「静かな世界のマイグラトーリィ」
郵一郎
空一面を侵食し尽くしている鈍色の雲から降る雪は、滂沱と流れる涙のようであった。涙は大地を、木々を、そして僕とかつて彼女であったモノを、等しく銀に染め上げる。些細な音など雪が簡単に喰い尽くしてしまう。もとから音というものなど存在しないかのような、静寂。
 僕は仰臥して世界に埋もれていた上体をゆっくりと、両手で支えるように持ち上げた。僕の視界は昏い雲空から、銀色の涙に侵されている地上に移る。衣を着た山脈。笠をかぶった大木。旅人の僕。かすかに残る焚き火の跡。そして、今はもう着る者のない赤い防寒具。彼女さりし後の、彼女の跡。
 僕は旅人だ。それ以外の何者でもない。そして目的もない。もしかしたら目的が目的だといえるかもしれない。どちらにしろ、それは些事である。そんな僕だから、そういう僕だから、旅は始まりから今日までずっと独りだ。彼女とはここで出会い、ここで別れた。それは星の数ほど体験してきた一時的な接触。交互にやりとりした、数えるほどの言葉の交流。そこから垣間見た彼女の一面。人見知りしない笑顔。小鳥の囀りのような美しい声。心を掴む純粋な瞳。もちろんそれらなど、彼女の本質の断片をさらに細かく砕いた破片、その一粒にも満たないだろう。それでも彼女の言葉は、この極寒の地を溶かす暖かな暖炉で、彼女の笑顔は、暗闇に射した一筋の陽光だった。
 今はもういない。
 僕はふたたび独りだ。幾度となく体験した、双六で振り出しに戻されたような感覚。そして湧き上がる寂寥感。
「ここには僕しかいない」
 だから声に出してみた。孤独に耐えられない時、声はでる。だけど声は孤独であればあるほど、遠い彼方の存在になってしまう。そういう彼方のものに、超越した何かに、憧れたこともあった。動機は思い出せない。思い出せるのは、常にそういうことが「あった」という事実だけ。そんなことも、そのうち疑問も抱かなくなる。
「虚しい」
 また声を出してみた。僕の声はか細くて不明瞭だ。そしてそれはすぐに静寂な銀世界に吸収された。弱いものは奪われる側であるのが必然。
 だから彼女はもういない。
 僕は、彼女に最後の言葉を送る。

「ごちそうさま」
著作権について
 
 
□銀色さんからの批評 (2004/01/10 13:09) フォント
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はじめまして銀色といいます。
最初っから酷評と思いますが、
飾り言葉が多くて、文章に入りずらいと思いました。
私も人のこと言えたものではないのですが。
とはいえ、こういった独特の雰囲気を大切にしつつ、今度は入り込みやすいよう気をつけて書くと、もっといいものが出来ると思いますよ。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 18:42) フォント
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どうもこんばんわ。お手柔らかにお願いします。

投稿サイト等に多く見られる小説よりレベルが高い作品なんです。以後も書き続けてぐんぐん力を伸ばして下さい。
しかしストーリー性が欠け、かつ自慰的内容になっている所が主な減点要因になりました。ストーリ性があって自慰的、またはその逆だったらもっと楽しめると思います。

内容について。
彼女と別れて寂しい空しい、という事を文章全体で表現していらっしゃいますね。そしてテーマ「雪」を通して僕の複雑な心の内をたんたんと描写されるテクニックは成程と思う節があります。ちょっとクドイですけど。

問題は最後の一言です。へっ?となってしまいました・・・わからなかった。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 18:47) フォント
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×ストーリ性→○ストーリー性
訂正邪魔でしたら削除を・・・お手数します。ごめんなさい。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 21:27) フォント
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表現
総合
個人的には、すごく気に入った作品です。
最後の言葉ですが、作品のオチというか、主人公のした事を比喩的に表しているのはいいと思うんです。ただ、それによって「孤独さ」とか「切なさ」がなんだか軽くなっていると思うんですね。「ごちそうさま」っていう言葉のイメージだと思うんですが。
あと、この行動に至った理由というのもよくわからないんです。「彼女」に多少の好意を感じていながら、なぜ彼女を犠牲にしてしまったんろう。そうまでして生に執着する理由はなんなのだろう、と。
長くなってすみませんでした。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 22:27) フォント
発想
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表現
総合
まず、気になった点。
『幾度となく体験した、双六で振り出しに戻されたような感覚。』という表現がありますが、全体的に重厚な表現のなかでこの比喩が一つだけ浮いている印象を受けます。祝詞を聞いているときに突然英語が出てきたような、そんな妙な印象を受けました。同様に最後の「ごちそうさま」も浮いています。しかも真意を測りかねる。何を意図してそのような言葉を選んだのかがまったくわかりませんでした。

表現については上記の2点を除いては素晴らしいと思います。エンターテイメント的な性格をもった文章がやたらと多い中で、純文学的な重みを感じました。
しかし、純文学というには内容が薄く、訴えてくるものがまったくない。この文章を通して筆者は何を言わんとしているのか、筆者の主張するものは何か?という点で大きな欠落があるように思われました。

語彙が多いことはわかりました。
次は何を主張したいのかを明確にしてください。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 22:31) フォント
発想
構成
表現
総合
何度読んでも、入っていけなかった。その理由を考えてみると、イメージなのか、風景込みの具体的な表現なのか伝わってこない。語彙力の無い私のせいかもしれませんが。最後の「ごちそうさま」は、なんのため???後半何かが伝わってきたら良かったのに、残念だなという感じ。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 00:19) フォント
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総合
 言葉を飾りすぎてで落ちがわかりにくくなってますね。もっと素直に伝えてはどうでしょう?
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 01:06) フォント
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表現
総合
なかなか面白い発想だと思いました。構成もそこそこしっかりしていると思います。
表現に関しては過ぎたるは及ばざるがごとし、と感じました。
□ななしーずさんからの批評 (2004/01/11 03:31) フォント
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構成
表現
総合
最後「ごちそうさま」の意図が読み取れません。
修飾する言葉の語彙が豊富なのは、良いと思います。が、情景がうまく浮かんでこない部分も多く作品にスムーズに入り込んでいけません。
全体的によく解らないという印象です。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 15:27) フォント
発想
構成
表現
総合
一行目に字下げの無いのは、何かの意図があるのでしょうか?

個人的には、ナイスなオチって気がします。わかりやすいオチがあるので、全体が締まって見えました。ただ、その割には話し自体に入りにくい、という印象があります。このオチのために話を作るのなら、、もう一歩構成を練ってほしいところです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 21:22) フォント
発想
構成
表現
総合
最初から最後まで理解できませんでした。それはキット私の知能のなさによるものと思われます。
「ごちそうさま」がオチなのですね。ううむ。やぱ、理解していないんで的はずれなら恐縮なんですが、誰がどのご馳走を頂いた(どんな?か)のかも解りません。きっとそれは私の愚かさが起因しているのかと。
 そもそも状況が解らないんです…… 何がどうなって、どういうオチなのか? ううむ。ごめんなさい
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 01:53) フォント
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表現
総合
純文っぽいですね。私は小説にエンターテイメントを求めがちなので
辛くてごめんなさい。
このオチがあるなら、エンターテイメントに徹して欲しかった。

表現については賛否両論あるようですが、どちらかというと私は否寄りです。
語彙が豊かなことに作者が自己満足しているように思ってしまった。修飾されすぎてお腹一杯という感じです。

『だから』『だけど』といった表現が他の部分と合っていない気がして
そこも引っ掛かりどころでした。あと指示語が多すぎる気がする。



□名無しさんからの批評 (2004/01/12 02:14) フォント
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構成
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総合
漢字と修飾語が多い文が純分ぽくてカッコイイという認識には辟易します。(作者へも、評者へも)

かっこいい文を目指す前に、伝えるべき情景をもっと正確にイメージしていただきたいです。
また、オチに軽い言葉をもってくるなら、全体のトーンも一致させて欲しいです。
辛口申し訳ない。
□セツナビトさんからの批評 (2004/01/12 13:19) フォント
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総合
作品として意図的にそうされているのか、もともと著者の方がこういう文を書かれる方なのか分かりませんが、やはり修飾が多すぎます。読んでいて辟易するくらい。どちらかというと詩のような感覚を覚えました。最近はちゃんとした雑誌でも物語性、というより読者に物語を伝えようとすることよりも言葉運びの面白さを優先したような小説を見かけます。しかし私は読者の方が物語に入り込めてこそ小説だと思うので、はっきり言って物語をいかに伝えるかよりも言葉の美しさを優先したような作品は好きではありません。他の方も言われていますが、そういった作品はどうしても読者不在な自己満足の域を出ないと思うので。詩とか、別ジャンルだと話は別ですが。

さて物語ですが。表現にだいぶ圧迫されていて平坦なまま終わるのかな、と思ったら最後に落とされました。なるほど。しかしちょっと分かりづらいですね。どうせならもうちょっと主人公の黒いところを見せて欲しかった。何かしら彼女から奪ったものなどを身に付けていたり、「なーんてね」な感じで暗い思考を一蹴してみたり。そうしたら話の雰囲気が変わってしまいますが。そんな感じで、もう少しオチの印象を強くした方が、分かりやすいような気がしました。

基本的な力はある方だと思います。もしかしたらこういう書き方はこの作品だけなのかなあ、とも思います。次回に期待!
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 22:11) フォント
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総合
くどい。
くどいわりには、静寂さも伝わらない。
「僕は旅人だ」以下の「目的が目的だといえるかもしれない」も印象付けに失敗している感あり。
□名無しさんからの批評 (2004/01/13 16:23) フォント
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総合
雰囲気を出そうとしているのはわかるのですが、文章になかなか入り込むことができませんでした。
だけどものすごく綺麗な表現だな、とは思いました。
語彙も豊富ですよね。

ただどうしても最後の言葉の意味を理解することができませんでした。
これは読解力のなさにも問題はあるのですが……。すみません。
□名無しさんからの批評 (2004/01/13 20:06) フォント
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総合
物語自体はどこかで読んだことがあるような感じでした。
とても流暢できれいな日本語を操る方だなあと思いました。でも、言葉のほうが内容を喰っちゃってる感じがします。
純文的と書かれている方もいらっしゃいますが、内容はエンターテインメント寄りですよね。読者にきちんと内容を伝えようとする姿勢より、ご自身の表現に酔いしれているようなオナニー的な印象が最後に残ってしまいました。
文体か内容かどちらかを改善して(できれば内容のほうですかね)バランスを取ると、著者ならではの味が出てくることと思います。次回に期待。
□名無しさんからの批評 (2004/01/15 15:52) フォント
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総合
初めの表現が、疲れてしまいます。いきなり一息に静寂の説明をされて、私は一段落目を読み終わってコーヒーを飲みたくなってしましました。
私の集中力が足りないんでしょうか。(それも十分ありえるんですが)
最期の一言で結構台無しになった気がしました。
いや、落ちとしては面白いと思うんですけど、じゃあ、「彼女」の言葉やら声やら笑顔やらをこんなに「暖かいもの」として捉えることはないんじゃないかと思います。
後悔している感も受けないし、「えーなんなのー?」と思ってしまいました。

雰囲気はすごくいいと思います。
「ごちそうさま」を読んだときにゾクッとしましたしね。

お疲れ様でした。
□名無しさんからの批評 (2004/01/17 04:29) フォント
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総合
文章表現に関しては素直にすごいと感服しました。
ただ、最後のセリフだけ妙に軽くて浮いてしまっているのが惜しい。
最後まで重厚な表現でいって欲しかった。
□nobodyさんからの批評 (2004/01/20 13:03) フォント
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総合
作品を下から読んでいったのですが、オチでやられた! と思ったのは、この作品が2つ目です。そうくるか。ネタ的には目新しいものではないと思いますが、独白的で平坦な文章が多めだったので、全体的な流れの中で得をしたかなぁ、という感じです。

文章が冗長で読みづらいのが残念ですが(もっと装飾を減らしてもいいかと)、見せ方や話の展開は上手いなぁ、と思います。オチが見抜けなかったし。
ただ、「双六で振り出しに戻されたような感覚。」この表現はちょっと浮いてます。双六という既成概念に頼ってはいないだろうか。

ずっと主人公は人間だと思って読んでいたのですが、彼女との関係を考えると、そうとも限らないですね。
□名無しさんからの批評 (2004/01/26 10:27) フォント
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総合
文章は綺麗だと思ったのですが、序盤と終盤で文の印象が大分変わっているので全体通して読むと違和感が残ります。オチも前半の重厚な単語の羅列から考えると軽すぎて戸惑いを覚えます。
いま一つ主題が伝わりにくいです。彼女を失った悲しみに重点が置かれているのか、主人公の放浪の姿勢が描きたいのか、それともただその情景を表したいだけなのか。曖昧で焦点を合わせづらかったです。もっと絞り込むとよりよくなるのではないでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2004/01/27 16:27) フォント
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上手いなあ、と思いました。オチが分からないという感想が多いですが、私には何で分からないのか分からないです。

前半大変仰々しく後半あっさりというのは、狙いとして良しだと思っています。ただやっぱり書き方がくどくて、途中で読む気が失せるのも実情。このまま書き方を変えないつもりならば、もっと短くしてしまっても良いかもしれません。変えるつもりならば「僕は旅人だ」以前の数行を、より柔らかい書き方にしてみるとか。
研究の余地はあると思いますが、面白かったです。「ごちそうさま」
□名は無いさんからの批評 (2004/01/27 22:36) フォント
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総合
いやはや、まったくもって人を食った話ですね。面白かったです。
これだけ情景表現に凝られていると、その部分を細かく突っ込みそうになってしまうのですが、私にとってはそれは不毛なのでやめておきます。
ただ、最初の段落の「彼女であったモノ」という表現はネタバレ的なので、「彼女の残したもの」というような表現の方が良かったかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2004/02/06 15:56) フォント
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文章が流麗でイで、語彙の豊富さもあるにも関わらず、それを発想及び構成に活かし切れていないと思いました。
書きたいものの方向性と磨きたい文章力のバランスの取り方だと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/02/06 23:28) フォント
発想
構成
表現
総合
綺麗な言葉を使っているからといって、気持ちが伝わるわけではありませんよね。
多分筆者はとても語録の多い方だと思いますが、せっかくたくさん持ち合わせている言葉を、上手く使い切れていないように思います。
ただただ綺麗に並べるだけでは、読者側には何も伝わってきません。
もう少し効果的な使い方をすれば、「綺麗なだけの言葉」ではなく「流麗な言葉」に変わるのではないでしょうか。
少しばかりきつい言い方だったかもしれませんが、筆者の力ならもっと上手く使いこなせるようになると思いますので、次回頑張ってください。
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