「虫」
長月
 私は虫が怖い。
いや、幼い頃はむしろ好きだった。新潟の祖父の家に遊びに行くときには必ず虫取りをしたものだ。まだ小さな私の手を引いて祖父は優しく私に虫取りのイロハを教えてくれた。「見ててごらん。ユウちゃん。これはこうして取るんだよ。」
 どうして私は虫が怖くなったのだろうか。田舎にもいつの頃からか忘れたが行かなくなってしまった。大好きな祖父の顔ももう忘れてしまった。
 そうだ。確かあれは最後に祖父の家に行ったときのことだった。ひどく暑い日で朝から山を探索していた私は真っ赤に日焼けして皮膚が燃えるような気がしていた。
 母にいつも言われていた
「外に出るときは帽子をかぶるのですよ。」の言葉をうっかり忘れて私はピンクのワンピースを着て外に出たのだった。
 太陽が真上からさんさんと降り注ぐ。はしゃぎすぎた私はとても疲れていた。お気に入りのワンピースが汚れることもかまわず太陽の光にくらくらしながらに地べたに座り、少し休憩をした。
 とめどなくあふれ出す汗を土にまみれた腕で拭いセミの合唱を聞いていた。これは、アブラゼミ。これは、ミンミンゼミ。これはクマゼミ・・・。
 セミの声のシャワーを浴びながら軽く陶酔していたと思う。気がつくと太陽はもう右の方へ落ちかけていた。
 帰らなくては。みんなが心配する。私は急いで立ち上がり、山を降りようとした。
 その瞬間、トンボが目の前を横切った。目の錯覚だろうがそのとき私にはそのトンボが虹色に見えたのだ。私は目を奪われた。条件反射的に体が動いた。
「捕まえなくては。」
 虹色トンボの後をそろそろと歩く。トンボが羽を休めたときがチャンスだ。私は心臓が飛び出すのではないかと思うほどドキドキしていた。
 大きなハスの葉っぱに止まったトンボに気付かれないように網を振り上げた。そして思い切り振り落とした。捕まえた!
 喜びながら網の中を見る私。けれどもそこには見たこともない生き物がいた。元、トンボの姿をしていたもの。頭が千切れたトンボの胴体が。
 ここから先の記憶がない。ひょっとしたらもう思い出せないほうがいいのかもしれない。
 私は虫が怖い。
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□名無しさんからの批評 (2003/11/11 14:11) フォント
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せっかく「頭が千切れたトンボの胴体」というショッキングな題材を扱っているのに、そのショッキングさを活かしきれていないような感じがしました。
「どうして私は虫が怖くなったのだろうか」〜「そうだ。確かあれは」という展開も白々しく、単純に「あの日から私は虫が嫌いになった」という展開で良いと思います。トンボを捕まえた後の記憶も、頭の千切れたトンボを見たショックや、母の言いつけを守らず帽子をかぶらなくて日射病になったり、トンボを追いかけたせいで迷子になって帰れなかったり、お気に入りのワンピースをだめにしてしまったりという具体的に想像できそうな事がたくさんあるのに、「記憶がない」の一言で終わるのはもったいないです。トラウマになるくらいの衝撃が欲しい。
□phさんからの批評 (2003/11/11 23:46) フォント
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虫が怖い、の理由の描写が淡白で、物語として盛り上がりに欠けると感じました。
前に持ってきて強調した分、展開に期待してしまったので残念でした。
□名は無いさんからの批評 (2003/11/12 05:52) フォント
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話の印象としては「尻切れトンボ」といったところでしょうか。1200文字では収まらなかった物語な印象を受けました。
色々と伏線を消化できていない部分があると思うので、話の流れで何が必要かそうでないかを考えてみると良いかと思いました。
□水夫さんからの批評 (2003/11/12 18:17) フォント
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オチが弱いですね。前半で文字数を使いすぎているのも一因でしょう。

ところで私は、顔に降られて以来カエルが苦手です。
□匿名さんからの批評 (2003/11/12 21:12) フォント
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美しい虹色のトンボが自らの行為によって一瞬にして、コドモにとっては「怪物」になってしまう。という結末と思っていいのかな。
さて、文章ですが、表現手法はとても気にいりました。おしむらくは、結末。ここをもうちょっと重みのある表現にしてみれば、読者を引き込むかと思われます。1200字というのは、最初で読者をひきつけ、最後に読者を突き放すという感じがいいのかなあ。あ、これは自省をこめての意見です。次回作、期待しております。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:49) フォント
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その後が、その後がほしいなぁ。
□名無しさんからの批評 (2003/11/13 23:37) フォント
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虫が怖いのはわかりましたが、もっと見せ場が欲しかったです。
それと、会話文の最後の句点は省略するものですよ。
□匿名さんからの批評 (2003/11/16 03:12) フォント
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頭の取れたトンボ、確かに幼い子供には衝撃的かもしれません。でもそんなにトラウマになる程怖かったんだろうか? という疑問が残る描かれ方でした。前半をもう少し削ってでも、後半の頭のなくなったトンボを目の前にした私はどうなったのか、その辺りの描写が詳しく描かれていた方が、物語として盛り上がると思いました。

頭の取れたトンボの不気味さは凄くわかるんですけどね。この文章からは、それがトラウマになる程怖い代物だとは思えないのです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 13:49) フォント
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圧倒的にオチが弱いですね。必ず虫取りをしていた少女にしては、頭の取れたトンボだけで記憶がなくなるほど怖がるものだろうか、と。

あと、描写は良いと思うのですが、あまりにも使い古された表現が多いと目に付きました。何か、表現方法で勝負しているような感じを受けましたので。

いきなり、トンボがハスの葉に止まっているのも気になりました。もっと、トンボについても描写を濃くしないと、このオチでは印象に残らないと思うのです。このトンボがどれだけ美しかったのか、どれだけ手にしたかったのか。そういうのが書けていれば、頭が無いというオチでも良かったのかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 13:50) フォント
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淡々と進んでしまい何か感情移入できませんでした。
消えた記憶に千切れたトンボ以上の思い出したくない記憶が想像できません。
『普通にその後倒れただけでは?』と思ってしまいました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/19 16:04) フォント
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「虫が怖くなった理由」ですね。
「ここから先の記憶がない」という言葉に説得力が全然無い。虫が怖い理由が弱い。
□名無しさんからの批評 (2003/11/19 22:29) フォント
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私も虫は嫌いですが、いつから嫌いになったのかは覚えていません。
子供の頃体験した恐いことは、成長するに連れて「どうしてあんなことで」って思うことは多いので、こんなトラウマも有りだと思います。
ですけど、ちょっと弱いかなぁと思います。
これだと説得力がちょっと足りないと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 13:07) フォント
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 冒頭と文末を同じ文章にするのは、このくらいの長さがベストですよね。フランスの音楽で多用されている形式だと思います。

 深読みかもしれませんが、私は単純に頭のちぎれた虫が気持ち悪くて虫嫌いになった訳ではないと思います。手を伸ばしたくなるほど美しい虹色のトンボが、手を伸ばした瞬間見るも無残な汚らしいものに変わってしまったこと、つまり「美しいもの→醜いもの」に一瞬で変化したことに衝撃を受けて、しかもしれは自分の手によってそうなってしまったことでトラウマになってしまったんじゃないかと思います。

 ただ、『ここから先の記憶がない』はどうかと。そうなってくると、そこまでの衝撃だったのかと考えてしまいます。個人的には「ここから先はもう思い出したくない」にした方が潔くていいです。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 14:47) フォント
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基本的なことですが会話文の締めくくりには句点は必要ありません。

冒頭と文末に同じ文章を持ってくるのは、よっぽど上手くやらないと難しいと思います。効果が感じられませんでした。
上手くやるってどうよと言われると、具体例が提示できないので私の文章力に問題があって申し訳ないですが。

虫が怖くなったきっかけになった事件がどうもしっくり来ないです。子供って結構残酷なものだと思うのですよ。
個人的には、昔虫取りをしていたような子供ならば、頭が千切れたトンボくらいでそんなにビビらんだろうと思ってしまうのです。

帽子を被り忘れたがために日射病になった(もしくはなりかかった)のはわかりますが、母のセリフとその後の私の行動が合っていないですね。
「遊びに行くときによそ行きのワンピースを着るな」もしくは「持っている帽子に不釣合いなワンピース」のような意味が言外にあったことは想像できますが違和感を感じました。

ラストの『ここから先の記憶〜』は自己完結してしまっていて読者が置いてけぼりになるような気がします。
□匿名さんからの批評 (2003/12/04 13:47) フォント
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これ以上思い出さないほうがいいエピソードが要りますね。しりきれとんぼ。残念。
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