「帰り道」
遊木 薫
 学校から駅までは河原沿いの一本道しかない。その道をいつも二人で帰っている。いつも帰っているからと言って、私たちは付き合っている訳ではない。高志は陸上部の副キャプテンで高飛びの選手なのだ。
 そして私はその陸上部のマネージャーをしている。高志はまじめで最後まで部室に残って器具の点検や明日のトレーニングを考えたりしているのだ。その作業に私はいつも付き合っている。その結果として二人で帰る事になり、一緒に帰る事に特に意味はない。

 と、高志は思っているに違いない。しかし私には十分意味がある。何度か横に並んで帰ろうとした事もあったけど、その度に高志は先に行ってしまい、私はいつもの定位置に戻ってしまう。ある程度の距離が離れると、足早に先を歩く高志は速度を落としてくれる。いくら見通しがよい河原の一本道とはいえ一人で歩くのはさすがに不安になる。その気遣いは正直うれしい。距離の確認のためか何度か高志は振り返って私を確認してくれる。
 それなら一緒に歩いてくれても良いのにとも思うが、付き合ってもいないのに一緒に帰るのはそれだけでクラスの噂の的になってしまう。私は全然かまわないのだけれど……

 いつものように夕陽に向かって歩いていると、急に高志が振り返った。なんだか様子がいつもと違って少しおかしい。
「ちょっと話があるのだけどいいか?」と言うと、枯れた小麦色の土手に座り込んだ。
『話って何だろう?もしかして……』
 多少の期待はしたのだが結局は、練習方法や冬休みの合宿の話だった。
 さすがにもう日が暮れるのも早い、30分も話さないうちに夕陽はすっかり落ちてしまっていた。
「そろそろ帰ろうか」と高志が立ちあがった。私も少し遅れて立ち上がりスカートについた枯れ草を払い落とした。しばらくしても歩き出さないので私は「どうしたの?」と尋ねた。高志は今までに見たことの無い複雑な表情をしていた。
「日も落ちたし、いつも隣にいるヤツも現れないけどどうする?」と私につぶやいた。
『いつも隣って……』
 まだ何も言ってないのに高志は駅に向かって歩き初めてしまった。
「そうね、たまには『こっち』と帰りたいな」そう言って急いで高志の左側に並んだ。
「高志も彼と一緒で喋ってくれないの?」
「いいから、帰るぞ」
 暗闇でも判るほど照れている高志は、それだけ言ってまた黙々と歩き始めた。
『いつもの彼は顔色変えずにいたのにね』
 私は微笑みながら振り返って、いつもの彼を眺めた。
 駅の電灯が夕陽の時とは違う二人並んだ影を映し出していた。
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□匿名さんからの批評 (2003/12/10 18:25) フォント
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ほのぼの。いい話。途中、いつものやつが現れないしって言う高志のせりふから、なかなか影が思いつかなかった。私が、こっちと帰りたいといえたのは、ずっと横を歩きたいと思ってたからなのか?著者がここで、影と書きたくなかった気持ちは分かるが、読者はもう一つ気付きにくいかも。この部分が、工夫されただろうと思うが、もたつくかな。その分が残念。
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:18) フォント
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いつものやつが何者なのか、一度ではわかり辛かった。
あと、「いつも」を多用している気がしました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 01:00) フォント
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青春の1コマですね。全体的な雰囲気はとても良いと思ったのですが、二人のセリフが不自然で、むりやり影に結びつけている感じがしました。
句読点やいくつかの表現で、読んでいて引っかかる部分がありました。もう少し推敲すると良いかもしれません。
□名は無いさんからの批評 (2003/12/11 02:10) フォント
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隣に何かがずっと居たのか!?などと勘違いをして、少し恐い思いをしました。読み返してみるとホラーではないようでした、少し残念。しかし落ち着いて考えると、高志くんキザだなぁ……。「ずっと俺の影がついていただろう?」なんて、私の脳内で喋らせてしまいます。

批評ですが、まじめな高志くんがあんな発言をするせいで、物語が解かりにくくなってしまっているかなぁとは思います。主人公の主観で物語りは進むので、彼の真面目な性格は主人公の思い込みだったと解釈すれば良いのかもしれませんが。
□匿名批評者さんからの批評 (2003/12/11 10:30) フォント
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『いつも』という言葉が多用されているのは、イコール『影のようにいつも付きまとっている』ということなのだと汲み取るのだが(違ったら申し訳ない)そのための多用ならこれといって気にはならない。しかし、そうであったとしてもテーマが影だという先入観があるからであり、同じことを異なる表現で書いた方が通常の場合ならいいだろう。
話自体は構成もしっかりしててよい作品だと思う。
□名無しさんからの批評 (2003/12/12 23:39) フォント
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日常学園ものとして、時の流れと影の差が割りとうまく表現されていると思いました。

但し、話としてはありきたりです。
影だから暗い。光によって影が違う。
コレだけでは話のメインテーマを影とするには読後感として弱いです。
□名無しさんからの批評 (2003/12/16 03:17) フォント
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見ちゃいられない青臭い話を良く表現できているとは思うが、いつもの奴が判りにくい。そんな台詞ぽんと出てくるだろうか。と思った。
□水夫さんからの批評 (2003/12/16 18:19) フォント
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影をいつもの奴、と表現する発想が登場人物に浮かぶ、というのにかなり無理が。
□名無しさんからの批評 (2003/12/17 21:23) フォント
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そこでタッチ!じゃなくて青春だなあ。うーん、こういう女性がいればいいけど、実際の部活の時には二人の間になにか交流があるはずで、その辺をもうちょっと書き込んで頂ければすんなりと理解できたかと。いえ、私、帰宅部だったんで、放課後こんな出会いがあちこちで展開されていたのかと思ったらなんだか損をしたような気に。
□む。さんからの批評 (2003/12/18 12:33) フォント
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ほのぼのとしてて心が和みますね。いい話だなぁ。実際に自分が「私」の立場に立たされたらきっと引いちゃいますが、「高志」の台詞がくさすぎて。

影の使い方がうまいと思います。影を意識させない、だけど画面にはさりげなく影が収まっている描き方が、個人的にはいいと思います。なんとなく字だけ追っかけていると、影がどこで出てくるのかわかりにくいのですが、こういう消化の仕方も有りだと思います。
「高志」が影のことを「いつもの奴」と称しているのだけが、ちょっと唐突な気がしました。
印象に残る作品でした。一人で開けた一本道を歩いている時に、ふと思い出しそうです。
□名無しさんからの批評 (2003/12/19 22:20) フォント
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高校生の青春ですね。
ほのぼの、可愛くて良いです。
思春期であるが故に格好付けてしまう高志、マネージャーだからと毎日残って好きな彼に尽くす「私」がとてもリアリティがあります。
ただ「いつもの奴」が最初影と結びつかなくて、何度か読んでやっとわかりました。
ここはもう少し説明があっても良かったと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/21 04:19) フォント
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間違っていたら申し訳ありません。気持ちの描写は()で書くのがセオリーとなっている気がしました。
それを除いても、やはり表現は「葉」どまりです。ここで私が評価している「表現」とは風景の描写ではなく、気持ちの描写のことです。
確かに、『』でくくって主人公の気持ちを書いてしまうのはとても簡単で、もっともストレートに表現できる方法ではあります。ですが、それは文学においてベストではないと思うのです。
例えば、『話って何だろう?もしかして……』の部分。ここは直接、こう書かなくてもいくらでも描写の方法はあるはず。心臓の鼓動の音とか、隠喩する文章でぐっと文章は味わい深いものになると思うのです。

「そうね、たまには『こっち』と……のくだりについて。『こっち』が高志で一方が影というのは分かるのですが、それをもっと分かりやすく、印象深くするためにも、前半でそのことについて触れておくべきではないでしょうか。いつも高志の影を追って、とか。

以上、厳しめの批評になりましたが、文章力は高めだと思います。精進して、次の作品に生かしてください。
□名無しさんからの批評 (2003/12/22 15:54) フォント
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悪くないのだけど、高志くんのキャラがあまり固まってないような気がしました。それと「いつも隣にいるヤツ」というのに違和感があるのは、「隣にいる」と感じるのは主人公のハズで、前を歩いている高志からは、そういう風には見えないからなんじゃないかと思いました。それともわざと影と歩かせていたんでしょうか…?
でも全体的にほのぼのとしていて好きな雰囲気です。次回作も楽しみにしてます。

あと細かいことですが、下から10行目は
× 歩き初めて
○ 歩き始めて ではないでしょうか?
□名無しさんからの批評 (2004/01/01 15:50) フォント
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「いつも」という表現の多さに「いつも隣にいるヤツ」が埋没していて、分りにくく、しかも空々しい感あり。タイトルも「帰り道」では、そのまんますぎる。いっその事「いつも隣に」とかにすると「隣にいるヤツ」が分りやすかったりして…と思ったり。
□セツナビトさんからの批評 (2004/01/10 08:52) フォント
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青春ですね。この何とも言えないもどかしさがたまりません。

「いつも隣にいるヤツ」は私も一読では分かりませんでした。他の方の批評を読んでようやく理解できました。多分この話の一番の見せ場なのでしょうが、分かりづらかったです。

あと高志の性格がその台詞で崩れてしまっています。前半の描写、主人公を呼び出して部活のことについて話すあたりから生真面目で堅物なんだなと思っていましたが。こういう台詞を言わなさそうな。もうちょっと高志の性格を出しておかないと、いきなりあの台詞では違和感を感じました。

読みやすさのために、「」のあとは基本的に改行させます。地の文に混ぜるときは「」を取った方がいいです。心の中の台詞は()で書きます。あとは、句読点の位置に若干違和感を感じました。御一考あれ。

雰囲気はうまく出ています。次回作に期待。
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