「或る男の話」
柑橘
 私は小説家某が執筆している小説の登場人物だ。冴えない男だよ、私は。飽く迄も端役であり、その他多数に分類される側だ。……何? 一方的に作り出され、その行動を外から与えられるだけの私が何故、こうして自立し諸君らに語りかけているのかだって? そのような難しいことを私に聞いてくれるな。世の中はよくわからない物事の方が多いだろう。私もその一つだと思ってくれ。
 さて、私を生み出した小説家だが、某と称するのもいささか味がない。私は彼のことを敬意を込めて「虫」と呼ぶことにしよう。

 何故彼は「虫」なのか。少しその話でもしようか。
と言っても、実のところ深い意味はないのだ。「虫」は自分の作品にやたら昆虫を登場させる。例外はない。だから私は安直に、彼のことを「虫」と呼ぶ。私が登場する作品にも数多くの虫が登場する。そうだな、そこから少し引用してみよう。
『雌の尻から搾り出されたその卵はまだ湿り気を帯びており、てらてらと光を反射する。心地のよい雌の胎内に名残を残すかのように、卵からはつつつっと母の方に尻尾を伸ばしている。卵はやがて土気色の塊へと変身を遂げた。醜く固まったそれは、私の官能をくすぐる。螳螂の卵ほど卑猥なものはこの世にないだろう。
私は螳螂を求め、今日も闇に沈む街を漂う。その日ぶらりと足を向けたのは、しばしばモーニングをたしなむこざっぱりとしたカッフェだった……』

 ところで私は今、洒落たカフェテラスの一角で女との逢瀬の最中だ。「虫」が私にあてがった女だ。これが実にいい女で、青々としたすっと伸びた肢体に均整の取れた鎌、すこし面長な顔もまたそそる。私は女をいとおしみ、その体を優しく愛撫する。女が身じろぐ。彼女の膨らんだ腹がくねくねとうねり、私を受け入れる。
 しかしこの女がまた気まぐれで、私との逢瀬の最中にも関わらず始終辺りをきょときょとと見回している。まぁいい、女は時に気まぐれな生き物だからな。

 突然女が私の胸に食いついた。ああ! 何をするのだ! 私の叫びもむなしく、女はむしゃりむしゃりと私を食い続ける。くそ、油断した。
 気が付いてみれば私は食い尽くされ、女の腹の中に収まっていたのだった。そして私は肉体だけが消化され、女の体内で卵へと姿を変えていった。
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□名無しさんからの批評 (2003/11/11 11:55) フォント
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前半は良さそうな感触だったので期待したのですが、オチがあまりにありきたりな気がします。蟷螂→雌→雄を喰う、というのは誰にでも想像つくでしょうし。
せっかく「小説の登場人物なのになぜこうして語りかけているのか」という段があるのだから、小説家の思い通りの展開にはさせまいと抵抗するくらいのほうが面白いと思います。最終的に喰われてしまっても。
□水夫さんからの批評 (2003/11/12 17:04) フォント
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カフェテラスの一角で共食いが見られるって相当珍しいような。

蟷螂を求めてカフェに行くって、相当歪んだな世界観の小説ですね。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 22:55) フォント
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せっかく特異な状況を設定できたのに、それを生かせていないと感じました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:14) フォント
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個人的には受け入れにくい文章です。読者に何を期待させようとしているのかがわかりません。
小説家の事をわざわざ「虫」よ読んでいるのも、なんかちょっと無理を感じます。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:17) フォント
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↑訂正(誤字がありました)
個人的には受け入れにくい文章です。読者に何を期待させようとしているのかがわかりません。
小説家の事をわざわざ「虫」と読んでいるのも、なんかちょっと無理を感じます。
□匿名さんからの批評 (2003/11/14 02:52) フォント
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うわ、来ました、「起承転結」と書き分けられてるぅ。
じゃ、そこを突っ込ませていただきます。
「転結」の部分だけでストーリは完結しているかと。逆に云えばその部分だけでもう一度書けばもっとグロテスクなもの(そういう意図がなければ心外かと思いますが)に仕上がったかと思います。次回作、期待しています。
□名は無いさんからの批評 (2003/11/14 03:07) フォント
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こういう作風は好きなのですが、どうせ歪むならとことん歪んで欲しかったです。
読者に話し掛けながらカマキリの雌に食われるよりは、食えっ。そしてその光景の解説、といった感じでしょうか。(著者さんがグロテスクなのを好まない場合はごめんなさい)
□phさんからの批評 (2003/11/15 13:45) フォント
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話の筋が枝分かれして、そのまま放置されている気がします。前半でわざわざ作者のことを持ち出し、虫とまで形容したなら、後半にも何か絡めて欲しかったです。
いっそ素直に不思議な世界の中で完結したなら、ぞくぞくしたかもしれません。でもやっぱり、メスに食べられる、だけではありきたりかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 12:52) フォント
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なんか世界観というか伝わってこなかったです。
展開的にも『ああ、そうだね』って感じで意外さがなかった。
もう少し、とっちらかったパーツをかき集めて抑えてほしい。
□匿名さんからの批評 (2003/11/16 20:20) フォント
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ごめんなさい、厳しい批評で。
実は、何も伝わらなかった。
作者が出て来る意図も、さらにそれを「虫」とよぶ必要も。メスに誘われオスが食べられる話なら、虫で書くとあまりに自然の摂理。で?という感じでした。
意外性狙いだったのかな。狙いを探さなければいけない、バラバラの文章に感じてしまいました。どこかひとつの視点から、もっと深く書いた物を読んでみたいです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/22 04:48) フォント
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すいません。爆笑しました。
なんと緊張感の無いことか。
最後、「結」の段落ですね。なんとコミカルに喰われることか。その白々しさ。まるでニコニコ笑ながら喰われていくかのような場面を想像してしまい爆笑してました。

構成が特に酷かったです。
起、承、転、結が全てばらばらな感じ。まとまりが無く、段落が変わると同時にそのオチまで読めてしまう。『承』の部分の『』の部分はあまりにもダラダラとしていて話全体の質を下げているし、『転』に入った時の唐突さ。
『起』の出だしが非常に快活でワクワクさせられたぶん失望が多きかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/25 01:17) フォント
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全体的な表現としては、小説家某を「虫」と呼ぶくだりは必要無いような気もしますし、どうかと思う部分もありますが、冴えない男のキャラクターのコミカルな描き方が非常に良いです。
相手の女の描写も良いですね。キャラクターの表現力の素晴らしさに表現の評価を高くしました。

ラストは想像がつきましたが、個人的にはいつもオチで落とす作品ばかりでなくても良いと思いますので、これはこれで良いような気がします。

次回作が楽しみです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/27 04:33) フォント
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面白かったです。でも、「突然女が私の胸に食いついた」のあとで「私」の正体は虫だとわかったほうが、あれ? といった感じで面白いような気がしました。
 
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