愛的なストーリー」を描くだけでいくつもの作品が売れ、ドラマが半年も流されるのですから。 ただ、これまた個人的偏見(主観)ですが、そういう所謂短絡的な恋愛ものって「あぁ、自分もこんな素敵な恋愛がしたい!」って思うのが好きな人のみ対象なんじゃないかな。私は「こんな素敵な恋愛エピソード」ではなく、物語、あるいは人物を読みたい派なので、こんな批評をかかせてもらいました。私がターゲットから外れてるだけなので、あまり気にしなくてもいいと思います。 |
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□匿名者さんからの批評 (2005/12/22 23:18) |
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惜しいですね。 航太クンの葛藤や、どう思って時計をあげまいと思ったのかが書けていればもっと良い作品になったと思います。 特に、この文では航太クンが何故時計を捨てたと言ったのかがまったく解らぬ状態で終ってるので疑問が残る。 これが読者としては違和感として残るので伏線はきちんと消化する事を望みます。 |
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□名無しさんからの批評 (2005/12/25 20:00) |
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巧みな文章表現ですね。最後の2行がかっこいい。たあいもないやりとりで、かけひきの微妙な感情を上手に現していると思います。今ひとつ個性とか毒気がなくて面白みがないのが残念ですが、それは好みの問題です。
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□名無しさんからの批評 (2005/12/28 03:58) |
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なんか、陳腐な話ですね。 小学生向けの少女マンガ見てるような気分でした。 watch=腕時計というイメージなので、タイトルから「腕時計の話じゃないだろうな」と思ったら腕時計の話でげんなりしてしまいました。 ---「腕時計、プレゼントしてやるよ」 片想いの彼にそんなことを言われて、舞い上がらない女の子がいるだろうか。 私は舞い上がりません。女の子ですが。 ---手巻のアナログ時計だから、まだ動くと思うよ 手巻きのデジタルなんてあるんでしょうか。それとも手巻きのクオーツ?電池式でも電池を替えれば動きますし、手巻きはまだ動く理由にはならないと思います。 |
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□名無しさんからの批評 (2006/01/01 22:52) |
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えらく薄っぺらい。一文一文は変なところもないし、問題はないのだが、話はない。というか、薄い。ついでに古臭い。 |
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□名無しさんからの批評 (2006/01/11 23:20) |
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文章の破綻もなく筆力があると感じました。言葉の選び方に幼さは感じるものの、文として破綻がないからそれも計算しつくされているように読めてしまう。バランスが取れているということでしょうか。天然だったらそれも逆にすごいですが。 個人的には、もう一歩物足りなさを感じます。読者をはっと驚かせる一文がひとつでもあれば、インパクトが大きく違うのでは? |
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□名無しさんからの批評 (2006/01/12 14:02) |
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ふたりの淡い恋愛感情とファジィな関係が、時計とからめてうまくテーマが伝わってきます。逆に技術的に書きすぎて、小説本来の味が無いというあたりが寂しい気もします。構成や表現、計算されつくした感じが、もう一歩を逸しない苦しさを感じさせます。 |
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