「君と枕と」
槇原 諒
 4年半使い続けた枕を、やっと捨てた。
 手紙も写真も裏庭で燃やしたし、指輪やピアスは箱に入れて庭に埋めた。こうでもしない限りわたしは忘れられない。これで全部、俊輔の影は消し去ったつもり。最後に未練がましいけれど、俊輔との思い出を書き出して、燃やしてしまえばいいだろう。

 俊輔との関わりはすべて枕というものに集約されるのかもしれない。良い枕をプレゼントしようと、デパートの最上階の雑貨店に行った時のこと。俊輔はその店のアルバイト店員だった。よくわかっていないわたしにパンフレットをかき集めてきてくれて、自分のものを選ぶかのように商品を選んでくれた。ラッピングも不慣れな手つきで丁寧にやってくれた。
「こんなプレゼントもらえるひとはいいっすね」
俊輔の笑顔がとても印象的だった。

 二度目に俊輔と出合ったのは学生街の居酒屋だった。サークルの飲み会も終盤に差し掛かった頃、隣の学生グループが店を出ようとしていた。その中に俊輔がいた。俊輔はわたしに声をかけてきた。
「この前はどうも」
半分忘れかけていたけれど、「…あの枕の」という言葉で、思い出した。
「あのときの店員さん?」
「俺、太田俊輔です。物理学科にいます」
「高橋美奈子です。工学部の3回生」
周りのみんなが面白がって俊輔をわたしの横に座らせて酒を飲ませた。
「美奈子とはどういう知り合いなの?」
真面目に答える俊輔が少しおかしかったのを覚えている。

 いつの間にかわたしは俊輔と二人きりにされてしまっていた。酔った勢いもあったのかもしれない。俊輔が突然わたしにキスをした。
「あれよりいい枕、今度プレゼントします」
こんなときになっても枕なのか。俊輔の真面目な性格に呆れたけれど、でもおかしくなって笑ってしまった。

 それからわたしと前の恋人は自然消滅し、俊輔と付き合うようになっていた。4年半、わたしたちは付き合っていた。結婚の約束もしていた。だけど、そんな日々も終わりを迎えた。俊輔がバイクの事故で死んでしまったからだ。四十九日を迎える頃、ようやく俊輔の思い出を断ち切ろうと枕を捨てた。涙を吸い続けた枕は染みだらけになっていた。

 さようなら、俊輔。
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□名無しさんからの批評 (2003/10/10 11:22) フォント
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枕というお題を「使って」書かれてはいますが、枕というお題を「生かして」書かれてはいないように思えて、ちょっと安直な感がありました。つまり、これを「枕というお題で書かれた話」という先入観なしで読んだ場合、「なんで恋人との思い出の品がわざわざ枕なんだ?」と思えるということです。
あと、疑問に思ったことを言うと、「4年半使い続けた枕を、やっと」とあるわりには、4年半というのは付き合った歳月そのままなのだから、結局は彼が亡くなってすぐに捨てているんじゃないか、とか。それと最初に、いきなり「良い枕をプレゼントしようと」と、「前の恋人」に対する記述も無いのに書いてしまっていて、説明が不足していると思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 13:48) フォント
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テーマに無理矢理沿わせているように思います。そのため全体的にこじつけっぽい。
二度目に俊輔と会ったところや、最後の俊輔が事故で死んでしまったというところの流れが急すぎる感じがします。

全体的に、もっと練って書くことが必要ではないかと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 19:56) フォント
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良い枕をプレゼントするという部分に現実性というか、真実味が感じられません。それだけでしらけてしまいました。
小説、というより映画や演劇も含めたフィクションというものはウソには違いありませんが、そのウソをどれだけ受け手が納得して受け入れられるかが、その作品の魅力の大きな要因となると思います。この作品では、枕以外の部分でも、その要因が希薄であると感じられました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 21:12) フォント
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恋人の形見を処分する。出来るようで出来ないことだと思います。未練がダラダラとくっついてきて。でも、その未練を断ち切るには形見を処分しなければならない……本当、つらいことだと思います。冒頭でそれが伝わってきて、続きを勢いで読みました。
俊輔が枕をプレゼントする場面ですが、「誰かのために(たぶん恋人)枕を買ってあげている人」という印象を主人公に抱いていたのだ、と私は思いました。二度目の出会いの際に言葉が出ているように。そうなら、主人公の当時の恋人への対抗心で枕を買ったのだろう、と。なんか俊輔がかわいらしく思えました。
後半の『それから〜』以降は、冒頭のシーンと絡めて書くとよかったかもしれません。思い出を書き綴りながらの独白とか。

雰囲気はあると思います。これからもがんばってください。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 22:54) フォント
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物語自体は割と好きなのですが、本当はもう少し長かった小説のあらすじを、大急ぎで語られただけというような感じがします。
字数が少ないので、もう少し言いたいことを絞って丁寧に書いたほうが良い作品になりそうな気がします。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 01:45) フォント
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『サークルの飲み会も終盤に差』と『し掛かった頃』が改行になっているのが気になりますが、きっと間違えたのでしょうね。
『良い枕をプレゼントしようと〜』の文頭に「友人に」や「彼に」といった主語を入れなかったのは意図的にでしょうか?
すべてに主語は必要ないと思いますが、ここは入れた方が良いのではないかと思います。誰に?と思ってしまいました。

それから最後のほうで『前の恋人』の存在が明らかになるのは唐突です。
「忙しくて睡眠時間もろくに取れない彼に、せめて良い枕をプレゼントしようと」のような伏線があればスムーズだったのではないでしょうか?
飲み会が「彼にかまってもらえなくて何となく出たような、気乗りのしない飲み会」という設定でも良いですしね。

『4年半使い続けた枕』は俊輔が買ってくれたのでしょうか?『あれよりいい枕〜』とはあったけど、俊輔が買ってくれた枕なのかどうかは読者にはわかりません。
いっそ冒頭の一文はなくして、枕一つにこだわる真面目な性格の俊輔とのエピソードを膨らませた方が良かった気がします。
そうすると『俊輔との関わりはすべて枕というものに集約されるのかもしれない』も一緒に削っても良いし。

テーマは『枕』ですが、そこまで連呼しなくても「枕売り場での出会い」や『あれよりいい枕』で、テーマは十分生かせていると思いますよ。
『4年半』や「枕を捨てるシーン」が、冒頭部と最後でだぶっているのも、ややくどい印象です。その辺も推敲して方が良いでしょう。
『さようなら、俊輔。』の前の段落は特にそう感じましたが、全体的に推敲してもっとスムーズな文章にすると良いと思います。

粗ばかり探しているようですみません。自分でも言い過ぎているかとへこんできました。
いろいろ細かいことを書きましたが、お話としては好きです。次回も期待しています。
□さよさんからの批評 (2003/10/11 13:09) フォント
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話の流れとして、「前の恋人」と言う設定が、ちょっと無理なんでしょうか。前の恋人のために枕を選んでいて出会ったとか、前の恋人と自然消滅する前に俊輔と出会ったとか。その話は省いて、俊輔と付き合ってた間の楽しかったことが書かれているとよかったのかなあ。
あと、4年半付き合っていた恋人が死んで、四十九日で遺品を処分できるでしょうか。文面から想像される主人公の性格から言うと、年単位でかかりそうな気がするのですけれど。
気持ちはよく表現されていると思うので、そのへんがちょっと心残り、です。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 13:32) フォント
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「あれよりいい枕、今度プレゼントします」
この台詞は上手いと思いました。
でもそれだけ。
話はよくある話でドラマチックじゃない。
冒頭の形見の品を処分している描写は死者との決別というより、分かれた男の物を処分するという感じの描写にしか見えませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 16:06) フォント
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落ちが唐突な気がします。
説明が足らない感じ。
もっと長い小説であればさらに面白いかもしれない。
□名無しさんからの批評 (2003/10/12 21:04) フォント
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物理学科とか工学部の説明はこの際要らないと思うので、もっと重要な部分に文字数を充てて欲しい気がします。「涙を吸い続けた枕」とまであるのだから、その辺をもっと表現して欲しい。
あまりにも唐突で悲しい終わり方なので、それまでが良かっただけに、残念です。死を書く時は、もう少し丁寧さが欲しいです。
□ともろさんからの批評 (2003/10/13 14:56) フォント
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「発想」:
枕でも何でも良かったような気がします。あと俊輔の死に、読者は陳腐さを感じずにはいられないと思います。

「構成」:
構成としては素晴らしいと思いました。一見、美しい思い出の羅列に過ぎないように感じますが、読むことで感情移入を助ける。

「表現」:
全体としてすこし工夫が必要だというか、普通すぎるのではないでしょうか。読者は読みながら、もうすこし緊張したいのではないでしょうか。

「総合」:
少々安直過ぎた感があります。テーマを活かす工夫をしてみてはどうでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 21:52) フォント
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たんたんとしてて、あまり印象残りませんでした。
構成が丁寧すぎる印象があるから、そう思うのかもしれないです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 23:57) フォント
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総合
「俊輔との関わりはすべて枕というものに集約されるのかもしれない」というくらいだったら、俊輔からもらったであろう「あれよりいい枕」の文章もあった方が、枕の必然性がでてきたのではないでしょうか?
バイク事故で死んだという事は、予期せぬ事故のはずで、それなのに4年半も付き合ってながら、四十九日で彼との思い出の品を処分できるものだろうか? と、思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 09:42) フォント
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文章の質が、短編の文字制限に合っていない気がします。長編ならこんな感じで良いのだと思うのですが、短編の枠に収めるならもっと削れる部分があるのでは、と思うのです。出会いの場面が充分過ぎるくらい描写されているのにラストがあまりにあっけなく終わっていて、そこが勿体ない。配分を考えて構成しなおせばもっと深い小説になるのじゃないかと思いました。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 11:54) フォント
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1200字でやるにはつめこみすぎです。たとえば枕売り場の店員とのちょっと気の利いたやりとり、だけでも「小説」にできるかと。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 20:29) フォント
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テーマに拘りすぎているような気がします。
ストーリーも唐突過ぎるような感じがしました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 01:08) フォント
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いいなぁ、青春。全体の構成がまとまりすぎかも、うん。章のきり方は見習いたいです。読みやすい。テーマとの関連性を指摘する方もおられますが、まぁ、個人的には素敵だなあ。うんうん。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 01:43) フォント
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枕が一番思い出なのならば、その回想シーンを切り取って書いたほうがいいとおもう。
この作品だと枕というものがイマイチ生かされていないようで残念。
□名無しさんからの批評 (2003/10/17 20:25) フォント
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うーん。
出会いから付き合うまでについては事細かに書かれていますが4年半についてはほとんど触れられずいきなり死にオチとは何となく安易のような。
結婚の約束までしていた相手を亡くなってたったの四十九日で、「枕」を焼いてまで無理に思い出を断ち切らなくてはいけないのかもよく理解できませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 18:01) フォント
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 4年半付き合っていた恋人からもらった枕を四十九日過ぎて捨てるまで使っていたのであれば、恋人がこの枕をくれたのは付き合って19日目だったのでしょうか。粗探しみたいで申し訳ないですが、その辺の設定を著者自身がしっかりと把握しておかないと、読者も迷います。
 恋人が死ぬのではなく、失恋の方が良かったかもしれません。

 ただ『涙を吸い続けた枕は染みだらけになっていた』という文章で胸がぎゅうっとなりました。いいものは持っていると思います。頑張ってください。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 18:06) フォント
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先ほど批評したものです。誤字がありました。
×付き合って19日目だったのでしょうか。
○付き合って49日目だったのでしょうか。
読み直さず投稿してしまい申し訳ありません。
□名無しさんからの批評 (2003/10/22 00:38) フォント
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総合
よい枕をプレゼントするほどの仲の恋人とそんなに早く自然消滅するものでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/10/22 19:39) フォント
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総合
ストーリとしては好きです。
ただ、枕という題材を『付き合い始めた原因』としているだけで、
『物語の中心』ではない所が気になりました。
後は短い1200文字の中に押し込んでいるイメージを受けました。
『前の恋人』など、説明が不十分な所がありますが、削ってもいい所を探せば、文字数は足りるのではないかと思いました。
□匿名さんからの批評 (2003/11/04 12:53) フォント
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構成
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総合
俊輔との出会いのエピソードが長すぎて、主人公が恋人の死とどのように向き合い枕を捨てることにしたのかの下りがないので、「ふーん…」という印象しか残りませんでした。後、四十九日で思い出を断ち切ろうとするのも不自然です。結婚の約束までしていたのだから、思い出を断ち切るために枕を捨てる、というのはすこし安直な気がします。
枕をきっかけに恋人同士に発展するという流れはいいなぁと思いました。ストーリーの練り込みをもっとして欲しいと思います。
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