「日常の中の日常らしい話」
かれらは影の中に住んでいてね、影から出るときえてしまうのよ。だからいつだって影の中でしずかにくらすの。とても、はかないいのち。でも、そうね、だからこそかれらは、うつくしいんだわ。

彼女のことを僕は、何も知らない。
あの黒髪が風に揺れる様も、細い肩も、白い手のシンプルな動きも、そんなことなら幾らでも知っているというのに。幾らでも鮮明に、何度もそうしたように瞼の裏に映し出せるのに。
初めてクラスメイトとして認識したその日からずっと口をきくことも視線を交えることもなく見事なまでに“他人”を保っている僕と彼女なのに、どうして僕だけが一方的に彼女を気にしているかというと、彼女を見るたびに幼いころ聞いた童話の一篇を思い出すからだ。僕よりむしろ母が気に入っていた絵本。ようせいの、はなし。
っは、どうぞ笑ってくれこの僕を。十七になってまでときどき妖精のことを頭に思い浮かべる男子高校生を。女々しい、馬鹿げている、恥ずかしい。分かっているのにこの記憶は何べんも読まれて頭に叩き込まれた絵本のフレーズを母の声で繰り返す。影から出られないようせいさん、が、あそこにいるよ と。
彼女はそう、いつだって影の中にいた。
教室の席は常に四隅のどこかをキープし、体育の授業では持病でもあるのか木陰で見学するばかり、外を歩けば街路樹や建物が、室内を歩けば屋根が壁が彼女を光から隔てた。もちろん彼女が生まれてこのかた陽光を浴びたことが無いだなんて思わない、初めはちょっとしたジョークだったのだ、それなのにいつ視線をやっても彼女という奴は俺の期待通りであり、予想はずれだった。
かくして僕の中に不思議な空間をつくって居座りつづけた彼女だが、それもとある日の夕方で変わる。
個人的には大事だとは思えないプリントのために教室に戻ってきた、中を覗くと隅の席に座って一人きりで本を読んでいる彼女がいた。もちろん、僕の期待を裏切らずに、カーテンの影の中に。驚愕は落胆へ、そしてその一瞬後には落胆はひらめきへと形を変えた。つかつかと彼女に歩み寄り不審気に視線を向けた彼女とそのとき初めて目が合ったのだという事実にもきづかないまま僕はカーテンに手をかけ、一気に引いた。橙の光が彼女の白い肌に降り注ぎ、彼女は少し眩しそうに目を細めた。それだけだった。
僕は満足気に頷き、その場を後にした。まばたきを繰り返す彼女を置いて。僕はただ僕を鈍く苦しめつづけた女々しい記憶と小さいながら恐ろしい疑問に打ち勝った誇らしさと、この僕の大きな勇気を褒めてやりながら珍しく晴れ晴れとした表情と足取りで校庭に落ちる光を踏みしめながらプリントの存在も忘れ家路についたのだった。
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□匿名さんからの批評 (2003/12/10 17:48) フォント
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お母さんの語った妖精が、なぜそこまで染み付いているのか、不明。彼女と、お母さんが重なる?なにかお母さんの思い出がないと、つながらないのでは。表現はとても綺麗。光景が浮かびました。句点は、ミスでしょうか?
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 22:02) フォント
発想
構成
表現
総合
夕方、感想を書いたはずなのに、ミスしたのか反映されてない(泣)

それはさておき、もう一度。
「昔母に読み聞かされた絵本の中の妖精を、現実の影の薄い少女に重ねる」
ここが物語の核だと思うのですが、「っは」と少年が自分を笑うように、17の少年の感性にしては幼く、ピンと来ないのは私が少年時代を経験したことのない女だからなのか、それともこの少年が独特の感性の持ち主なのか。
妖精を通して、少女に対する少年の恋心を表現しているのかとも思いましたが、どうなんだろう。
表現は繊細でよかったと思います。
□匿名批評者さんからの批評 (2003/12/10 22:35) フォント
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構成
表現
総合
話の内容がどうのこうのというよりも、一文における構成の仕方がしっくりこないというか、無駄に一文が長すぎる感じがする。
例えば、『個人的には大事だとは〜』という部分。ここの『教室に戻ってきた、』と文章を区切らない理由がよくわからない。それなら『教室に戻り、中を覗くと』という方がスムーズに読める。もしくは『教室に戻ってきた。そして中を〜』とすればリズムがよくなると思う。全体的にリズムが単調な感じがする。場面によって文章のリズムも使い分けた方が読み手を引き込ませやすいと思う。
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:02) フォント
発想
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総合
字下げしてないのがまず気になった。

「鈍く苦しめつづけた・・・」に結びつく説明不十分だし、説得力がない。十七にもなって妖精の事を思い浮かべる事がその説明かも知れないが、それより妖精が自分に対して何かするのではないかという恐怖感的なものを設定した方が好み。
「恐ろしい疑問」に対しても説明不足を感じる。
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:06) フォント
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うーむ、私の読解力がないのか

「俺の期待通りであり、予想はずれだった」
という箇所の意味が判りません。どっちなんだよぉ?「僕」で通して記述されている所に突然「俺」がでてくるのもちと謎です。序に出てくる妖精の話がピンとこないので、そのあとに続く話と繋げて考えるのもちと厳しかったかな。1200字という制限があっても妖精のストーリはもうちょっと創作すべきではなかったかと思います。次回作、期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:30) フォント
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総合
 書かれている状況と情況と情景は読み取れます。だから小説としての味わいは読後に残るのですが、どこかチグハグでした。状況(彼女は陽の中に出てこない)と情況(僕は彼女に自分の幼い思い込みを見る)と情景(日陰を歩く彼女の後姿・夕方の教室)とを語る主人公の口調が、「読者に語る」というよりは「こうでこうでこうだったのさ」とどこか乱暴で未整理な気がしたからでしょうか。(最後の方など、なんとなく文章が駆け足になってしまっている気がします)
 文章と内容とに、整理が必要な気がします。読者としてこの物語を見て、そういう印象があります。内容で具体的に言うと(書き手からすれば余計なお世話だということは承知していますが、一意見として。すいません)、妖精のエピソードや自分の幼い思い込みといった部分は必要だったのかという点です(それこそタイトルにあるように、「日陰から出てこない彼女」のことだけでもよかった気がします。それだと内容的に味気なくなるでしょうが、「日常らしい話」なら、その日常の部分だけを用いて心情や描写を描くという手もあるでしょうし)。
□愛さんからの批評 (2003/12/10 23:47) フォント
発想
構成
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総合
影の中の妖精と、いつも陰にいる彼女という発想は素敵でした。
でも後半の話の流れが良く解りません。僕はなぜ彼女に落胆したのかが曖昧で、盛り上がりをそがれた感じがしました。
妖精と母親と彼女の三者の関係、僕の思い入れなどをすっきりさせると解りやすくなり、面白さも倍増すると思います。

最初の段落のひらがなは狙っているのでしょうが、中途半端に感じてしまいました。(後の展開との関連も薄いですし)
最後の二段落、プリントについての言及などがどうもピリッとしていない感じを受けました。中盤の彼女の表現が良かっただけに、残念です。

個人的に、段落始めは一字下げて欲しいです。その方が読みやすいので。あと、句点の打ち方がばらついているように感じました。
文の表現力は確かなので長い文でもすらすら読めますが、文のリズムは一定であった方が文体として美しいと感じます。
長々と失礼しました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 02:09) フォント
発想
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実は妖精の話を僕は怖がっていて、影の中にいる妖精を思わせる彼女を光に晒すことで恐怖に打ち勝った物語ということなのでしょうか?

それにしては妖精の話に怖さが感じられません。話す母の姿に狂気を感じたにしては母の狂気が今一歩。

独特の表現ですが、やや固さが気になる部分がありました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 10:20) フォント
発想
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総合
ずっと影の中にいる彼女を、妖精だと思い込んでしまった主人公。そのある種、夢を見ているような状態から彼が目覚める話……で受け止め方としては当たっているのでしょうか。個人的に世界観は良いと思われます。
後は「分かっているのにこの記憶は何べんも読まれて頭に叩き込まれた絵本のフレーズを母の声で繰り返す」というような、間違えてはいないけれども、頭にストレートに入ってこないような文章をすっきりさせると更によくなるかと。
で、「っは、どうぞ笑ってくれこの僕を」といきなりこの段落で自嘲モードに入るわけですが、私はちょっと主人公のテンションについていき辛かったです。「ええ? いきなりいじけ虫くん?」みたいな。そこまで思いつめることもないような気がしました。それと「個人的には大事だとは思えないプリントのために」これ、ただの「プリント」ではダメですか?  いや表現が冗長すぎかなと。
これは私の恥ずかしい話になるのですが「影から出られないようせいさん」が「影から出られないよう、せいさん」に見えて最初すごく戸惑いました。……私だけかもしれないので恐縮ですが、読点を入れる、もしくは漢字にしてしまった方がよかったかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 10:31) フォント
発想
構成
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総合
ストーリーとしてはとても面白かったです。
ただ「女々しい、馬鹿げている、恥ずかしい」妄想から抜け出ることができて良かったね、という感想しか残らない。全体的に薄いです。主人公が彼女に片想いでもしているとかなりドラマチックになると思うんですが(ただのクラスメイトをそこまで気にかけるものでしょうか)。
「かくして僕の中に」の一文はない方が良いです。短い話なので、そこで結論を言っては元も子もない。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 14:24) フォント
発想
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総合
発想は嫌いではないんですが、読みにくかったです。

字下げをしなかったのは、なにか意図があるからでしょうか?
また、一文一文が長過ぎると思います。文章の中に数文あるのは気にならないと思うんですが、ちょっと多すぎだと思います。

情景の思い浮かぶ表現は良いと思います。
でも「プリント」の修飾語などは要らないのではないでしょうか。

最後に、主人公が何を考えているのかあまり伝わってきませんでした…。私の読解力がないからですかね。
□セツナビトさんからの批評 (2003/12/12 13:32) フォント
発想
構成
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総合
まず修飾語が多すぎるように思いました。表現が回りくどいというか。一文のあまりの長さは恐らくそこからきているのではないかと。簡略化しても文章の流れには問題がないと思います。それと、他の方も書かれていますが、文章の運びが「〜で、〜で、〜となった」という感じで乱暴に思えました。一人称というよりは誰かから話を聞いているような、でも語り形式にしては硬すぎる、といった中途半端な印象です。あと、字下げは小説では基本中の基本ですよ。

冒頭の段落は、私も中途半端に感じました。「影」がテーマだから、影を漢字にしたと解釈しましたが、ここはひらがなだけか通常表記かに統一したほうがいいと思います。

最初の「あの黒髪が風に揺れる様も、〜」のくだりが、「彼女のことを僕は、何も知らない。」と矛盾しているように感じます。確かに彼女の外見しか知らないからこういう表現になったのでしょうが。私は主人公と彼女に一切面識がないのかと思ってしまいました(すぐ後を読んで補完しましたが)。「僕は彼女を見つめてばかりいた。」、それは何故か〜と持っていったほうがいいような気がします。なんかストーカーっぽ……。

「っは」のくだりは、私も「ええ、何、開き直り!?」と思ってしまいました。ここから「〜男子高校生を」は無くてもいいと思います。

「期待通り」は分かるのですが、「予想はずれ」は何だったのでしょうか? 何回読んでも分かりませんでした。しまいにはこれは単なる語呂のように感じてしまいました。

どうも事件が小さすぎて印象に残りません。妖精の話も、必要ないのではないのでしょうか。ただ単に、いつも日陰にいる少女とちょっと観察好きな少年の話のほうがよかったような。

情景が浮かんでくる表現は素晴らしいと思いました。設定を整理して、筆を押さえ気味に書くことができればもっと良くなると思います。期待しています、これからもがんばってください。
□む。さんからの批評 (2003/12/12 16:17) フォント
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構成
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総合
文章が冗長過ぎです。創作小説という点を差し引いてもお釣りが貰えそうなぐらい、一文が長くわかりづらいです。短文を重ねすぎても単調になりますが、もう少し一文を短くし、読者にすんなりと受け入れられる文章を書くようにされたほうがよろしいかと。冗長な装飾語を削れば、世界観の理解に必要であろう「ようせいさん」の逸話や母への想いを盛り込むことができると思うのです。
クラスメイトに「ようせいさん」の影を重ね、それが同化してしまうことに恐れを抱いていた主人公が、ラストでクラスメイトの正体を暴き「ようせいさん」ではなかったんだ、母との思い出は美しいまま俗化しなくてよかった、というマザコン坊やの話? とも思いましたが、うまく私の中では消化できませんでした。
表現は綺麗だと思うのですが、表向きの美しさしか感じられませんでした。厳しくてすみません、次作に期待します。
□名無しさんからの批評 (2003/12/12 21:23) フォント
発想
構成
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総合
少年の成長というテーマは、この制限字数からすると妥当なもののような気はするが、どこか内容のインパクトに欠けると思った。
字下げが無いのがとても気になる。
嫌がらせ高校生…
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 00:06) フォント
発想
構成
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総合
タイトルに日常と入っているのに、いきなりようせいと来て出鼻をくじかれたギャップは面白い。終始日常の話であったのは構成としていい。

一人称の意義がラストで無くなっ
ていた。
字下げが無いのは読みにくい。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 17:23) フォント
発想
構成
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総合
「っは」というのはどう発音するのだろうと考えてしまいました。
 さて、内容ですがもう少しクラスメイトと影の中の妖精に共通点を作らないと妖精の話を持ち出す意味がないとおもいます。字数制限でつらいところですが両者への字数配分をもう少し検討した方がいいでしょう。
 また、影の中の妖精が恐ろしい記憶になってしまうのも、この文面だけではわかりませんし、それを追い払うことで満足感を得た理由もわかりません。「妖精の話」=「母の思い出」という図式が事前にあって、「母親に抱いていた何らかの葛藤を追い払う」=「クラスメイトを陽光にさらす」となれば理解できたと思いますけども。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 22:16) フォント
発想
構成
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総合
主人公が全然喋らずに、最後まで心の声だけで情景や感情を表現できたところがすごいと思います。
一人で、自分の頭の中だけで何かを考えているとき、たしかにこんな感じなのかもしれません。でも、たくさんの人が読む場合はもう少しすっきりさせた方がいいような気がしました。

文章に勢いみたいのがあるので、あとは読み手にリズムを与えられると、最後まで楽しく読んでくれる人がもっと増えると思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/15 21:05) フォント
発想
構成
表現
総合
 あちらこちらに良い表現が見られました。
 表現力は惜しむことなく注ぎ込んで良いと思います。
 ですが、この場所では文字数が決められています。
 短い文字数の中で、効果的に使うためには、一番書きたいと思う部分に集中させると良いと思いますね。
 勝手な想像なのですが、冒頭の表現に力を注ぎこんだ結果、最後のほうが文字が足りなくなって、書ききれなくなった、とか?

 いずれにせよ繊細な表現力を持っていると思います。あとはそれをどう物語へと昇華していくかですね。
□水夫さんからの批評 (2003/12/16 15:52) フォント
発想
構成
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総合
妖精の話と現実の彼女の話がごっちゃになって読みにくかったです。

妖精に「かれら」という代名詞を使うのなら、視点を女性にして、「彼」、できれば固有名詞を持った個人の描写にするとより読みやすくなると思います。

個人的には主人公の行動は女性にとらせたいのもありますし。
□名無しさんからの批評 (2003/12/17 06:10) フォント
発想
構成
表現
総合
「驚愕は落胆へ」の部分ですが、最初は期待を裏切っていない事に対して驚いたと読んでしまい、あれ? と思ってしまいました。
 これは「誰もいないはずの教室に彼女がいた」から驚いたんですね。
ちょっと引っかかってしまいました。
 あと、予想と期待は逆のほうがいいような気がします。

 物語はよかったです。「面白い」とは違うけどいい感じの話だと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/19 21:11) フォント
発想
構成
表現
総合
情景はすぐに目に浮かんできます。
表現力はかなり高いと思います。
こうゆう話は好きなので、贔屓目に見てしまいますが、それでも段落の最初は一番下げる、などの基本的なことは気を付けた方が良いと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/20 20:52) フォント
発想
構成
表現
総合
最初のひらがな表記は、主人公が「子供時代」に聞かされていたということからでしょうか?
その後、「ようせい」としたのも、その当時のことを引き摺っている、そういうことを表現しようとしていたのでしょうか。
忘れられない「ようせいの話」。
しかしなぜ主人公が、その話に対し過敏に反応するのか、それが読み取ることはできませんでした。
彼の行動は、気にかかるという程度のものではないですよね?
その繋がりがもっと表現できていれば、もっと良い作品になったのではないでしょうか。

文章構成についてですが、全体的に一文が長く思えます。
中には良い表現もあるのですが、それが冗長な文章に色あせてしまっています。
推敲を重ね、更なる発展を。
□名無しさんからの批評 (2003/12/22 00:12) フォント
発想
構成
表現
総合
 インデントがないのがどうしても気になりました。一文が長くて、一息も入れさせてくれない感じがします。
 もし彼女が妖精なら、カーテンを開けたら彼女が消えてしまうかもしれない、と思ったんですよね? という解釈で間違ってたらごめんなさい。
 私にはちょっと難しい話だったのかもしれません。私はまず理解力を向上させたいと思います。
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