「きっかけ」
恩田あい
 美希と光一は、その日連れだって光一のおすすめだと言う場所に向かっていた。二人の周りには、のどかな田園風景が続いている。
 二人はただ黙々と歩みを進めていた。
 光一の誘いで連れてこられた美希は、もう先ほどから一言も言葉を発しない。
 「どこまで行くの?」「あともう少し」という、そんな会話さえ不毛に思えるほど、田んぼばかりの風景は相変わらず続いていた。
「ねぇ」
 美希の問いかけに、光一はうんざりした顔で振り返る。
「ちょっと休ませて」
 光一の答えも聞かず、美希は道路脇の大きな岩に腰掛けた。
「……おっかしいなぁ。道はあってると想うんだけど」
 ぶつぶつと呟く光一の言葉を無視して、美希は駅前で買ったペットボトルに口を付け、光一に聞こえないように小さくため息を吐くと、空を仰いだ。
 息を吸うと冷たい空気が、肺を満たす。
 どこか眠たげな音を立てて、一台の軽トラックが二人の前を通り過ぎた。
「あ」
 空を見あげていた美希が、小さく声を上げた。何事かと光一が見ると、嬉しそうに空を見ながら美希はある一点を指さした。
「見て、雪虫」
 美希が指さしたその先に、フワフワと白く漂う小さなもの。それは一見、綿帽子にも見える。
「知ってんの? 雪虫のこと」
「うん。学生時代に友達に教えてもらった」
「へぇ」
 しばらく沈黙が続いた。
「じゃぁ、知ってる? 雪虫を好きなヤツと見ると、幸せになれるって話」
「あぁ、そんなことも言ってたかな」
「じゃぁ……俺たち、一生幸せだな」
 風がもう刈り取られた田の上を通り過ぎ、雀が何匹か戯れながら二人の上を飛んでいった。
「うん。……そうかもね」
 光一は長く深い息を吐いた。
「ここでふられたら、どうしようかと想った」
 光一が手を差し出した。
「行こっか」
「道、わかるの?」
 美希の手を握りしめながら、光一は少しはにかんだように笑った。
「実は着くまでに言おうと思って、ちょっと時間かかりすぎた」
 馬鹿じゃないの、などと小さく呟く美希は、それでも微笑みながら立ち上がる。二人の上をフワフワと、白い雪虫が数匹、冷たい空気の中を漂っていた。
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□名無しさんからの批評 (2003/11/11 14:27) フォント
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ものすごく少女マンガ的なのですが、それはそれで良いと思います。雰囲気がある作品です。
結局二人の関係はどの程度のものなんだろう…という部分が曖昧だと思いました。前半部分ではマンネリ気味のカップルに思えたのですが、最終的にはどうともとれるので。意図的なのかもしれませんが、物足りなさを感じました。
□名は無いさんからの批評 (2003/11/12 05:38) フォント
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雪虫、見てみたいですね。新しい虫なのでしょうか?だとすれば良い発想だと思います。この世に無いものを想像できるのは私からすれば羨ましい限りですから。

細かいことを言うようですが、空を見上げるなら空と時間の描写が少しは欲しかったなと思います。晴れなのか、曇りなのか、雨なのか、雪なのか、それだけで雪虫が漂うこの作品のイメージが決まってしまうと思うのです。(ちなみに私は、昼の晴れ模様でした)読者任せで想像に任せるならばそれでも良いですが。
□水夫さんからの批評 (2003/11/12 18:29) フォント
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終わりの台詞の意味がよく分かりませんでした。雪虫は題材としては悪くないですね。既に知っている人が読むにはちょっと物足りないかな。
□名無しさんからの批評 (2003/11/12 23:59) フォント
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 隙間の多さが逆に作用しているような。もうちょっと会話でない言葉を多くして、気配のようなものを描ければ説得力があったと思います。
□匿名さんからの批評 (2003/11/14 02:30) フォント
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そういえば雪虫、最近みなくなりましたねえ、と感想を述べておいてと。表現に関してはかなり書き込んでいる印象を受けました。ただ、雪虫という素材が知らない人にも、見たことのない人にも分かるような、ロマンティックに?描写すれば、グッと内容に深みが出ると思います。次回作、期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 10:39) フォント
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内容はとっても素敵なんですが、読んでいて小説というよりシナリオみたいな感じがしてしまいました。会話と、動きの説明みたいな。

もっと誘って欲しいな。
そしたら、もっと入り込めるのに。

でも好きな作風です。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 13:35) フォント
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全体的な感じはすきなんですが2人の関係がはっきりしませんでした。
もう少し起伏があってもいいのかなと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 14:59) フォント
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雰囲気はのんびりした感じで良かったのですが、3人称の話を書きなれていない感じがしました。こういう作品では、1人称の方がよいのではないでしょうか?

「息を吸うと冷たい空気が、肺を満たす」のくだりなのですが、これはきっと、美希の感じたことなのでしょう。それならば、改行はいらないよなぁ、とか、そういう書き方が上記の理由でもあります。

また、その次の「どこか眠たげな〜」のくだり、および「風がもう刈り取られた〜」のくだりについて。どうやら無理に入れている気がします。と、いうのも、物語の情景に何の効果も生んでないからです。例えて言うと、会話文の羅列にこだわり、煙草を何度も吸う主人公、のような。

情景重視ならそのように、物語重視ならそのように、と、メリハリが必要なのかもしれませんね。
□名無しさんからの批評 (2003/11/16 15:00) フォント
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↑すいません。誤字ありました。

× 会話文の羅列にこだわり
○ 会話文の羅列に困り

失礼致しました。
□phさんからの批評 (2003/11/16 19:46) フォント
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幸せな瞬間の描写、素敵です。
もう一癖欲しかったところです。ただのちょっと良い話で終わってしまいました。
でも雰囲気はとても好きです。

あと、雪虫っているんですか?雪みたいにふわふわしてる虫?
□匿名さんからの批評 (2003/11/17 01:04) フォント
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「雪虫」が何なのか、思わず調べてしまいました。
いい意味で少女漫画チックだと思います。話の流れとしてはありきたりな気もしますが、「雪虫」というアイテムが効いてると思います。
風景の描写は凄く好きなのですが、二人の人物の関係がイマイチ伝わってきません。会話と情景描写が両方とも中途半端なせいかもしれません。会話の文章が主観的過ぎてわかりにくいのも一因かと思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/11/19 15:28) フォント
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光一の気持ちがもう少し語られてもよかったと思います。
雪虫の言を学生時代に友達に教えてもらったと言ってます。彼らは20歳前半なのでしょうか?だとしたらなんだかイメージが狂います。私の中での彼らは中高校生かなーという感じの内容だったので。
「学生時代」と言わずに「昔」として彼らの年をもう少し若くした方が個人的には好みです。
雪虫以外は、印象に残らないお話でした。
□名無しさんからの批評 (2003/11/24 15:23) フォント
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 こういう話はもっと情景描写がほしいです。あと、もう少しの心理描写と。会話と状況説明に終始しているのが物足りなさの原因だと思います。会話分が多いのも、文章のリズムを乱しているように感じます。
 沈黙が続いた後、『じゃぁ、』『あぁ、』『じゃぁ……』と、同じ韻で始まるのも違和感があります。あと一工夫ほしいところです。

 これはもう完全な好みかもしれませんが、変換の仕方というか、言葉の置き換え方というか、その辺でいくつか引っかかりました。『おすすめだと言う場所』→おすすめだという場所。『想うんだけど』→思うんだけど。『どうしようかと想った』→どうしようかと思った。根本的に『想う』の使い方が私の中で引っかかっています。細かくてごめんなさい。
□名無しさんからの批評 (2003/11/30 14:56) フォント
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まわりくどい告白ですね。個人的には社会人(と推測)にもなってこんなウザい男嫌だなあと思ってしまった。
という光一に対しての感想はさて置き。

おすすめの場所を探して(もしくは雪虫をか)、告白しようという舞台設定を考えるようなまめな光一が、疲れた様子の美希にうんざりした顔で振り返るのはどうもしっくり来ません。

地の文には良い描写もありましたが、会話文との繋がりが希薄だったかも。また会話文に魅力を感じなかったのが残念。

白い雪虫と空のコントラストを表す描写がありませんが、夕方から夜くらいの時間帯かと思って読みました。これは必要な描写だったのではないかと思います。
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