「Jumpin' Jack Flash」
高山
「おーい、入るぞ」
 ドアの向こうから親父の声。さっき母親にも、「いつまでジャカジャカやってるの」と注意されたばかりだ。アンプも通さないエレキギターの音なんて大したことないだろうに。
 返事もせずに練習を続けてたら、親父は勝手にドアを開けた。小言を言われるかと内心身構えてみたものの、親父はニヤニヤして俺を見てるだけだ。逆にキモチワリイ。
「なんか用かよ?」
「ストーンズか。懐かしいな」
 不意をつかれて手を止めると、それを合図に親父は部屋に入ってきて、座り込んだ。
「今の高校生でも、こんなの聴くんだな。父さんも昔、好きだったよ」
 親父の長い昔話が始まった。ストーンズの登場に衝撃を受けたこと、七十三年の来日公演が中止になった時のこと、親父自身もギターを弾いてたこと……。俺はテキトーに聞き流す。中年の話って、長すぎてウザい。
 それに、親父がギターをやってたことやストーンズを聴いてたことは、なんとなく知ってた。なにしろ俺が聴いてるストーンズの音源は、家の納戸で眠ってたレコードだ。母親はロックに興味ないから、親父のものだろう。
「これでも、本気でプロのミュージシャンを目指したりもしたんだよ。一時期は『K高のキース・リチャーズ』なんて呼ばれてな」
「げ、それはありえねー」
 納戸のレコードには埃が積もり、古いギターは黴だらけで、本気でプロ目指した奴の持ち物にはとても見えなかった。脚色だらけの昔話を聞くほど、俺だって暇じゃないんだ。
「もういいよ。所詮、プロになるなんて、簡単に諦める程度の夢だったんだろ」
 意地悪い気持ちで俺が言うと、親父はますます懐かしそうに笑って、言った。
「就職した後も結婚した後も、バンドは続けてたよ。九〇年にストーンズが悲願の初来日を果たしたときも、もちろん行く予定だった。でもその当日、まだ二歳だったお前が、ひどい熱を出してな。父さんは心配で、結局コンサートには行けなかった」
「は? だからなんだってんだよ」
 人のせいにすんなって。俺マジギレ寸前。
「でもな、思ったほど悔しくなかったよ。知らないうちに音楽より大切なものができたんだな。それが解ったから、ギターをやめた」
 照れ笑いしながら言う親父は、キースより十歳以上若いけど、冴えないオッサン。キースは今やジイサンなのに、今でも輝き続けるロックスター。その名の通り、転がり続ける石だ。だからカッコイイ。でも、もし親父が夢を追いかけて変な坂道を転がり続けてたら、俺は今頃ギター弾いてる余裕なんかなかったかもしれない。現実は、そういうもんだ。
 イッツオーラーイ。なんとなく口ずさんでみたら、親父のヤツ、ハモってきやがった。意外と伸びる良い声だった。
 だからどうってことでも、ないけどさ。
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□名無しさんからの批評 (2005/08/15 01:57) フォント
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批評が難しい感じがしました。爽やかですごい良い話で文の流れも問題ないと思ったんだけど、サラッと流れたって感じで。うーん。
□名無しさんからの批評 (2005/08/15 14:21) フォント
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臨場感とか現実味という意味では、このような一人称が当然なんでしょうけれども、小説として読むにはこのような一人称は荒すぎる気がします。乱暴な言葉遣いとか、ぶっきらぼうな言い回しとかでは気を使っているんでしょうけれども、いかんせん、それでも「小説」といおうか「文章」として読むと、気持ち悪いです。
文章に統一感があって破綻していなかったから、それはよかったんですけれども、やはり「文章」としては乱暴です。
□名無しさんからの批評 (2005/08/16 12:08) フォント
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ストーンズでこういうネタはよくみかけます。もう少し捻りが欲しかった。ストーンズの表面的な部分をかりて物語にしてしまったのでは、それこそストーンズ好きだった親父の存在意義が疑われます。
あと気になったのは、親父と主人公の年齢かな。30半ばで生まれた息子との会話、というにはちょっとリアリティーを欠いたように思える。年市の離れた兄貴を出したり、息子の年齢を上げるか、親父の年齢を下げて欲しかった。でもこれは個人的な違和感。
□匿名者さんからの批評 (2005/08/16 22:24) フォント
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ん〜どうなんでしょう。
私には批評が難しい作品ですね。何せ音楽にはあまり詳しくないので。
何を言いたいのか、さっぱり解らない。それが印象です。
話の流れとしては良くもなく、悪くもなく、と言った感じ。発展途上何でしょうね。
もっと表現に気を遣ってこう書いたら読者がどんな反応をするかっていうのを考えたら良いかも知れません。
オチの一言は今一つ。
その言葉ですべてを終らせるには軽すぎて話全体をつまらなくさせてしまってますよ?
もうちょっと考えて違う言葉で締めた方が良かったと思いますね。
□名無しさんからの批評 (2005/08/21 21:45) フォント
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背伸びしないで書いている分、無難さを感じますが、書き手としての上達は望めないような感じがしました。
□名無しさんからの批評 (2005/08/22 22:07) フォント
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『ローリング・ストーンズ』という名前は辛うじて知っているものの、その程度の知識なので微妙に共感できなかったのだが、現代の親子の乾き具合は分かりやすかった。もう少し息子の心境に変化があると救いが見えそうな気はするけど。

父さん頑張れ、とつい応援したくなる。
□名無しさんからの批評 (2005/08/24 01:04) フォント
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スラスラと読めた。且つおもしろかった。
しかし、主人公がやけに父親の話にイラつきすぎではないかと思った。もう少し丁寧に書いてもいいのでは?
□名無しさんからの批評 (2005/08/27 13:08) フォント
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微笑ましい。テーマが浅い気もするけど、飾り気のない味わい深さがあった。
□名無しさんからの批評 (2005/08/28 22:30) フォント
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父親がすごいようなすごくないような、主人公がそれを認めたいような認めたくないような、そんな微妙な感じがよく出ていると思います。小説で取り扱うべきはこうした微妙さや機敏だと、個人的には思います。

主人公がひねくれているなぁと思いますが、こういう話は嫌いじゃないです。
□名無しさんからの批評 (2005/08/31 12:21) フォント
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『だからどうってことでも、ないけどさ』という事に集約されてしまうのかも知れませんが、好感触で読ませていただきました。
「ストーンズ」も良かったし、「ギターよりも大切なものができた」とスラリと言わせるまでの伏線も違和感なく受け入れられました。
□名は無いさんからの批評 (2005/09/04 02:04) フォント
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 全く個人的な表現で申し訳ないのですけれど、最後の一文。
「だからどうってことでも、ないけどさ」を……
「だからどうってことでも、ないんだけどさ」
 って、してぇなあって、思った。うん、書き並べてみると私の思いつきはダメだな。
 閑話休題。作者さん、本当に申し訳ない。私、親子の確執とそれが解消していく情景に弱いんですよ。だからつい書いてしまったのです。

 それはさて置き!!

 上から読んできて、一番まとまってて、読み終わって好評価な作品でした。なんか、現実感があって安心しますね。
 青春の心情を表すのは難しいですけれど、親子の関係を結構表せているんじゃないかなと思った次第です。
□名無しさんからの批評 (2005/09/09 16:52) フォント
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よみやすかったです。私はあまり音楽とかに疎いものでツッコンだ話だとよく分からないんですけど、これは一応に知識のない人間にも読めるんで、とても読みやすかったです。
それにストーンズだけで終わらせず、父親の昔話に絡ませるるのも悪くないです。発想は多少ありきたりかなぁ。と思いましたけど、終盤の息子との触れ合いもなかなか素敵。下手にひねりすぎてない分読みやすかったんだと思います。
思春期の息子と父親との関係がよくかけていると思います。これぐらいの年頃だと意味もなく父親が疎ましいものですもんね。制限内でこれだけ書けていれば十分だと思います。
□名無しさんからの批評 (2005/09/11 18:36) フォント
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 良いものですね、こういうものも。
 題材である石が上手く使われています。実際に石が登場するのではなくても、こんな風にお話に組み込めるんですね。
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