「燈子」
ひろお
 この前もそうだった。
 ハッと我に返ると部屋にある家具以外のものすべてが散在していて、空き巣にでも入られたかのような寂しさが残っている。夕暮れの終わりは部屋の中を侘しい影でいっぱいにしていた。
 「燈子…。」
 呟くのはいつも同じ名前だ。 
 燈子には俺が合うんだ。俺しか燈子を幸せにできない。そして俺も燈子とでないと幸せになれない。どうしてわかってくれないんだ。
 二年生の夏は本当に楽しかったのに。俺の部屋で、ずっと一緒に居たじゃないか。
 床に落ちている雑誌や大学の教科書を片付けながら、日没に埋まっていく部屋で泣いた。苦しい。おかしくなりそうだ。
 
 逢いに行こう。
 すごく良いことを思いついた気がした。燈子に逢いに行く。来てくれないなら、こっちから行けばいいんだ。
「もう来ない。ごめん、昭二とは会えないよ。」
 燈子の言葉が過ぎる。でも燈子は優しい。本当に優しいんだ。だからきっと抱きしめてくれる。きっと笑ってくれる。

 冬の夜の街は涙の痕を隠し、白い息が俺の燈子を想う気持ちをかきたてた。大学を通り抜ければ、すぐ燈子の下宿だ。自転車のペダルが速くなってきた。
 燈子はそこにいた。でも奴も一緒だった。燈子と同じサークルの男だ。
 燈子の腰に手を回している。奴の唇は燈子の髪に触れている。
 頭のどこかで何かが落ちた。

 「やめてぇ!昭二!昭二!やめて!」
 紅く染まり、悶えながら奴がそこに倒れている。俺は塀を殴り続けた。
 「昭二、手が、どうにかなっちゃうわ。」
 燈子が俺の名を呼んでいる。そうだ、抱きしめてやらなければ。
 燈子は奴の肩を抱いて、奴の名を呼んでいる。
 そんな奴は放って俺の所に来ればいいんだよ、燈子。
 「燈子…おいで。大丈夫だから。」
 燈子は俺を見た。その眼に暖かさはなかったが、燈子が俺を見てくれた。
燈子が、俺を。

 電灯でできた俺の影は燈子と奴の顔を黒く染める。俺は燈子だけを見据え、燈子がその身を委ねてくるのをじっと待っている。
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□名無しさんからの批評 (2003/12/13 00:53) フォント
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ダークな印象の一人称は、読者が感情移入するのに強い説得力のようなものを必要とします。
それが足りないように思えました。

「」の末尾。は不要です。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 08:17) フォント
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最初はよかったんですが、途中からよくわからなくなっていった気がします。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 09:11) フォント
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物語の捕らえ方は三角関係の一辺を一人称で描いた作品でよいでしょうか。
 舞台の表現があいまいで、路上でケンカしてるのか、(塀を殴ってるのだから路上でしょう)どうなのかも不明。 総じて舞台設定が私にはわかりませんでした。殴られ血だらけになった脇役を放置して主人公の手を心配する女性。ううむ、やぱ、解らない。三角関係を描くには「底辺カケル高さ割る2」の公式をきちんと織り込まないと。ゴメンナサイ。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 11:21) フォント
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伝えたいことは何となくわかるのですが、説得力が足りなくて入り込めない部分がありました。
主人公も単にキレやすいストーカー止まりですし、燈子さんはおそらくごくごく普通の女子大生なのでしょうが、主人公の一方的な思いこみでも良いから魅力の描写が欲しかった。「燈子には俺が合うんだ。俺しか燈子を幸せにできない。」と言うからには、いくら思いこみの激しい人といえども何か理由がないと、読者としてはついて行けない部分が。
最後の段落はとても好きです。描写が良いと思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 16:31) フォント
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感情的な狂気的な小説は嫌いじゃありません。今までの彼らの背景が浮びました。
会話文の「。」はわざとでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 18:39) フォント
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男の狂気を書きたかったんでしょうが、その意図があからさまに見え過ぎて、読んでいても話に入り込む前に興ざめしてしまいました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/14 01:06) フォント
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 主人公の狂気に説得力を与えられないまま、物語は読者をおいていき、意味不明に終焉した、って感じでしょうか。
□匿名さんからの批評 (2003/12/14 20:02) フォント
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どうしても、最初から狂っている男の話を聞く気になれないと思ってしまった。もう少しひねった何かが欲しい。何が足らなかったと具体的にあげられなくて申し訳ない。
□名無しさんからの批評 (2003/12/15 01:18) フォント
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ストーリーはひとまず置いておいて、表現方法に関して。

例えば、3段目、燈子に会いに行くシーンを挙げます。まず、冬の夜の街は〜のくだりですぐに「涙の痕を隠し」とありますが、冬の夜の街の何が隠しているのでしょうか? 街と言ってもたくさんありますよね。ネオンだとか住宅街の静けさだとか、裏道の闇だとか。そういうものを本来書かなければいけないはずなのに、それを怠っているので私はピンとこなかったのです。そういったことや指示語が何を指しているか、そういったものが不明瞭な感じを受けました。
また、燈子を求めているのに、男の方にいきなり目がいくのはどうなのでしょう。燈子の描写がないんですよね、ここ。無いと燈子への執着が深く描けないと思うのですが、どうでしょうか。
あと、「頭のどこかで何かが落ちた」というくだりも何かピンとこないのです。

あと、狂気を描こうとしていますが、その狂気具合は良いと思います。ただ、いかんせん、狂気と言うものは劇中、豹変して見せて初めて狂気というものだと思うのです(一般的には。海外の名作等例外はありますが)。ですので、最初は穏やかであってほしかった。この場合、思い出すも後悔はしていない、など普通の人間を主人公に装ってほしかった。要するに、コントラストですね。

以上、言い過ぎた面もあり、勝手に話の作り替えてしまい、申し訳ありませんでした。けど、これにめげず頑張ってください。
□水夫さんからの批評 (2003/12/16 17:25) フォント
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無理矢理影を引っ張り出す最後の段落はともかくとして、雰囲気はある程度あります。

手の心配をしたり、目線をあわせたり、といったあたりの燈子のアクションに少し違和感。
□名は無いさんからの批評 (2003/12/17 03:03) フォント
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ダークですね。嫉妬というか、思い込みというか。ただ、まず昭二の手を心配する燈子は、おいお前、男の心配はいいのかと突っ込みたくなりました。

・蛇足
括弧の最後は「。」は入りません。「…」は「……」と使うのが普通だそうです。
□セツナビトさんからの批評 (2003/12/19 14:10) フォント
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狂気は痛いぐらい伝わってきたのですが、その他の部分が説明不足な感じがしました。

まずは冒頭の部屋でのシーン。恐らくは燈子のことを思い出して、または燈子に何かを言われたかして、発作的に部屋をめちゃくちゃにしたのだと思いますが、その理由説明があのモノローグだけでは、いまいち掴みきれません。

あと、やっぱり燈子は主人公よりも殴られた男のほうを気にするかと……。完全に主人公と切れているんですよね? 今は殴られた相手とラブラブ(笑)なんですよね? だったら優先順位は自然と決まるかと。主人公のほうを優先する理由があったのだとしたら、説明不足です。

場面ごとに空白の行を入れているのはなぜでしょうか。ただ単に場面が変わるから? そのせいでしょうか、どこかシナリオを読んでいるように思えました。

1200に収めたがために説明が足りなくなった、といった感じもします。普通の短編サイズだったらもっと面白かったかも。文章自体は、言い回しに多少の引っ掛かりがあったものの、すんなりと読めました。次回に期待!
□愛さんからの批評 (2003/12/27 02:38) フォント
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非常に暗くて湿った雰囲気が出ていていいと思います。
しかし昭二の狂気がいまいち、掴みきれませんでした。通り一遍のストーカー的心情で、やや怖さにも欠ける感じを受けてしまいました。どうせならもっと猟奇的なものが読みたいなあ、と感想まで。
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