「優しさと笑顔の理由」
遊木 薫
 どうして男の子ってこんな物が大好きなのかさっぱり解らない。お菓子のオマケのフィギアを大事にガラスケースに飾るなんて。
「一也くんも好きなのかなあ?」
そんな事を考えながら本物と間違うくらい精巧なフィギアを1個取り出した。
「そうだ!いい事思い付いちゃった」
 私はソレを握り締めて弟の部屋を出た。

 誰もいない放課後の教室を、夕陽が大きな三角形で染めていた。いつもは仲良し3人組みでこの時間までおしゃべりをしている。しかし今日は「用事があるの」と言って、早めに下校した。その後で「忘れ物したから」と、用意した台詞を言って戻って来たのだ。
「カバンを置いて、コレを置けば準備完了」
 昨晩から何度も繰り返したリハーサル通りに準備する。グラウンドからは運動部の掛け声が響いてくる。
「うまくいくかなあ……」
 不安な気持ちで夕陽を眺めていると、聞きなれた足音が廊下の奥のほうから聞こえてきた。この足音は間違いなく一也くんだ。深呼吸をしながら、何度も練習した台詞をもう一度確認する。
 予想通り一也くんが教室に入ってきた。
「あれ、こんな時間に1人でどうしたの?」
 不思議そうな顔で聞いてくる。
「忘れ物を取りに来たんだけど、カバンの前に虫がいるの。どうしよう……」と、リハーサル通りに少し泣きそうな顔をした。
「何?どこにいるの?」と言うと、私のカバンの前に置いてある虫を、思っていたよりも優しい手付きで机の上から払い落とした。
「これで大丈夫だよ」と、私のカバンを軽々と持ち上げた。私の為に虫を退かしてくれたり、殺さない様に優しく払い落とす姿を見ると、もっと大好きになってしまう。
「一也くんがいてよかった、ありがとう!本当にどうしようかと思ってたの」と言って、リハーサル以上に嬉しい声で喋りはじめた。

「こんな時間だけど大丈夫?」
 気が付くとすっかり陽が落ちていた。暗いから駅まで一緒に帰ろうという事になった。正門近くで一也くんが「忘れ物を取ってくる」と言って、校舎に急いで戻っていった。
「忘れ物はあったの?」
「大丈夫、まだあったよ」と、笑顔で答えてくれたので私も自然と笑顔になった。
「じゃあ、帰ろうか?」と、足早に歩き出した一也くんの左側を慌てて追いかけた。
『これが切欠で付き合う事になったら……』
 そんな虫のいい事を考えながら、ずっとポケットに手を入れた彼の左腕を眺めていた。

 一也は。帰宅すると部屋へ駆け上がった。
「これでやっと全部そろったよ!」
ポケットから出した『忘れ物』を、ガラスケースの唯一の空きに優しく置いて笑った。
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□名無しさんからの批評 (2003/11/11 13:56) フォント
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虫のフィギュアで虫の良いことを考える、と。テーマの消化の仕方がとても面白かったです。
文章は読んでいて多少引っかかる点もあったのですが、主人公たち(推定:小学校高学年か中学一年生くらい)の年代にありがちな、女の子がませているのに対し男の子はまだまだ子供、というような空気もうまく書けていて、こういう作品、とても好きです。
タイトルをもう少しやんちゃな感じにしたら、より面白かったかもしれません。
□匿名さんからの批評 (2003/11/12 15:53) フォント
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うわー、コレ好きです。と、感情は押さえてと。構成も素敵だし、展開も早い。ううむ。真似できません。次のお話が楽しみです。
□水夫さんからの批評 (2003/11/12 18:15) フォント
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綺麗にまとまっています。彼女の無邪気な残酷さが気になりますが、きっと後で姉弟喧嘩があったのでしょうね。

切欠って表記、文章の中では初めてみました。ひらがなに開く方が好みではありますが。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:46) フォント
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僕が頭が悪いんだと思いますけど、一読してラストが良くわからなかったんですよ。全部そろったって笑顔じゃなくて、「彼女、こんな小細工してかわいいな、クスッ」と思う笑顔だったら理解しやすかったのですけど。
□名は無いさんからの批評 (2003/11/13 20:43) フォント
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若いのに将来有望な娘さんですね。弟さんも可愛そうに。きっとこの先苦労させられるんでしょう。などと、勝手な想像を膨らませてみました。

文章の方ですが、私としては文中のいくつかの表現に引っかかりを覚えました。例として、最初「私」の一人称として始まるのに、終盤になって「……リハーサル以上に嬉しい声で喋りはじめた。」といったところや、「切欠」にも違和感を感じました。漢字を使う効果があったのか私には疑問でした。
□名無しさんからの批評 (2003/11/13 23:22) フォント
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ダメですよ、弟のモノをだまって持ち出しちゃ。
ひっかかる事が…
冒頭で「一也くんも(フィギア)好きなのかなあ?」と言っていた彼女なのに、何故、一也くんがフィギアに気付かないかも?と思ったのでしょうか。
「切欠」には違和感あり。
□phさんからの批評 (2003/11/16 19:33) フォント
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恋に夢中な少女と、子供っぽい少年のほのぼのとした一幕ですね。
具体的に年齢が書かれていませんが、私は小学生を想定しました。

切欠は私も引っかかりました。ほのぼのとした世界観なので、わざわざ漢字を使わなくてもいいと思います。
□匿名さんからの批評 (2003/11/16 23:08) フォント
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「私」と「一也」の意識のズレが面白いですね。彼女は必死なのに、彼の方は虫のフィギュアにしか興味がない。しかもこの二人の駆け引き、結局は彼の方が勝ってますよね。彼の方には、駆け引きなどという考えは微塵もないのでしょうが。
「私」の発想が根本的に幼いのも印象いいです。

こういう女の子、身近にいても好きになれなさそうです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/17 11:38) フォント
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なんだかよくわからない話です。私の読解力不足でしょうか。
倒置法の失敗しているような文章も目に付きました。
最後、「一也は。」というところ、「。」なんですか?それとも間違い?
□名無しさんからの批評 (2003/11/19 22:36) フォント
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ちぐはぐさが子供らしい雰囲気を出していて良いのかも。
「私」の勝手な想像と「一也」の無邪気さと、上手く噛み合ってると思います。
切欠、これはわざわざ漢字にしなくても良かったのでは?
□名無しさんからの批評 (2003/11/29 22:30) フォント
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 わざわざ「」でくくって会話文にしなくてもいいと思うところが目立ちました。
『「一也くんも好きなのかなあ?」そんな事を…』の部分は、せっかく一人称で書いているのだから、もう「」を取ってしまってそのまま「一也くんも好きなのかなあ。そんな事を…」の方がいいかと。『しかし今日は「用事があるの」と言って』は「しかし、今日は用事があるからと言って」の方がベターだと思うし。細かくてすいません。
 切欠は私も気になりました。字数の関係だったのでしょうか。たとえそうであったとしても、上手く調節をして、そこは「きっかけ」にした方がいいですね。
 ただ、放課後の教室の描写がいいです。夕陽が射しこむ教室がリアルに浮かんできました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 14:30) フォント
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発想が面白いですね。構成もしっかりしていますし、伏線も上手く利用していて良いと思います。
『夕陽が大きな三角形で染めていた。』は素敵な描写だと思いました。

表現で気になったことをいくつか。
冒頭の『お菓子〜』の文章は、『なんて』で締めることで説明的な印象を受けます。
弟の部屋を見回す描写と合わせればスムーズになるように思いました。

独り言の部分がちょっとわざとらしいような気がします。全部とは言いませんが、一人称なのですから地の文を利用すればもっと良くなると思いました。

ラストの『一也は』の後は読点ではなく句点で良いと思います。
『切欠』も「きっかけ」の方がすんなりするかと。

『リハーサル』は個人的には良いと思いましたが、多用しすぎな気がします。って、細かくてすみません。
本人は大真面目だけれど、傍から見たら滑稽なリハーサルというか、妄想が先走るもんだよなと学生時代を思い出してニヤッとしてしまいました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 14:41) フォント
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↑の評者です。

×読点ではなく句点で
○句点ではなく読点で

大事なところでした。失礼しました。
□匿名さんからの批評 (2003/12/04 13:42) フォント
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おもしろかった。幼くとも女心が出ていて。フィギアの虫をやさしく取り払ったのはわかるのですが、 後からわざわざ教室に戻るまでしなくても、そっとティッシュでくるんだ位にしてもよかったかも。その分の字和で、最後の締めをもう少し書き込めたかもしれませんね。
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