「夏休みに」
紀伊楽
 このド田舎に引っ越してきてから三日、友達がいない夏休みは退屈だった。引っ越す前にケンちゃんからもらった手紙には『絶対遊びに行くからな』。冗談じゃない。こんな何にも無いところ、見たら絶対呆れるよ。
 晩ご飯を食べたあと暇を持て余してると、向かいに住んでる良一ってやつが虫かごをいくつも抱えて訪ねてきた。
「虫捕り行こうぜ」
 返事を渋っていると、母さんに、お友達作らなきゃ、と言われて、おれは無理やり送り出された。
 外は暗かった。街灯がぽつん、ぽつんとあるだけで、何の役にも立ってない気がする。そして静かだった。風も無い。しゃべるのをやめると音は無くなる。良一は怖くないのかな。小五だっけ。一つ年上なだけで、なんだか大きく見えた。暗いね、とおれは言った。
「そう?」良一は答えた。「普通じゃん」
 これが普通? 辺り一体停電みたいだ。
「ついたよ。ここにカブトムシがいっぱいいるんだ。ほら」
 良一が一本の木を差した。その先で大きな角のカブトムシが二匹取っ組み合っていた。
「すごい。初めて見た。ケンカしてるの?」
「うん、捕まえよう」
「え? 虫捕り網は?」
「素手だよ、素手」
 にかっと笑った良一は、やっぱりなぜか大きく見えた。
「ちぇー、小さいや」
「これで小さいの?」
「もっと大きいやつ見たことあるんだ」
 かごに入ったカブトムシをまじまじと見た。触るのはちょっと怖い。良一、これを捕まえたんだ。
「ほら、お前も探せよ。大きいやつ」
 慌てて立ち上がって、手当たり次第に暗闇に目をやった。ふと、何かが木の幹で動いた気がして、目を凝らした。いた。
「大きいよ、あれ」
「どれ? ――ほんとだ、大きい。おまえ捕まえるか?」
 首をぶんぶん横に振った。無理。
「しゃあねえな。よっしゃ」 
 良一は忍び寄って簡単に捕まえた。
「おまえにやるよ」
「え? 良一が捕まえたんだよ」
「おまえが見つけたんだから」
 良一はカブトムシを差し出した。「触ってみろよ」
 怖かったけど指でそうっと突っついてみた。大丈夫。撫でてみた。不思議な、つるつるでもさらさらでもざらざらでもない、初めての感触。ずっと触ってたくなった。
 帰り道、虫かごの中のカブトムシと良一を交互に眺めていると、田舎もいいかも、なんて思えてきた。
 その日、おれはケンちゃんに手紙を書いた。
『絶対遊びに来いよ。おれの友達と一緒に、虫捕りに行こう』
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□名無しさんからの批評 (2003/11/11 13:42) フォント
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こういう物語はとても好きなのですが、ともすればありがちになってしまいます。
舞台がどこだか解らないのですが、都会から田舎へ引っ越したのであれば、もっと色々とカルチャーショックがあるはずです。良一が方言をしゃべっていて言葉が通じにくかったり、そんな中でようやく言ってる意味が解ってきたら、街灯がほとんど無いことや、カブトムシが大きいこと、素手で捕まえることだけではなく、もっと都会の子が絶対に知らないようなことを教えてくれたりとか。そのカルチャーショック(主人公の感動)をどれだけ具体的に書けるかによって、最後の一行が効いてくるのだと思います。
□水夫さんからの批評 (2003/11/12 17:43) フォント
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さすがに事件がなさすぎる感じがします。描写だけで読ませるにはちょっと厳しい内容です。
□匿名さんからの批評 (2003/11/12 20:24) フォント
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プロットのきちんとしているし、物語の筋をきちんと通ってる。主人公の成長なんかも感じられる。うーむ、学校等で要求される文章としてはもう非の打ち所がないかと。ポイントはココでは、読んでいただくというスタンスで行かないと、または楽しませるというスタンスでもいいかと。基本的な事柄は私が口を出すことは一切ない、完成された形だと思います。あとは読者をどう引き込むか?これが出来れば、もうOKなのではないでしょうか。次回、期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:37) フォント
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 「友達できておめでとう。よかったね」以外の感想が何一つ浮かびません。それが狙いなのかもしれませんが、読んでて思考停止に追い込まれるようで、頭が悪くなりそうで嫌でした。
□匿名さんからの批評 (2003/11/13 11:39) フォント
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破綻など一切ない所は、私にはできない事なので、こういう文章を書けるというのはとても羨ましいです。
それを承知で私が書くとなると揚げ足とりになってしまいますが、「ド田舎」という表現、ここだけが気になりました。次回作、期待しています。
□名は無いさんからの批評 (2003/11/13 21:07) フォント
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ほんわかしてるとも言えるし、インパクトが無いとも言えるし、私にはそこは感想の部分でしょうから省くとします。
小学生の主観で進むのならば、もう少し主人公のわくわくした気持ちをうまく表現できたら良かったと思います。なんだか、味気ない気がしたので。
□名無しさんからの批評 (2003/11/13 22:57) フォント
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夏休みの宿題日記という感じ。
二人の男の子のどっちかでも魅力的な性格にしてあげればよかったのでは?二人共普通すぎます。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 13:37) フォント
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いいですね。最初の田舎を嫌がる気持ちの心境の変化。見事に書けていると思います。

ただ、惜しまれるのはカブトムシの描写があまりなかったこと。何を、どこが不気味に感じたのか。そして、触っただけで気持ちが変わっていますが、カブトムシの何に惹かれて怖くなくなったのか、とか。
少し会話文を減らして書いても、これらを上手く入れると、効果的になったと思うのですが。
□phさんからの批評 (2003/11/16 19:12) フォント
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ほのぼのしました。いいですね。
ただ、ストレートに虫捕りの描写だけに留まってしまっていて、ありきたりなお話にまとまってしまっている気がします。
もう一つ深みを出して欲しかったです。
□匿名さんからの批評 (2003/11/16 22:43) フォント
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こういう作品を読むと、自分が生まれ育った田舎を思い出します。家の前は田んぼが広がっていて、20分ぐらい歩くと裏山があって、カブトムシが捕まえられたりするんですよね。懐かしいなぁ。
ストーリー的には、都会っ子が田舎もまんざらではないよな、と思った瞬間が上手く捕らえられていると思います。
ただ、それだけではありがちで平凡な話に過ぎないです。どんな田舎に引っ越してきたのかという描写がもっとあると、ギャップに馴染んでいく主人公のちょっとした成長がより明確になるかな、と思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/17 10:36) フォント
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なんかね、評価を見れば?と思われるかもしれませんが、そんな感じです。
此処を分析すると『どうかな?』と思うのですが、トータルだと『よかった』になてます。
いや、こういう作風が好きなだけかもしれませんが・・・
□名無しさんからの批評 (2003/11/17 11:28) フォント
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そうだろうなぁと思って読みましたが、後に感想を聞かれたら何もないといった感じです。書き出しは悪くないのですが、中盤の文章が口語体になっているのが気になりました。後半も、ありがちですがうまく纏まっていると思います。後はもう少し書く練習ですか。次に期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/11/18 22:26) フォント
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全体的にはありがちで単調です。オチもないし。
文章は読みやすかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/19 22:47) フォント
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好きです、こうゆう感じのお話。
でももうちょっとカルチャーショックは大きいんじゃないかなぁと思います。
引っ越し先がどれほどの田舎かはわかりませんが、辺り一体停電みたい、カブトムシがいっぱいいるなどのことから、かなりの田舎だと思いますので。
□名無しさんからの批評 (2003/11/24 10:57) フォント
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総合的には、(文章力皆無の僕が言うのもなんだが)なんだか、国語の問題集に出てきそうな文章ですね。
会話が自然だったり不自然だったり。でも読みやすかったです。「辺り一体停電みたい」とかも、田舎の描写ができていると思いますし。
もっとイベントと、書き出しの引き込みが欲しいですね。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 05:08) フォント
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ごめんなさい。カブト虫やクワガタは、夜のうちに木に砂糖水や蜂蜜を付けておいて、朝早いうちに群がっているのを取りにいくイメージがあって、晩ご飯の後というのにすごく違和感を感じました。
自分で取っていたわけではないので、想像の域を出ませんが。

お話としては、田舎暮らしもそう悪くないと思えたほほえましさが出ていて良いと思うのですが・・・。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 16:32) フォント
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普通に面白いと思います。
後は何か盛り上がりやどかんと来る何かがあればもっといい、ような気がします。
□名無しさんからの批評 (2003/12/07 19:42) フォント
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「おれ」という一人称で感じた幼い少年の背伸びと、ケンちゃんにこんな田舎に引っ越したことを知られたくないという子供ながらの見栄が冒頭に持ってきてあって、最初から引き込まれました。けれど、そんな少年が田舎の良さに触れ、背伸びをしない等身大の自分に戻っていくという展開が清々しくて好感が持てます。

 偉そうな言い方をさせてもらうと、発想や表現はまだまだでも、全体的にグッとくる作品です。
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