「雪ん子」
藤沢水樹
 二月の半ば。この時期はいつも雪が降り続く。外灯もない闇の中で、ふわふわと舞うぼたん雪。少年はそれを横目に見つめ、白い息を吐き出す。
 かまくらの中。足元にはわらじきが敷き詰められ、中央には小さな七輪。中には炭が入っているが、少年は火の起こし方を知らない。
「お前、寒くないのか?」
 七輪を挟んで座る白い子供。短い髪、肌の色、七部の着物まで全てが白い。丸い瞳だけが黒々として、じっと少年を見据えてくる。
 このかまくらは、少年と父と兄とで作ったものだ。彼が駆け込んできたとき、白い子供は膝を抱えて座り込んでいた。
「お前、炭の起こし方知ってるか?」
 自分のものだと主張したかったのに、出てきたのはそんな言葉だった。
 子供が頭をもたげて首を振る。彼は、「ちえ」と呟いて、子供の正面に座り込んだ。
 雪はまだ降り続いている。白い子供はなにも喋らず、かまくらの中は沈黙が満ちていた。先に根を上げたのは少年の方だった。
 彼は母親に「濡れ衣」をきせられ、家を飛び出してきたのだと、勝手に語り始めた。
「ガラス割ったのオレだろって責めるんだ」
 家にいたのは少年一人だった。風の音が聞こえて、暖かな部屋に冷たい空気が流れ込んでくる。彼はその出所を突き止め、塞ごうとしていただけなのだ。
 何度も自分ではないと主張したが、母親は聞く耳を持たなかった。
 ここに来るまでのことを、彼は感情のままに吐き出す。白い子供は喋り続ける少年を、じっと見つめているだけだ。
 思いの丈を全て吐き出せば、ようやく少年の興味は子供に移った。
「お前のかあちゃんは?」
 白い子供は細い腕を伸ばし、少年の少し上を指差す。少年は振り返り、白い壁を見つめた。先にあるのは、この辺でも一番大きな山。
 白い子供に振り返ったとき、その口元が僅かに動いた。
「会いたい」
 声は聞こえなかった。しかし白い子供は、確かにそう言ったように見えた。
 途端に少年は寂しさに俯いた。暖かい部屋。美味しい料理。今ごろ家族は、自分を捜しているのだろうか。涙が浮かんで、少年は膝を抱え込んだ。
 不意に、少年を呼ぶ声が聞こえた。彼は顔を上げ、かまくらを飛び出していく。闇夜に、丸い光が浮かび、こちらに向かってくる。
「母ちゃん!」
 少年は走り出しかけて、かまくらに振り返った。闇に浮かぶ白い山。ぽっかりと口をあけたその中には、誰の姿も見えなかった。
 謝る母親に手を引かれながら、少年は家路を辿る。
 ――降り続いていた雪は、その日からぱたりとやんでしまった。
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□名は無いさんからの批評 (2004/01/11 18:47) フォント
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少年がかまくらの中にいるのか? 白い子どもが居て、少年は外に居たのか? と少し混乱してしまいました。どこにいるのか一瞬解かりづらかったので、物語の核心ではないし、ここは完結にしても良かったかもしれません。
あとは全体的にうまくまとまっていたと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 13:56) フォント
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改行の多さと、「白い」の連呼が気になりました。

話の流れがいまいちつかめなく、何回か読んでみてようやく雪ん子と少年の区分けが出来ました。
もう少し二人の差とか、一方の一方的な主張とかを際立たせないと、人物が埋もれて読者に筋が伝わらないと思いました。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 21:31) フォント
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気になった文、
・冒頭の会話、「お前、」の繰り返しはいらないのでは。不自然。
・“このかまくらは〜。彼が駆け込んできたとき、〜いた。”つながりがわからない。あと、駆け込んできた、は駆け込まれた側からの視点。駆け込んだ時、が少年の視点。
・“自分のものだと主張〜”かまくらが目的語でしょうが、前文が会話で区切られているので少々わかりづらい。
・根を上げる→音を上げる
・思いのたけを全て吐き出せば、→〜吐き出すと、では。

体言止めはつい使い勝ちな用法ですが、使いすぎると文のリズムが崩れて読みづらくなります。効果として必要な場所だけにしませんか。
段落の区切りも多いです。1と2段落、“自分の〜”から“〜語り始めた”まではそれぞれひと段落でいいのでは。(後半も同様)

細かい点ばかりで申し訳ない。
長い文をどんどん書いて欲しいと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 14:36) フォント
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文章は簡潔に書かれていて雰囲気も良いのですが、その割に状況が非常に解りにくかったです。
連続する体言止めがいちいちト書きのように感じられ、どうも読者としては物語に入り込んでいくというよりは一つ一つの言葉をかみ砕かないことには前へ進めないという印象です。
重点を置いて、そこに読者を引き込むような構成が欲しいところです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 22:23) フォント
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主人公と白い少年の関わりがイマイチわからりませんでした。私の読解力のなさが原因かも知れませんが、なんで雪が止んだんだろうとか、結局作者の伝えたい事はなんだったんだろうとか、そんな疑問ばかり残りました。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 23:49) フォント
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座敷童といふ感じでしょうか。ほのぼのとしていいなぁ〜。細かな点は気になるものの、他の方がご指摘されている事ですし、これはこれでいいのでは。次回作に期待という事で。
□名無しさんからの批評 (2004/01/16 07:41) フォント
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ミステリアスで和風ファンタジックな雰囲気が出ていますね。
物語の完成度も高いと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/17 18:34) フォント
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私だけか知れませんが、「かまくらの中」でそこに少年がいる事に気付くのに時間がかかりました。一段落からの繋がりから考えると、かまくらの中の説明か?と思って。序盤で誤解をしていまうと次のストーリーが入ってきにくいので、何度か読み直してしまいました。
□名無しさんからの批評 (2004/01/18 20:28) フォント
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特にこれといって良い所も悪い所も無いような気がします。
普通に楽しめました。
□nobodyさんからの批評 (2004/01/20 12:50) フォント
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少年には、具体的な名前があった方が良かったかもしれません。少年についての描写と、雪ん子の描写が、注意して読まないとごちゃ混ぜになってしまいます。注意して読めばいいのでしょうが、本筋とは関係ないところで疲れてしまいます。

ストーリー自体はすっきりとしたもので、心温まる内容ですよね。文章がそっけないので、なんとなく流して読めてしまいますけど。文章表現で山場(少年が母を恋しがる〜ラストまで)が演出できると、もっと読み手を引き込める作品になると思います。今のままだと、文章が硬いような気がするのですよね。
□名無しさんからの批評 (2004/01/21 01:19) フォント
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他の方も指摘されてますが「白い」の多用が目立ちました。例えば二人称は「子供」や「童」「彼」のように形容詞なしで使い、他の部分で「真っ白な腕を」等と白を強調すると解消できると思います。それと細かく言えば、「かあちゃん」と「母ちゃん」は統一してほしかったです。

内容はほのかにハートフルで良いものでしたが、文章と構成がついてきていないと感じました。文章は前の通り、構成は始めの炭のおこし方までの文章はもっと短めにしたほうがよかったです。あまり重要性を感じないので。そうしてその後に続くシーンを長くできれば○かと。
□セツナビトさんからの批評 (2004/02/10 00:03) フォント
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可愛らしい雪ん子ですね。七輪のそばでちょこんと座っている姿が想像できます。

内容としては、少年と雪ん子は同じ境遇にあった(母親から離れた)、ということですよね。しかし、ちょっと交流が少ないような気がします。言葉は発しないにしろ、少年の母親とのケンカ話に羨ましそうな目を向ける(そして少年はうろたえる?)とか、少年の母親を雪ん子が呼んでやるとか、もう少し行動があってもいいように思います。

体言止め、確かに多いですね。ついつい使ってしまいますが、ここぞというときに効果が出る表現方法なので、もう少し考えてみてください。

文章はやや硬いです。文体が違えば、物語の印象も変わってくるかもしれませんね。ただ、このどこか垢抜けない感じにはこのくらいの硬さが合っているのかもしれません。これからの作品に期待します。がんばってください。
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