「Snowrails 2.0」
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 午後七時の新宿ファンタジー。混沌の繁華街に粉雪が舞い、眠らぬ摩天楼に霧が浮かぶ――奇しくも今冬、この副都心は前代未聞の局地的異常気象に遭い、大寒波にうち震えていた。その冷気は帰路で溢れる勤労者の思考まで凍らせ、目前の夜景に見惚れる暇(いとま)を与えない。

 駅では人身事故による運休の放送が入り、大勢の利用客が移動していた。
 「また枕死(ちんし)ですかね」
 「ええはい、ご迷惑おかけします」
 流れる人集りに紛れて、中年サラリーマンの鈴木は駅員に訊く。枕死とはマスコミ発祥の造語。線路を枕にした形の轢死(れきし)を表し、遺体には首がない。一ヶ月半前の初雪を皮切りに、新宿駅停車の地上路線で六件も発生していた。

 ホームを移動する中、鈴木は仕事疲れから溜息をする。彼は床に向かって吐(つ)いたが、すれ違いの若い女は顔を歪ませ、鼻を塞いで通り過ぎた。彼は傷付いたが若者からこう、心ない動作を受けることはたまにあった。それは彼だけではない。ニ三区の中高年には起こりうる屈辱である。さらに強盗であれ児童売春であれ、彼らは非行少年・少女にとって、歩く財布のような扱いであった。そんな社会に生きるミドルエイジの鈴木は、時に気を病ませていた。

 「おじさん。お肌汚くて、肉がたるんではげてるうえ、息が臭いおじさん」
 そのうち、鈴木の前に少女が現れた。風貌はギリシャ彫刻の天使がごとく愛らしさで、白ずくめの衣に身を包んでいる。
 「いきなり何だね。俺だけがそういうわけじゃない。年取った男は大抵こうなんだから」
 「そうだね。でもおじさんは、家族ともうまくいってないでしょ」
鈴木は少女を一喝してやろうと思った。しかしその衝動は、心力もろとも彼女の神秘的な雰囲気に吸収されてしまった。彼には別居状態の妻と娘、引き篭もりの息子がいた。
 「最近この街には、雪の精が来るようになったよ。雪の精はね、世界でいちばん幸せな国に連れていってくれるんだ」

 鈴木は生気が抜けたような面持ちで少女から退き、まもなく到着の電車に乗るため、列に入った。
 突如、強烈な睡魔と寒気に襲われる。朦朧とする彼の意識の渦には、勉学、恋、社会で絶え間なく勇戦した過去の自分の姿があった。ああ、よくがんばったじゃないか。己への愛情が滾々(こんこん)と積もっていく。彼は満足した笑みで「いやぁ眠い。枕を」と呟くと線路へ飛び降り、レールの上に頭を乗せて寝転がる。騒然とするホームを仰ぐと、先ほどの少女が手を振ってこちらを見ていた。
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□名無しさんからの批評 (2004/01/11 11:33) フォント
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 ギリシャ彫刻に天使はいないでしょうね。エロス(キューピット)ならいるでしょうけど。ギリシャ神話とキリスト教の区別くらいつけましょう。「ラファエロの描く天使のごとく」とでもした方が良いですかね。別にダヴィンチでも、カラヴァジオでもいいですけど。
 冒頭の「午後七時の新宿ファンタジー。」はいらないと思います。しらけるだけです。
 数字なんですが、これはこのサイトの問題なんですけど漢数字にすべきかアラビア数字にするかは迷うところですよね。普通にブラウザで見れば横書きなので漢数字で「二三区」と書かれると一瞬何のことかわからないのですよね。「23区」なら素直に読めるのですけど。でも、ここって縦書き原稿用紙を想定している訳だから漢数字で正解なのかな。
 レールを枕ですか...。面白いけど寒気を感じてる人間が鉄のレールを枕に...何となく引っかかります。枕木を文字通り枕にする方が良さそうですが、そしたら枕死の絵が出来上がらないかな。
 いろいろケチつけましたが面白かったです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 15:41) フォント
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最初の段落、雰囲気を出したいのでしょうが、まったく曖昧なものになってしまっていて、ちょっとつかみ所が無い感じでした。(そもそも話にあまり関係が無い気もしますし。)
中盤で出てきたたくさんの言葉も散在してしまって、これまた形をなしていない気がします。おじさんの人となりが典型としてしか浮かび上がってこないのが寂しいな、と思いました。
冒頭と最後の「枕死」はいいな、と思いました。
□名は無いさんからの批評 (2004/01/11 18:39) フォント
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雪の精とレールを枕に轢死することの関連性が見出せなかったので、物語に入り込めませんでした。
中高年のおじさんの苦悩と絶望が、すっきり消化されてない気がします。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 22:13) フォント
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なんだか表現に引っ掛かりを感じるものが多いです。話の雰囲気を出すためかな、とは思いましたが、どうも馴染めないまま終わってしまいました。
アイデアはなかなかいいと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/11 22:26) フォント
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面白かったです。
一段目は全く必要ないです。あと、少女がもっと普通の雰囲気、あるいは別居中の娘に似てたなどのほうが自然。
ブラックな発想をもっと生かして、次回に期待。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 10:30) フォント
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↑です。しまった。一段落めいらないと書いたら、全く雪とかかわらなくなってくる。と思うと、せめてありがちですがクリスマスで虚しいとか、正月なのに一人とかないとだめですね。
そう思うと、どこかの批評にもありましたが、小物を変えると、全く違う季節ものなり、お題ものものになりそうですわ。
ということは、テーマとしてはぼけてるのかなと。おもしろかったんだけどな。
□名無しさんからの批評 (2004/01/12 14:04) フォント
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タイトルが微妙。この内容にこのタイトルはややアンバランスのように思えました。
ルビは()で入れるくらいなら入れないほうがいい気がします。読むのを分断されている。「枕死(ちんし)」は別ですが。入れるなら
滾々こんこん
で入れてほしいところです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 07:26) フォント
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ところどころ、違和感を感じる文章があって、いまいち話に没頭できませんでした。

「そのうち、鈴木の前に少女が現れた。」この文で、「そのうち」の使い方が間違っている気がしました。(実際、どうなのだろう)「ふと、気付くと」くらいにしておいた方が良いのかもしれません。

違和感をはっきりと説明することが私には出来ません。ただ、形にはまった説明文が多く、いまいち、話が描かれてないと思うのです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 14:27) フォント
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全体的にはとても良かった、楽しめた、と思うのですが、どこか物足りなさを感じました。異常気象と枕死の関係が弱いんです。『少女=雪の精』? としたら「最近この街には、〜」のセリフは誰が誰に向けて何のために発しているのか? 等々、考えれば考えるほど解らなくなりました。中途半端にファンタジー。
もう少し枕死という現象を心理的あるいは社会的に裏付ける要素があると、かなり面白いです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/14 23:40) フォント
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オチのインパクトがちと不足かと。新宿というよりは「真中とおる〜中央線」ですよね〜。酔っ払ったオッサンが線路に寝転ぶのは何度か見たことがありますので。ボタン押せば電車が止まってしまうし…… 
ココはいっそ、最後はキチンの逝かせてあげたほうがインパクトがあるかと。展開そのものはキライじゃないです。
□名無しさんからの批評 (2004/01/16 08:07) フォント
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世にも奇妙な世界て感じですね。しかも走馬燈ですか。
しかしその少女のイメエジは何なんでしょうかね。社会に疲れたミドルエイジが多く見た白昼夢か、はたまた何かそういう力というか世界の流れというものが実在するのか。想像を掻き立てられる良い作品だと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/17 18:51) フォント
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読み方は()で説明せずにルビをふった方がいいと思います。
□名無しさんからの批評 (2004/01/18 01:27) フォント
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『ミドルエイジ』という表現にちょっと引っかかりました。個人的には『中年』でいいんじゃないかな、と。
話自体ははいい感じに黒くて面白かったです。
□nobodyさんからの批評 (2004/01/20 12:49) フォント
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退廃的な空気の漂う前半はいいなぁ、と思いました。
「中年サラリーマンの鈴木」や「仕事疲れから溜息をする」という説明臭い表現がちょっと気になりますが、雰囲気作りは上手いと思います。個人的に、こういう作風が好きだというのもありますが。

「枕死」が頻発しているのは、白い少女がそこにいるからなんですね。レールに寝転がる描写に違和感を覚えますが(ホームに飛び降りるのではなく?)、なんとなく納得できた話でした。

この世界なら、もっとブラックでパンチの効いた内容でもいけそうですね。次作に期待です。
□名無しさんからの批評 (2004/02/08 15:19) フォント
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発想を生かしきれておらず中途半端。
文章は豊富な語彙を使いこなせておらず、逆にふんだんに盛り込むことで文章自体が貧相になってしまう。表現と装飾は違うということを意識していただきたい。

雪の精にする必然性を感じられないので、非常に現実的でリアルに進んでゆく物語のなかで浮いて見える。言葉だけがファンタジー性を持ち、世界だけがリアリティをもって進むので、物語に入り込めない。

発想や基礎力はあると思うので、今後に期待。
□セツナビトさんからの批評 (2004/02/10 00:37) フォント
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ブラックな感じで面白かったです。女の子(雪の精?)がああやって人々を死へ誘っているんですね。恐ろしいです。

一段落目は必要ないと思います、がそれが無いと「雪」が出てこなくなってしまうんですね。うーむ、やはりテーマがあるから入れてみた、という中途半端な印象を受けます。

白ずくめの少女は一体何者だったのでしょうか。雪の精? それとも何かの亡霊? 後の台詞で雪の精らしいことが分かりますが、いまいち存在がはっきりしません。

ラストで線路内に飛び込んだ主人公は幻覚状態にあってレールに頭を置いていると認識していないのだと読み取りました。もしそうだとしたら、妻や家族が布団や枕を用意してそこに眠りにつく、みたいな幻覚を見ている描写があったほうが分かりやすいかと思います。

文章もうまくすらすらと読めました。ただやっぱりルビは()ではないほうがいいでしょう。それを除けば、特に指摘するところはありません。この調子でがんばってください。
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