「赤い影」
京都
 授業参観日の日、わたしは職場を早退し、良の学校へと向かった。今朝方、学校に行く間際に、良が発した言葉が気にかかっていた。お母さん、今日は絶対に来ないでね、良はそう言い残して学校へと向かった。わたしはその良の言葉に、不思議さを感じながら、すでに父兄で埋まっていた教室へと入った。
 教室の後ろには、生徒たちが描いた絵がいくつも飾られていた。どの絵にも、右下に生徒の名前が書かれてある。おそらく校舎の風景を書いたのであろう、小学生らしい生き生きとした色使いが映えていた。わたしは、教壇の担任が授業をしている最中、良の描いた絵を探した。しかし、それはどこにも見つからなかった。二十枚近い絵の中に、良の名前はどこにも見つからなかった。ふと前を見ると、ちょうど真ん中の席あたりで、うつむくように授業を受けている良の姿が見えた。

「どういうことなんです?どうしてうちの息子の絵だけが、飾られていないのですか?」
 授業参観の終わったあと、生徒も父兄もいなくなった教室で、あたしは担任の女教師を詰問した。女教師は、困ったように弁明を繰り返し、そして一枚の絵を、教壇の上に広げた。その絵は、学校の校庭を描いたものだった。緑の樹々が色鮮やかに描かれている。何の変哲もない絵のように見えた。ただ一点を除いては。
 わたしは、自分の目を疑った。緑の樹々が連なるその下方には、原色の赤がべっとりと塗られていた。ちょうど、樹々の影のあたりだった。まるで影が、血で塗りつぶされているかのようだった。
「わたしもですね、良君が、ふざけて描いたと思っていたのです。ただの、悪戯なのだと思いこんで、叱ったのですが、良君は、頑として、この影が赤く見えると言いはっているのです」
 女教師は、良が色盲ではないかと、校医に調べさせたらしい。しかし、良の色覚は何の異常もなかったということだった。
「良君は、何か心の傷を抱えているのではないでしょうか。お母様が、お一人でお育てになってこられたご苦労はわかりますが、その環境が良君に、なにか影響を与えたのではないでしょうか」

 わたしが女教師との話を終え、教室を出ると、廊下の端に一人たたずむ良の姿が見えた。良はおそるおそる、わたしに近づくと、小さな声で、「お母さん、ごめんね」と言った。
 わたしは、良のからだを抱きしめ、そして小さなその瞳に溜まった涙を指で拭いてあげた。廊下の窓から夕焼けの光が差し込み、辺りを赤く染めていた。わたしは、自分の心の中まで、赤く染められてしまったような気がした。
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□匿名さんからの批評 (2003/12/10 18:12) フォント
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辛くて、ごめんなさい。今、担任がこれをすると、教育委員に直訴されます。たぶん。赤い影はおかしくなくて、逆に個性と歓迎されるでしょう。叱るというのは無いと思います。
女でひとつで育てるのに、何か赤いおもいでがあったなら別ですが。実は読みながら、赤い影の下に、したいでも埋まってるのかと思ってよんだものですから。赤が、何の象徴なのかはっきりさせたらよかったと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/10 23:02) フォント
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こういう発想のお話は好きです。良くんには常人には見えない不思議な何かの力を持っているのか、精神的なものなのか、赤い影が見える理由が知りたかったなと思いました。
□匿名批評者さんからの批評 (2003/12/10 23:42) フォント
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まぁ、現在の教育の現場とのギャップがあるのは否めないけれども、そのこと自体が作品の価値を落とすわけではないので、そこには触れずに批評を。
 まず場面転換に多少の無理を感じてしまうことが挙げられる。
 『どういうことなんです?〜』の段落で少し違和感を感じてしまうのは、『何の変哲もない絵のように見えた。ただ一点を除いては。』という倒置の表現に原因があるのだろうか。倒置法を使うことでなるほど異常さが印象が深まるが、その後の母親の心情に生かされていない。ただ単に『目を疑った。』だけであるし、『原色の赤』=『血で塗りつぶされている』と書いていしまうと表現において違和感が出てしまう。その点において、この倒置がちゅうぶらりになってしまっているのが残念かと思った。
□名無しさんからの批評 (2003/12/11 01:07) フォント
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惜しい、という感じですね。最後の段落が物足りないと感じました。
おそらく中心となるべきは、教師が良君の絵をおかしいと言って認めないことではなく、良君の心の中のほう、あるいは母親との関係におけるつながりのほうだと思うので、そちらをもう少し丁寧に書いてあると、たぶんもう一歩読者を踏み込ませる魅力が出てくると思います。
□名は無いさんからの批評 (2003/12/11 01:53) フォント
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私としては、何故良くんは影を赤く見てしまうのか、もしくは塗ったのかが気になったのに、心の傷一つで片付けられて深いところまで切りこまれなかったのが残念でした。
□名無しさんからの批評 (2003/12/13 01:00) フォント
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するりとテンポよく読みすすめられました。

単語選びには少々気にかかる部分があります。ひたすら「女教師」としたり、わたしが「あたし」になっていたり。

描いた絵の影が赤いというのの意味が掴みかねました。環境の影響で赤、夕焼けで赤、というには、タイトルにまでしている「赤い影」には足りない気がします。意味が三つないと、読後感として偶然で流れてしまいます。
□はるさんからの批評 (2003/12/13 19:39) フォント
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最後の一文が惜しい!と思いました。
「〜ような気がした。」なんて終わり方はずるいです。
あの「〜ような気がした。」というところこそ、もっと書き込むかあえて抽象度を最大限に上げるかしてほしかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/12/14 18:45) フォント
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話が完結してないように思え消化不良感あり。
□名無しさんからの批評 (2003/12/16 03:40) フォント
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最初読んでいると、良はイジメでも受けているのかと思いました。
にしても酷い教師もいたものです。
□水夫さんからの批評 (2003/12/16 18:28) フォント
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一人称の不統一。

読者が気持ちよく納得できるような赤く塗った理由を示すべき。
□む。さんからの批評 (2003/12/17 12:47) フォント
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教師の言動に疑問を感じつつも、教師の言動はこの小説の本質からは外れると思うので、置いといて。

母子家庭は子供が不憫、という偏見を彷彿とさせる文章だと思いました。そのような偏見が現実にあるんだ、ということを敢えて訴えているのかもしれませんが、それなら尚更息子が赤い影を書いた理由を、文章中で明らかにしたほうがいいと思います。この文章では、息子が何故影を赤く塗ったのか、想像するヒントも見つからないです(私の探し方が拙いのでしょうか)。
母親と息子の会話がきちんと描かれているとよかったと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/12/17 22:15) フォント
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「父兄」等、差別用語は私、朝日新聞じゃないからいいんじゃないかな?(注: 父兄→父母)

しかし、赤い影の絵を描く子供というのが、いったい何を意味するのかが、見えて来ません。よって理解できず。読み方が浅いのかなあ?
母子家庭(正:ひとり親家庭)→不幸→子供が赤い影の絵を描くという意味ならダメでしょう。
□名無しさんからの批評 (2003/12/19 21:48) フォント
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読点の打ち方の問題なのですが、読むときに引っかかってしまうところがあります。
もう少し工夫すつと、もっと読みやすくなるかと思います。

私もなぜ良くんが影が赤く見えたのかが気になります。
なにかそこのところをもう一つ、説明があればもっと説得力があったかも。
□名無しさんからの批評 (2003/12/21 04:08) フォント
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赤い影というのが何か消化不良な感じを受けます。なぜ、息子は影を赤く塗りつぶしたのか、それを書き込まないことには、物語の深みというものが出ないように感じられます。また、その理由を伏線として、最初に示唆させておくと、もっと良かったのかもしれませんが。
□名無しさんからの批評 (2003/12/27 09:09) フォント
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赤だから何なんだ?
それだけです。
□セツナビトさんからの批評 (2004/01/10 09:12) フォント
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うーむ、どうしても教師の言動に引っかかりを感じます。どうしてその程度の理由で絵を飾らなかったのか? 影を赤く塗ったのも個性として受け止められなかったのか? そしてどうして影を赤く塗ったことを母子家庭であることに結びつけたり心の傷があるのかと疑ったりするのか? 終始その疑問が浮かんで物語がいまいち伝わってきませんでした。

他の方もいわれているとおり、なぜ良が影を赤く塗ったのか、明確な理由がないと全く納得できません。また、やはり母子家庭→不憫は、たとえ作者の方がそう考えているわけではなくこの教師の性格から出したものだとしても、そのまま放置して終了、はよくないと思います。そうではないことを知っているので。

文章がいい分、残念です。ネタをもう少し精査すればいい作品が出来ると思います。
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