「涙の味のモト」
ゆう。
 じいちゃんが死んだのは、爽やかな秋晴れの日のことだった。あんまり気持ちいい日だったから、昼寝のついでにうっかり行ってしまったようです、と父さんが笑って知らないおじさんに言ってたのを聞いた。僕は、人が死ぬってことの意味を解らないほど子供じゃない。じいちゃんは無口な人で、何を考えてるのかわからないこともたくさんあったけど、僕はじいちゃんが好きだったから悲しい。
 記憶にないくらい小さいときにおばあちゃんが死んで以来、身近な人が死んだのなんて初めてだったからか、予想外のことがあった。葬式ってのはすごく暗い行事だろうと思ってのに、実際はそうじゃなかったのだ。
 葬式はすごく退屈で、母さんはドタバタと忙しそうで、親戚のおじさんとかおばさんとかが僕の近くにやってきては、中学生になったら勉強が大変だぞとか言うし、一年生と三年生になったイトコの子守りを押しつけられるし、お寺とか火葬場とかいろんなところでジュースをむりやり飲まされるような変な行事だったのだ。
 そして、なぜかみんな笑ってた。

 忌引が終わって、久しぶりに学校に行く日が来た。いつもと同じような朝なのに、じいちゃんだけがいないのは変な感じだ。
 ご飯を食べていて、僕はふと気づいた。
「うわ、納豆が糸をひいてる」
「納豆は、そういうものなのよ」
 母さんが、当たり前のように言った。僕だって、納豆は糸を引くものだってのは知っている。けれど、うちの納豆はもっと醤油がひたひたで、ネバネバじゃなくて、トロトロしていたはずだ。死んだ日の朝まで、じいちゃんが醤油をたらしてかき混ぜてた納豆は。
「じいちゃんの納豆が食いたいなぁ……」
 思わずつぶやいた僕に、父さんが言う。
「あんなにしょっぱいものを毎日食べてると、病気になっちゃうんだよ」
 それを聞いて、母さんが肩を落とした。
「私がもっと注意していれば……」
「いいんだよ、不味いもの食ってまで長生きしたくないってのが親父の口癖だったんだ」
 父さんは、力強く母さんを励ました。でも、顔はすごく悲しそうだった。それで、僕は気が付いた。父さんも母さんも笑いたくて笑ってたんじゃない。大人は泣いちゃいけないから、我慢してただけなんだってことに。
 僕はギリギリ小学生だから泣いてもいいのかなあ、と考えた。でも、男だからやっぱり我慢して、そのかわり納豆に醤油をたっぷりかけて、トロトロにしてからご飯にかける。
 しょっぱくて糸をひいてないのは同じなのに、なぜか僕が作った納豆は、じいちゃんのと味が違った。それはもしかしたら、僕が泣きそうだからかもしれない。
 だけど、泣いちゃいけないから、僕はしょっぱい納豆ご飯を思いきり頬張った。
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□名無しさんからの批評 (2004/10/15 20:27) フォント
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大切な人が亡くなっても淡々とすぎていく日常が描かれていると思いました。いつもの日常なんだけどなんか違う、欠落感をうまく表現しているなと思いました。
□名無しさんからの批評 (2004/10/16 14:24) フォント
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小学六年生男子って、もうちょっとオトナなのでは?? と思ったり。
それ以外は悪くなく掌編の中で話がすっきりまとまっているかと思いました。
それにしても、子供の一人称って読みにくいものですね……。
前半の描写の割に、後半が薄いかな? 物語の配分に注意してみてください。
□名無しさんからの批評 (2004/10/16 21:39) フォント
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 例え大人だろうと、お葬式、しかも自分の父親のお葬式ならば泣くような気がするんですが……このお父さん、優しそうですし……。わたしはちょっと納得できませんでした。
 大人と子供を対比させたかったのはわかりますが、ちょっと強引かなと思います。
 最後の納豆の話は良かったです。
□名無しさんからの批評 (2004/10/17 16:12) フォント
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私も最近祖父の葬式を体験したので、情景がよくわかりました。
ああ、そうだよなあ、と。しみじみおもいました。

この話好きです。
□匿名者さんからの批評 (2004/10/17 18:31) フォント
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巧く纏まってますね。
伏線もちゃんと消化してるし、オチも少し弱いかな? とは思いましたけど良い感じだし。
でも、全体的にインパクトが薄いのが難点かと。
巧く書けてるなぁとは思えても面白いとは思えない作品でした。
小学生の主人公の感情がもっと描かれてたら面白かったかも。
□名無しさんからの批評 (2004/10/20 02:16) フォント
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いつも一緒に暮らしていた家族がいなくなる、という瞬間を、暗すぎずにうまく捉えていると思います。文章も、ばらつきがなくて、ちゃんと主人公らしさが最後まで続いていたので、これはこれでアリかなと思います。あと糸が納豆の糸というのも、なんだかかわいらしい気がして気に入りました。
□名無しさんからの批評 (2004/10/20 18:36) フォント
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おじいちゃんが死んで葬式をする前に父親が笑って言っているのはなんだか変な感じがしました。とても明るく笑いながら話しているところが浮かんだので。
お葬式の情景はとても好きです。ああ確かにこんなんだな、って思います。懐かしいです。
“そして、なぜかみんな...”ここが一番好きです。
□名無しさんからの批評 (2004/10/21 14:23) フォント
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兎に角表現が気に入らない。
いかにも「大人が小学生の気持ちになって考えましたー」といった文章。少年が考えていることも、いかにも「子供が考えそうだと大人がおもうこと」で面白みにかけていました。
□名無しさんからの批評 (2004/10/22 03:37) フォント
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 悪くないと思います。テーマも好ましい。
 ただいっそ主人公の精神年齢をもっと上げてしまったほうが受け入れやすいかな。
□辛口侍。さんからの批評 (2004/10/24 11:35) フォント
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逝く? 子供だから「行く」でもよしとしているのかな。となると、「忌引」、小六で使うかな。

ん〜、子供の一人称は、正直批評しにくい。例えば、大人になると悲しみ方は人それぞれで、別に泣くのを“我慢”しているわけでもないのだから、「大人は泣くのを我慢してただけ」とするのはおかしい、と指摘しても、子供だからそう感じてもいいのか、となる。……作品とは関係ない余談ですが、泣かないと悲しんではいないとする世間一般の先入観はつらいです。

あと、やっぱり大人としては感情移入はできない。逆に書き手の作意の方が嫌味に感じられてしまう。ま、でも子供が読んだらまた別の感想がつくかも。個人的にはその反応が知りたいと思った。
□名無しさんからの批評 (2004/10/25 13:41) フォント
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まず、納豆の糸という発想、地味ながら良いところに目をつけましたねって感じ。それとタイトル、涙がしょっぱいことと、おじいさんの死因をかけてるのだとすれば、かなりセンスを感じます。
主人公の年齢が、微妙なのが残念。印象としては、自分としてはいっぱしの大人程度に考える力のあるつもりになってるけど、実際はまだ世の中をよく分かっていない子供という時期の主人公ではないかと思うんですが、この枚数で上手く書くには難しいんじゃないかな、と。いっそもう少し幼くしてしまっても問題ない気がします。惜しい。
□名無しさんからの批評 (2004/11/02 12:07) フォント
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年齢設定に違和感がありました。小学6年生って特に難しいと思います。子供っぽすぎなく、大人でない。
それ以外は、テーマも無理なくこなしていると思います。
□鰻さんからの批評 (2004/11/05 19:37) フォント
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少し台詞がぎこちない。地の文も無理に小学生の視点にしているのか、たどたどしい。テーマをクリアしようと無理した跡も出てしまっている。
□名無しさんからの批評 (2004/11/08 11:40) フォント
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身近だった人が亡くなったときの情景がよく書き込まれていて、自分の思い出と重ね合わせることができました。子供の気持ちになって書けていると思います。親戚の年上の子供たちが何やかやいうところや、大人たちがみんな笑っているところなど。切ない気持ちが伝わってきます。

ただ、ところどころ説明的な文章があるので、そこのところが文章に浸りきれない原因かもしれません。例えば、

「僕は小学生だから泣いてもいいのかなあ」

と言う文章で、せっかくの物語りの世界から引き戻されたような気がしました。

説明なしの淡々とした文章だけの方がよかったんじゃなかと思いました。
□名無しさんからの批評 (2004/11/14 19:49) フォント
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葬式の情景がとてもよかったです。しみじみ。

「私がもっと注意していれば……」っていうのが作り物の台本みたいですが。納豆のエピソードは全体的に、いかにも作り物って気がしました。野暮ったい。
アイデアは、ボクの心をとらえたので、納豆に変わるもっとうまい演出に期待。
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