「汚れなき天国」
鈴掛 依音
 白い回廊が、どこまでも続いている。
 この巨大な建造物は、通称「ヘブン」。俺たちが一生を過ごす監獄だ。窓一つない、白い壁だけが延々と続く世界。風景はどこまで行っても変わらない。それは、「ヘブン」に生まれた者の人生そのものでもある。いつまでも変わらない、誰とも変わらない人生。学校に行き、何かの仕事を割り当てられ、寿命になれば死んでいく。俺にとって、まさにこれは死の世界だった。
「ヘブン」の外側には、別の世界があるはずだ。しかしそれを語る者はない。おそらく、それは禁忌となっているのだろう――この建物から、逃げ出す事がないように。
 きっとここの外の世界は、色彩に溢れ、皆が生命を謳歌しているのだ。誰も彼も生気を失った、こんな監獄とは違う。俺はずっと、そう信じてきた。
 だから俺は、探し続けた。
 どこかに存在するはずの、二つの世界を繋ぐ扉――外の世界へと続く道を。

 今。俺の目の前に、電子ロックの扉がある。俺は「ヘブン」の構造を考えてみた。間違いない――これが外の世界へと繋がる扉だ。
 見張りは誰もいなかった。絶対に見つからないと思っているのか、よほどロックに自信があるのか――。どちらにしろ、見込みが甘かったようだ。俺はこうして、この扉を発見できた。それに電子ロックも、俺の技術をもってすれば、解除するなど造作もないことだ。

 多重のロックが、一つずつ解けてゆく。
 ――この扉の向こうには、どんな景色が広がっているのだろう。
 赤。青。黄色。緑。
 それから――俺がまだ、知らない色。
 最後のロックが解ける。扉が、開く。

 何もない。真っ白だ。

 扉の先にも、白い床が続いていた。「ヘブン」の床とは違う――「ヘブン」内部から漏れる光に、幽かに煌めいている。
 猛烈な寒気に晒されて、俺はそれが雪なのだと気付いた。真っ白い吹雪が永遠に降り積もる、そこにはただ、死があるのみ。
 俺が信じていた希望は、一瞬にして潰えた。
 俺はふらふらと外に歩み出た。寒気はあっという間に俺の熱を奪い、全身の血を凍らせた。
 「ヘブン」からの光が届かなくなった所で、俺は地面に倒れた。もう、寒さも感じない。

 目の前が純白に埋め尽くされてゆく。それは、死の色。何一つ存在しない、虚無の色。
 俺の死後、この魂はどこへ行くのだろう。
 今までずっと、死の世界にいたというのに。

 白い回廊が、どこまでも続いている。
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□名無しさんからの批評 (2004/01/10 19:27) フォント
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ども、よろしくお願いします。個人的には読みやすく、好感が持てる作品でご馳走様でした。

「ヘブン」は白い地獄や牢獄とでも言うべきか。そして外の世界も雪で > 何もない。真っ白だ。 との文です。作品全体にかけて白を強調していますが、疑問がひとつあります。主人公を含めたヘブンの住民達も真っ白なのか、という疑問です。服や目、肌の色等(そうなると生活用品や住居の色〜…と屁理屈かもしれませんが)気になってしまいました。例えば「ヘブン」の人間以外のモノや景色が白以外何もなく、主人公は外のカラーがあるモノや景色に憧れを抱くならば、その辺に触れていただけるとよかったです。細かくてすみません。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 22:31) フォント
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話の進行が唐突すぎます。おそらく筆者自身もわかっていると思いますが、ツッコミどころが多すぎます。
突然電子ロックの扉が出てきたり、雪を見るなり死を覚悟したり…
「ヘブン」の意味も意義もまったくわかりませんでした。
□名無しさんからの批評 (2004/01/10 22:40) フォント
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こういう話は、読者をどっぷりその世界に入り込ませないと、矛盾点や疑問点を突っ込みながら最後まで読ませる危険を持っていますね。伝えたかったことはなんとなく分かるのですが、
そうなると、よくある話となってしまいますね。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 00:44) フォント
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 こういうタイプの話だと二つの方法があると思うんです。

1.とんでもないスピード感で読者を引きずっていき、細かい説明などどうでもよいくらいに思わせる。

2.描写をリアルにして、そのもの語りの存在感を感じさせて読者を引きずり込む。

1200字だと2は難しいので、1でいくべきでしたかね。どっちつかずに思えます。
□ななしーずさんからの批評 (2004/01/11 03:45) フォント
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SF好きなので、こういう話は好きな部類です。
読みやすい文体なのですらすら読めました。
もっと長い作品のあらすじ的な印象を受けました。
外の世界を見て、想像してたのとは違うのが解った後、なぜ引き返さなかったのかが疑問です。
最後のほうの「俺の死後〜死の世界にいたというのに」の表現は個人的に好きです。
1200字では書ききれないものが頭の中に浮かんでたのかなと思いました。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 10:39) フォント
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内容が平坦でちょっと飽きやすいかも。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 15:30) フォント
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一番気になったのが、何で「ヘブン」とやらの中しか知らないのに、「雪」ってモノを知っているのでしょうか? というところでした。
主題の割りにそこがまったく説明されていなかったので、微妙に疑問が。
□郵一郎さんからの批評 (2004/01/11 18:09) フォント
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矛盾や疑問点を整理して、一つ一つを解消していくだけでおもしろい作品に化けることが出来ると思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 21:29) フォント
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うーーん、ロールプレイングゲームのカギを開けるシーン? それともSFなのかなぁ〜。白い世界を描写してるところを考えるとキューブリックとかの世界か? うーむ。やぱ、解りませんでした。ゴメンナサイ。

ちと思いつくのは麻薬中毒患者が閉鎖病棟に放り込まれているときの妄想とかかなぁ〜 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 21:37) フォント
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うーん…。どうして主人公は色彩のない世界で生まれ育っていたのに、色彩のある世界を思い浮かべられるんだろう?結構矛盾が多いかな。でも「雪」がテーマでこの発想はエポックメイキングだったかな。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 02:18) フォント
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『ヘブン』という特異な舞台設定をした時点で、雪や白以外の色彩の存在を知っていたのか等、きっちり設定しておかないと読者側は疑問に思ってしまいます。
『ヘブン』が異空間の割には、学校や仕事などが普通に出てくるので、知っているという前提で話を進めたのでしょうか?作者には前提条件でも読者は迷うと思います。

電子ロックのくだりに文字数を割きすぎていると思いました。その分を設定を読者に浸透させる描写に当てていたらという気がします。

『白い回廊が、どこまでも続いている。』という冒頭はとても良かったですが、ラストに繰り返して使用した効果が感じられません。これは『ヘブン』を出たら広い空間が広がっているのではないか、という個人的な思い込みのせいかもしれませんが。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 02:21) フォント
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"俺の死後、この魂はどこへ行くのだろう。/今までずっと、死の世界にいたというのに。"
この二文がいいなあ、と思います。前半の矛盾点を解消するか、すっ飛ばして、ここをきっちりと落とし所に出来ると、面白かったかなあと思います。SFやファンタジーを1200字で表現しきるのは、結構骨が折れますが、どんどん挑戦して欲しいなと思います。(好きなので)
□名無しさんからの批評 (2004/01/13 16:28) フォント
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好みの問題もあるとは思うのですが、唐突過ぎる展開についていけませんでした。
「雪」を認識できる不自然さ、そこから連想する「死」の繋がりもどうでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2004/01/13 20:13) フォント
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発想はとても良いと思います。面白かった。しかし、せっかくの面白い発想を書き切れていない感じが漂います。
構成を少しいじると、読者に疑問を感じさせないスピード感が生まれるのではないかと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/16 17:18) フォント
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「俺にとって、まさにこれは死の世界だった」に説得力が欲しい。
でもこの雰囲気嫌いじゃないな。

□セツナビトさんからの批評 (2004/01/19 10:57) フォント
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私はこういったSF調の話が好きなので、割合すらすらと読めました。発想自体は面白かったです。しかし、やはり1200に詰めるにはネタが壮大すぎるかと。説明不足があちらこちらで目立ちます。ちょっと読者の脳内補完に頼りすぎな感じがします。もう少し多い文字数で書けば面白い物語になると思うのですが。

描写は綺麗で好みです。ただちょっと「――」を多用しすぎかな。私もついつい使ってしまいますが。

文章力はある方だと思います。1200で書ききれるネタで書けばいいお話が出来ると思います。次回に期待。
□nobodyさんからの批評 (2004/01/20 13:02) フォント
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近未来SFチックですね。何らかの事情により(ありがちネタとしては、核の冬とか)人間を閉鎖された空間に収容せざるを得なくなった、という世界……かどうかは、読み手の想像で補完するしかないわけです。
主人公の世界に終始してしまい、その前提条件となる世界観がサッパリわからなかったので、ふーんそうなんだぁ、以上の感慨もないわけで。

「ヘブン」という舞台の描写はよかったと思います。次回は、その物語の背後にあるであろう世界も垣間見れるような小説が読んでみたいです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/27 16:50) フォント
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途中でなんとなくオチが読めてしまいました。これは小説というよりワンシーンだけのような気もします。
□名は無いさんからの批評 (2004/01/27 22:26) フォント
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おそらく、人間社会崩壊後の生き残りを収容した施設であるのでしょうが、過渡期であるのか外の世界について教育段階で何も説明がないというのは、少々理不尽な感じもします。だからこそこのお話も成り立つのですが、そういった場合、外への電子ロック扉が厳重に警備されているのは当然だと思ったので、このお話に入り込む事ができませんでした。
□名無しさんからの批評 (2004/02/06 16:10) フォント
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この世界の前提条件が作者の頭の中でしか構築されていないので、読み手がわには伝わりにくい気がしました。

色彩に対する猛烈な憧れ、または白の世界というものへの恐怖や虚無感、苛立たしさ、何でもよいのですが、その感情の揺れが伝わりにくく、取り立てて色彩に焦がれているようには思えない、同じように白を厭んでいるようには読めない状態のままラストに向かい、死すら大人しく受け入れているという流れが、あまりにもただ流れすぎてとらえどころが無いように思います。

むしろ長編向きの作品かと思いました。枚数を考えると今回の内容では難しかったかと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/02/06 21:48) フォント
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外に出れば確実に死ぬのに、それでも外に出てしまう、ということであれば、もっと大きな絶望の描写があったほうがいいんじゃないかなと思いました。
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