「枕」
七摘
 はじめてのひとりっきりの夜だ。
 大学生活を目前にしてワンルームのマンションに移ってきた。にもつを運び込んだのに、母とふたりで下見に来たときよりもずっとがらんとしているように思える。
 実家は小さくて、父と弟、母と私がそれぞれ一緒に狭い部屋で寝ていた。壁も薄くていつも父のいびきがうるさくて眠れなかった。でも今日からはひとりで寝ないといけない。
 新しいベッドを買った。本当は布団の方がよかったけど、この部屋には布団をしまうスペースはない。
「このさい枕も買いかえちゃえば?」
 母にはそう言われたけど、枕が替わると眠れない私は、古い枕を使い続けることにした。
 時計は十二時を回っていた。電気を消してベッドに入ったけれど、なにか落ち着かなくて寝付けない。なれない硬いベッドに、宴会でもしているのか隣の住人の騒ぐ声。今思うと父のいびきは合って当然のものだったのかもしれない。でも隣から聞こえる騒音はひどく耳障りだ。しばらく寝返りを打ってはため息をついていると、なんだか首や肩が痛くなってきたような気がする。なんだろう。ふっと思いついて起きあがった。
 やはり、それは私の枕ではなかった。まちがえて母の枕を持ってきてしまった。私のよりちょっと高くて硬いその枕。でもカバーは私のものだ。きっと洗濯したとき中身を入れまちがったのだろう。
 しばらく熟睡できないかもな。買いに行っても私に合う枕はなかなか見つからないだろう。しかたがない、明日母に電話して送ってもらうことにしよう。それまではこれで我慢するしかないか。
 そう思ったら母の顔が思い浮かんで、なんだか急に悲しくなってしまった。昨日までは母はとなりに寝ていて、たとえこんなふうに枕が入れ代わっていてもすぐに母を起こしてもとに戻すことができたのに。ただそれだけのために高い電話代や送料がかかるほど離れたところにいるなんて。
 涙がぽろぽろ、ぽろぽろ落ちてきた。
 母の枕をぎゅっと抱きしめた。小さいころは、父にひどく怒られたときや怖いテレビを見たとき、よく母にしがみついて寝ていたな。あったかくてすごく安心できた。
 そうだ、明日お母さんに電話して、この枕を使わせてもらえないかきいてみよう。首は痛くなるかもしれないけど、母のぬくもりがしみこんだこの枕があれば、落ち着かないひとりっきりの夜でもゆっくり眠れるかもしれない。
 また電気を消して、ベッドにもぐりこみ母の枕を抱きしめて眠りについた。母にしがみついて眠った昔を思い出しながら。
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□名無しさんからの批評 (2003/10/10 12:59) フォント
発想
構成
表現
総合
「実家は小さくて、〜眠れなかった」というのは実家にいた時の不満なので、「でも今日からは」とするのならその先は「ひとりで寝ないといけない」と思うよりひとりで寝られる喜びがあったほうが自然ではないでしょうか。また、枕が替わると眠れないのならばベッドに入った時点で自分の枕ではないことに気付くのでは?

少し引っかかるところはありますが、展開は良いと思います。

「ただそのために高い電話代や送料がかかるほど離れたところにいるなんて」というのは自分も一人暮らしを始めたときに思ったことなのですごく共感できました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 18:05) フォント
発想
構成
表現
総合
間違って持ってきてしまったいつもと違う「枕」を通して、不安で寂しい一人暮らしの初めての夜を描こうとした発想、というよりもテーマ選びがよかったと思います。(枕→一人暮らし→離れてわかる家族の大切さ、というテーマ構成になっているように私には読めました。)
また、ストーリの内容もとても共感しやすいもので、良かったと思います。

さて、私が悪いと思う点です。もっともひっかかるのは展開のぎこちなさです。それぞれの段落が繋がっていなくはないのですが、やはり滑らかとは言えない。おそらく、字数制限でかなり悩まれたのではないかとお察しします。これはただの私の思いつきなのですが、接続詞の使い方をもう一度考えなおしてみればうまくいくのではないでしょうか。

「うるさかったはずの家族」と「気付いてみれば大切な家族」というハイコントラストになるはずのものが明瞭になっていないということもこの物語の魅力を削いでいるように思えます。
対比、心情の流れ。この辺りがキーワードになるのではないでしょうか。

以上です。失礼します。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 20:02) フォント
発想
構成
表現
総合
文章を読んでいて「そうそう」と共感し、納得できる部分はたくさんありました。
でも、読み終わってみて「で、なんだったんだ?」という印象が残ります。母親の思い出?父親の思い出?それとも家族の大切さ?いったい何をこちらに思い起こさせようとしたのかがわかりませんでした。
□Rさんからの批評 (2003/10/11 06:16) フォント
発想
構成
表現
総合
良いと思います。
主人公の心情の変化を枕という道具を上手く使って描ききれていると思います。

しかし、上でも批評されておりますが、一人暮らしの初めての夜なのにはしゃぎや喜びといったものが無いことから、一般的な新入生の感情を捉えきれておりません。この感情があることにより、後半の寂しさと対比され、最後の枕を抱いて寝るシーンが際立ち、良い話となると思います。
さらには、筆者の方は推敲をされておりますでしょうか。平仮名でなくてもいい所を平仮名にしたり(2行目、にもつ)、誤字(15行目、合って)等。あまりにひどいと、せっかくのお話が台無しになりますよ?
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 11:29) フォント
発想
構成
表現
総合
テーマの活かし方が良いと思います。主人公にも素直に共感できて読みやすいです。
ただ、やはり上でも出ているように、一人暮らしを始める高揚感からホームシックへとストンと落ちていくほうが物語としては印象的になります。人の感情というのは実際にそういう急激な浮き沈みをするものなので、そのほうがリアリティもあると思いますし。
全体的にはとても好きな作品です。次回も期待します。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 13:43) フォント
発想
構成
表現
総合
読んでいてあまりにも文章の稚拙さが目に付きます。
『にもつ』は「荷物」に変えたほうがいいし、『実家は小さくて』という一文も『狭く』とかそういう表現のほうがしっくりきます。直後に『狭い部屋で』という表現があるからわざと『小さく』を選んだというのであればこの文章ごと変えてしまうべきだと思います。
とにかく、漢字で書いてあるべきところが漢字で書いてないというミスは気をつけるべきです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 16:15) フォント
発想
構成
表現
総合
厳しくてごめんなさい。何回推敲されたでしょうか。文章の荒さが随分目立ってしまっているように感じました。どなたかもおっしゃってるように、短い物語なのですから、漢字であるべき言葉が漢字でないと、読者に「わざと変換しないで何らかの意味を持たせているのかな」と思わせてしまいます。母の枕をぎゅっと抱きしめた時、お母さんの匂いや、泣いてた時に掛けられた言葉…そういうような、五感からの表現を入れると、枕のエピソードがもっと伝わってくると思います。全体的に「視覚的」な文章に感じました。何度か書き直しているうちに、思わぬ表現が見つかったりすると思うので、頑張れ!の意味を込めて、厳しい評価にさせて頂きました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/12 23:53) フォント
発想
構成
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総合
『にもつ』『きいて』『なれない』など、全体的に漢字にしても良いようなところを平仮名にしすぎているような。(これは個人的な好みの問題かもしれませんが)
『隣の住人』『隣から』は漢字で、『母はとなりに寝ていて』は平仮名なのは、あえて平仮名にしたのだとしても、意図は伝わりませんでした。

漢字を抑えたことも要因のひとつだと思いますが、それ以外にも『寝ないといけない』『すごく安心』『できないかもな』など、全体的に稚拙な表現が目立ち、大学生になろうかという年齢の主人公が幼く感じてしまいます。
子供に語らせて幼さを出す効果を狙っているのでなければ、年齢相応の表現を工夫した方が良いかと思いました。

『でも今日からはひとりで寝ないといけない。』からは、ひとりになって嬉しいのか悲しいのか伝わりません。「プライバシーが守られる一人暮らしを最初は嬉しいと思ったものの、眠る時に寂しさを感じた」という話なのだと思いますが、全体を通しても一人暮らしを喜んでいたという記載はなく、そこが曖昧になっているのが残念です。
最初に開放感を楽しむ表現があってこそ、ラストでの涙が生きてくるのではないでしょうか?

『いびきは合って』の「合」は誤字ではないかと思います。有無の「有って」もしくは存在するの意の「在って」では?正確なところは微妙ですが、これこそ平仮名でも良いところのような気がします。

『高い電話代や送料がかかるほど離れたところにいるなんて』は、「それほど離れたところにいる」と言いたいのはわかりますが小説の表現としては、もっと工夫して欲しい。

お話としては心温まる良い話でした。次回にも期待しています。
□ともろさんからの批評 (2003/10/13 15:24) フォント
発想
構成
表現
総合
「発想」:
枕を間違える、それだけで良いアイデアになるんだな、と驚きました。良い発想だと思います。

「構成」:
前半のテンポは良いと思いました。しかし、後半に入るとダレた感じがあります。オチがあるのかないのかを気にして読んでいるときに、「ああ、このまま終わるんだな」と予想されてしまいます。

「表現」:
起伏のない正直な文章といった印象を受けました。実直ではあるけれど、独自性は無い。遊びが無い。詳しい設定はあれど、感嘆するような情景描写心理描写が無い。

「総合」:
以上勝手な批評をしましたが、僕個人的にはかなり好きです。テーマを活かして遊びを加えてはどうでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 22:38) フォント
発想
構成
表現
総合
すらすらと読むことが出来ました。
ただ、『父のいびきは合って当然のものだったのかもしれない。』とあるように、家族にうっとうしさをかんじていたはずなのに、
嬉しさなどの感情が全く表現されていなかったのが気になりました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 23:31) フォント
発想
構成
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総合
素直に楽しかったです。
「文章力」という観点では優れてると思う。このテーマで書くとしたら、これ以上に付け足すところはないですね。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 12:06) フォント
発想
構成
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総合
好みな描写は見つけられず。共感も生まなかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 20:37) フォント
発想
構成
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総合
誤字や、漢字変換がやはり気になりました。
話は好みでないという私的な意見で申し訳ありません。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 04:23) フォント
発想
構成
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総合
読み進めて中盤にさしかかったあたりで、「この主人公は本当に大学生なのかな?」と思ってしまいました。家族のいない一人暮らしの淋しい一面や、それが枕によって呼び起こされていること自体はさほど不自然はないのですが、そもそも20前後の子にしては幼稚すぎるのでは、という違和感が先に来てしまいました。
そういう意味で、少なくとも同じく一人暮らしの大学生である私にとっては、共感出来る話ではありませんでした。

このような不自然さはやはり、主人公にプラスの感情が読み取れないためと思われます。上で、『さほど』不自然ではない、と言ったのはこのためです。大学入学という節目なのだから、一人で暮らしていく事への淋しさや不安を描きたかったのだとしても、プラス感情の描写もあって然るべきだったのでは。他の方も言われているとおり、それが書きたかった(と私は推測しました)マイナスの感情とよいコントラストを示したと思います。
あと、弟の描写があまりにないもの、気になるといえば気になります。(ここまで来ると粗探しのような気もしますが)後半に進むにつれ、主人公の感情が母親へと集中していくのですが、これは主人公にとって家族の中でも母への思いが強い、ということを意図的に示しているのでしょうか。いずれにせよ、感情の対象を母に絞る必要性はないと思われます。むしろ、それが先に書いた幼稚さを助長させている。

文章そのものは読みやすかったです。ただし、推敲不足はやはり感じられます。あと、もう少し個性を感じさせる描写も欲しいところです。読みやすくはあるけれど平凡、というのが正直な意見です。

テーマである枕と主人公の感情の結びつきそのものは、とてもきれいに処理されていると思います。色々と辛めに書いてしまいましたが、次の作品に期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 01:54) フォント
発想
構成
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総合
今までの家族の干渉からの抑圧の解放という感情が抜けてしまっているので(それがないなら離れて暮らす理由を書かないと解からないわけですが)リアリティーが希薄になってくるのだと思います。
最初から家族との関係を描くなら小学生の修学旅行とか、10代の子の友達同士のお泊まり旅行だとかという設定の方がこういう話内容にはあっていたかもしれませんね。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 01:59) フォント
発想
構成
表現
総合
あー、評者がガクセイ時代にこういう甘酸っぱい思いをしてこなかったせいか、憧れます。家族との絆を枕という道具を使って表現する。うん、いいなあ。小説が散漫になる可能性もありますが、他の家族、弟?とか妹?とか父とか?をさりげなく登場させ、生活感を表すのもよいかと。いいなあ、枕。次回、期待しています。
□名無しさんからの批評 (2003/10/19 16:56) フォント
発想
構成
表現
総合
 上の方で多かったひらがなについての意見はさほど気になりませんでした。
 表現のひとつとして、たとえばホームシックになってしまうほどの主人公の幼さを表しているのであれば、ある意味ひらがな表現は効果的かと思います。
 ただ、最後まで主人公の幼さしか目立たず、あまつさえ母親の枕を手元に置いておきたがるラストは、主人公の幼さだけが印象に留まり、現時点から動こうとしない主人公しか見えません。そこから、この枕でも眠れるようになろうだとか、これをきっかけに新しい枕にしようというラストであれば新生活に向ける主人公が生きると思いますが、これではあまえっこのままで、新生活すら拒否するような勢いに見えてしまうのではないでしょうか。

 表現は個人的に好みでしたが、文章の統一感がまだ足りない気がします。突然「寝ていたな」など砕けた文体になりますが、それがしっくりせずに浮いている感じです。これが溶け込むくらいの文章の流れになると良いなと思います。発想としては「枕が替わると眠れない」という一般的によく言われていることがテーマであるだけに、枕が出てくる必然性もあり、よかったのではないでしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/10/22 00:21) フォント
発想
構成
表現
総合
ところどころ誤字が目に付きますが、話自体はとてもいいと思います。
枕がかわると眠れないけど、眠れなくて構わないほど母が恋しいと言う気持ちが伝わってきます。
布団をしまうスペースがないからベッドと言うのがよくわかりませんが(布団は普段たたんでおけばベッド以下のスペースでたりると思うのですが)。
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