「先輩」
あてなるもの
 こんなに素敵な先輩がいたなんて、運動会まで気付かなかった。パン食い競争の集合時間に遅れそうで、あわてていた私は思い切り先輩にぶつかって行った。謝る私に「大丈夫、気にしないで」と言った低い声と笑顔。話には聞いていたが、私は一瞬にして恋をした。先輩の目の前でパンにかじりつくなんてどうして出来よう。私は最下位でゴールした。
 私は情報を集めた。生徒番号3613。榊 祐人。181センチ、65キロ。三年生の廊下に張り出される中間テストの成績優秀者名には、物理と数学に名前があった。何もかも格好良過ぎだ。ただし、致命的な欠点があった。同じクラスに彼女がいる。先月彼女に告白されてO・Kしたらしい。大人っぽい彼女がよかったのかな。だけどあと二年先に私が生まれていたら、私の方が色っぽかっただろうに、残念だ。と、無理やり欠点をのんだ。
 いつも先輩と一緒に帰ってゆく彼女に対抗する方法も思いつかない私は、せめて一度先輩と手をつなぎたくて、文化祭の最後にあるフォークダンスに望みを懸けた。さりげなく同じ輪に移動し、後八人、後五人と確認しながら踊った。なのに、あと一人というところで曲は終わった。終わりだねと言うように目が合った先輩が微笑んだ。私も微笑み返した。その後トイレまで走って、こもって泣いた。
 希望の高校に入学したは良いけれど、合格という目標の無くなった私は、毎日がつまらなかった。なのに、先輩を見つけてからの学校の楽しいこと。席替えがあっても友達に拝み倒して、窓側の席は必ずキープした。もちろん、体育の時間の先輩を眺めるため。放課後は自習室に毎日のように通った。もちろん勉強している先輩を見るため。見たくない人も一緒だったけれど。二人に気付かれたとしても、私は真面目な一年生にみえたはずだ。
 二人が帰り支度を始めると、私も席を立つ。駅の近くの交差点で二人はいつも手を振って別れる。そこから駅までが、先輩と私の帰り道。私が勝手に、先輩の影を踏みながら、後方五メートル辺りを歩いているだけだけど。
 受験シーズンが始まり、三年生の姿が少なくなった。二月十四日なんて言ってられないと、私はチョコレートを持ち歩いた。タイミングさえあれば、いつでも渡せるように。彼女になりたいなんて、大それた考えはなかった。ただ、せめてもう会えなくなってしまう前に、先輩が大好きだったと伝えたかった。
 ある日チャンスは来た。その日は先輩一人だった。声をかけようかと迷いながら近づき、いつもの交差点近くに来た時、そこに彼女が待っていた。だめだ。私は先輩を追い越す振りをするしかなかった。タイミングの悪い私。もう一生先輩に告白できるチャンスは来ないだろう。初めて追い越す先輩と並んで歩いた。私は前方の彼女を見られず、下を向いて歩いた。ふと気付いて、にんまりした。そこではタイミングがバッチリ合った先輩と私の影が、手をつないで大手を振って歩いていた。
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□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:07) フォント
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ありがちな少女の恋のお話だけど、とっても純粋で可愛らしくきゅんと切なくて好感が持てました。
1200字で上手に纏めているし、文章も上手い。光景が目に浮かぶようでした。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 01:02) フォント
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オチ(?)がとても良かったです。影の使い方がとても面白くて、印象的。そしてかわいらしい。
どこにでもありそうな恋愛モノローグといった感じなのですが、もう一度読んでみたいと思わせる魅力がありました。
□名は無いさんからの批評 (2003/12/11 02:02) フォント
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いいですねぇ。全体的にまとまっているし、「影」を使って明るさのある話を書けるのは良い発想だと思います。
変なことにこだわりを出して批評しますが、一人称でやるなら時間軸が現在進行のときでも「〜た。」という表現が多いのにはどうして引っかかりを覚えてしまいます。
□匿名さんからの批評 (2003/12/11 07:10) フォント
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二つ目ですね。影で明るい話をと、ひねりましたね。
好みの問題ですが、こっちの話のほうが、いいですねえ。男ならこんな後輩をもってみたい。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 19:18) フォント
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うまいですね。
切々と少女の恋心が伝わってくる文章で、あまずっぱいやら、気持ち良いやらで、少し困惑するほどでした。

ただ、少し思ったのは、最後の部分が文体が急き気味な気がしました。「見られず」なんてのは思い切り違和感がありましたが、文章の上手さに、文字数調整をした後かな、と邪推してしまったり。

どの段落の文章も、ちょっと推敲、短縮してでも空白、改行を効果的に上手く使うと、もっといいお話になるな、とも思いましたが、そこは著者の好き好きなので、言及はしないことにしておきます。
□名無しさんからの批評 (2003/12/12 23:42) フォント
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影の演出は光っていました。
話はありがちながらも、骨格はしっかりと出来ています。

文章に起伏なく平坦で単調な印象を受けました。読者を飽きさせる部分があると思います。原稿用紙三枚ならまだいいけれども、もっと長くなると途中で確実に飽きます。
□名無しさんからの批評 (2003/12/14 18:54) フォント
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話は微笑ましいのが、彼女の情熱が言葉ほどには感じない。そのせいか主人公に感情移入できない。影の使い方には拍手。
□名無しさんからの批評 (2003/12/14 18:56) フォント
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↑訂正
誤:話は微笑ましいのが
正:話は微笑ましいのだが、

失礼しました
□名無しさんからの批評 (2003/12/16 03:36) フォント
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最後が自然でいい感じです。
合格の目標なんたらは理解し辛かったです。
よくいる軽度のストーカーの話ですね。
□水夫さんからの批評 (2003/12/16 18:24) フォント
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話は平凡なんだけど、テーマの利用方法に脱帽。
□名無しさんからの批評 (2003/12/17 21:40) フォント
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うーん、もちろんフィクションなので、こういう女性像もアリなのでしょうが、パン喰い競争とか、フォークダンスとかいう素材が出てきたところで読んでいて赤面しました。
理解を超えていて、うーーん。
さらに上から順に評をしていったため、なんだか、青春物はちょっと厳しい採点になりました。
□名無しさんからの批評 (2003/12/19 21:53) フォント
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可愛いですね。
女子高生の恋愛は、程度の差はあれどほとんどの女の子がこんな感じだと思うので(少なくとも私の周りにはかなりいました)感情移入できて良かったです。
最後の影が手を繋いでいて、願いが叶ったってのも、とても良いと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/22 16:08) フォント
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懐かしいような、甘酸っぱくて可愛らしい作品でした。ラストも無理がなくて、とても好きです。
文章表現はまだ上達の余地は充分にありそうですが(どなたかも書かれていましたが、空白や改行をもう少し上手に使うと、文章が締まって良いと思います)、あまり上手じゃない分リアリティがあって、主人公の素直な可愛らしい性格が伝わってきたような気がしました。
□郵一郎さんからの批評 (2003/12/22 23:14) フォント
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切なさが伝わってきました。
影の使い方もいいです。
自分から指摘することはありません
□名無しさんからの批評 (2003/12/29 22:24) フォント
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 内容は例によってここでよくある青春ものでしたが、テーマの使い方がうまく、光っています。
 ほかの部分がマンガチックでなかったらもっとよい評価をしたのですけれど。
□セツナビトさんからの批評 (2004/01/10 09:01) フォント
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かわいいですね。オチがものすごくよかったです。いい意味で不意を突かれました。その光景が浮かんできます。ああ、青春。

文章ですが、やはり硬くて間が無く、窮屈です。もう一つの作品を読んで思ったのですが、この文章の硬さは主人公の性格ではなく作者の方の書き癖でしょうか。かわいらしいお話なのに、ちょっと息苦しいです。もっと表現を軽くしたほうがいいと思います。

他の部分では特に引っかかりもありませんでした。いいお話だと思います。次回作に期待します。がんばってください。
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