「僕の腕枕」
ひがさ
 彼女は、僕の左腕が大好きだと言う。誰の腕でもなく、僕の左腕の腕枕じゃないとダメだと言いながら今夜もこの腕にキスをする。
 初めて彼女を見た瞬間に、僕は恋に落ちてしまった。彼女はいつも暗い瞳をしている。むしろ、どちらかと言えば苦手なタイプだった。少し位はカワイイと思うけれど、何を考えているか掴めない子なのだ。
人の輪から外れて、いつもぼんやり空を見ていた。そんな彼女に何故か強く惹かれた。
多分一目惚れというやつだ。
 ある日、僕は彼女に声を掛けてみた。
「どうしていつも一人なの?」彼女は、やっぱりぼんやりと遠くを見ながら、昼食を取っていた。僕の言葉にあまり興味がなさそうに彼女は素っ気なく答えた。
「一人でもさみしくないから」僕は彼女らしい答えに思わず吹き出しそうになった。
「君と手をつなぎたいってこの腕が聞かないんだけど、僕はどうしたらいい?」彼女は、一瞬きょとんとしていたけれど、すぐに楽しそうに笑った。そして、僕の手をまじまじと観察するように眺めると、恐る恐る手を差し伸べて、僕の左手にキスをした。
いつからか僕らは一緒に暮らし始めていた。彼女は夜になると僕の左側に潜り込んできて左腕に口づけをしたり、軽く噛んでみたり、甘い愛撫を繰り返す。そしてそれが終わるとその腕に頭を乗せて丸くなって眠る。セックスがあまり好きじゃない彼女だったけれど、左腕の愛撫の気持ちよさに、僕は十分満足をしていた。
「わたしね、あなたの左腕に恋してるのかもしれない」彼女はいつになく真剣な顔で僕に話し掛けてきた。僕は笑いながら聞き返す。
「どうしてさ?」「だって、あなたの左腕が大好きなんだもの。一目惚れだと思うの。あの時、わたしと手をつなぎたいと言ってくれた時に、この腕だ!って感じたの。理由なんてないわ。」どうやら、僕の左腕といると、言い様もない安心感に包まれるらしい。僕が最初に感じた彼女への思いと同じようなもので、そういう気持ちに理由を探すなんて事はきっと無駄だと思った。
そして僕は自分の左腕に軽く嫉妬した。
 しばらくして、僕は何故か彼女の穏やかな愛が退屈になってきた。ある日誘われるままに、通りに立つ女を抱いた。僕の何かを解放してくれるような夜だったが、身体から得た満足感と彼女に対する罪悪感で悩んだ。僕の下手な嘘を彼女はすぐに見抜いた。彼女は別段怒った様子もなく穏やかにこう言った。
「あなたの左腕があればわたしは何もいらないの。ううん、むしろ左腕だけの方がいい。あなたはもう必要ないのよ」
そして、微笑みながら、手にした包丁で僕の胸を突き刺した。
その後はもう覚えていない。
彼女は血塗れになった僕の左腕に今夜も抱かれて眠るのだろうか。
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□さよさんからの批評 (2003/10/10 01:09) フォント
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こういう展開の話、とても好きです。一気に読めて、とても面白かったです。
□shintaさんからの批評 (2003/10/10 01:27) フォント
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渡辺浩弐のゲームキッズシリーズのような印象を受けたました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 20:05) フォント
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評価を低くしたのは、こういう内容が見飽きてしまっているからなんです。ネット上では良く見かけるような気がします。
ショックを与えてくれるなら、もっと激しくと思ってしまうのです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 21:56) フォント
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確かに、こういう話はよく見る気がしますね。ありきたりな展開だと思いました。
気になったのは彼女のキャラクターが統一されていない点。「暗い瞳」「掴めない」「素っ気なく」といった様子の彼女がいきなり「楽しそうに笑った」というのがあまりしっくりきません。また、主人公も「苦手なタイプだった」と言っているのに一目惚れ?

結末にもっと思いもよらぬ展開が欲しかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 23:02) フォント
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冒頭の一文で、結末が読めてしまいます。初めの段落は不要かもしれません。伏線は「僕」が「彼女」に声をかけるところくらいのもので充分だと思います。
だからといって面白くないわけではなく、こういった物語は個人的には好きです。今後も期待しています。
□Rさんからの批評 (2003/10/11 06:28) フォント
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話に関しては普通。よくある話といえばよくある話です。言い方が悪いですが、この手の展開は開拓し尽くされているのではないでしょうか。ご再考あれ。

それよりも気になったのは、「」の使い方。会話、台詞の後には文章を書いてはいけない。なぜなら、その会話と次の文章は必然的に違った内容になるので、改行は必須であります。また、物の名前などで「」を使った後に文章を続けることが多々あるので、是非避けてください。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 11:51) フォント
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ダークな感じがいいですね。文章もどこか無機質的で、ストーリーにあっていたと思います。現実にあったら怖いですけど。
冒頭部分を読んだ時点で、ああ、と何だか納得してしまいました。他の方も書かれていますが、よく見るタイプの話なので。たぶんラストは衝撃的なものだったはずなのですが、やっぱりそう来たか、と思ってしまいました。これが普通の子(明るい子)で、「僕」が気づかないところで左腕が好きだっていう匂いをさせていたなら、もっと驚きましたが。それじゃ構成がめちゃくちゃになるかもしれませんが。
あと、彼女の性格に一致がないのも同意見です。「」の使い方も気になりました。

意外性があればもっと面白かったのだろうと思います。これからもがんばってください。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 15:24) フォント
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ありふれていて微妙、キザ過ぎて厭味でした。
最初のうちはそれでも良かったけど、終盤が尻すぼみで内容が薄くなりすぎていました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 16:27) フォント
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最後の方が乱暴な感じがします。なんか無理矢理ホラー(という表現が正しいかわかりませんが)に持っていこうとしているような。ラストが決まっていたなら、前半で彼女の妖艶さをもっと表現して欲しかったです。「暗い瞳」だけでなく、どのように暗い瞳なのか。そういう表現を加えると、彼女の雰囲気が「少しくらいはカワイイ」というような表現でなくとも、読者に伝わると思います。それから「彼女の穏やかな愛が退屈になって、通りに立つ女を抱く」までの展開が早すぎというか、そこがとても乱暴な感じです。もう少し練れば、通りの女を抱かなくても、彼女の狂気を描くことは出来るように感じました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 17:31) フォント
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奇麗な文章だなあと思いました。書ききれていない面を、頑張ってもらえるともっとよくなると思います。ぼくは好きしたね。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 18:11) フォント
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よくある話かもしれませんが、一気に読むことができました。
アイディアはまずまずといったところでしょう。
独特の文章ですね。好き嫌いがはっきりと分かれるだろうと思います。次回作を楽しみにしています。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 01:20) フォント
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段落を下げていないのに、改行されている部分が目立ちます。おそらくその前の文末に続けないように、意図的に文頭に持ってきたのだと思いますが、そういう場合は段落を下げてください。段落を下げている部分もあるので、下げ忘れでしょうか?

最初の『今夜もこの腕にキスをする』と、ラストの『今夜も抱かれて眠るのだろうか』は矛盾しているような。と、細かい突っ込みですみません。
最初の『今夜も』は削るか、もしくはラストを『これからも』にするとか。でも浮気がばれてすぐ刺されたのなら、最初の『今夜』を削る方が良いのか。うーん。まとまらなくて申し訳ない。

確か会話文などの閉じかっこ(」)の前以外の「?」「!」マークの後は一マス空けるのではないかと思います。だとすると彼女のセリフの中の『この腕だ!って』の後は一マス空けるのが正解かと思います。
これは私もちょっと自信がないので、それは違うというご指摘があったらおっしゃってください。(などと言いつつ自分の批評文では段落下げもこの空白も割愛しています)

『しばらくして〜罪悪感で悩んだ。』は、もう少し推敲することをお勧めします。
具体的に書くと、『彼女の穏やかな愛』は、彼女側から発する『彼女から感じる穏やかな愛』なのか、僕と彼女との間の関係を表す『彼女との穏やかな愛』なのかがわかりづらいです。
『僕の何か』は「僕の中の何か」にした方が、より開放感を表せるような気がします。
『身体から得た満足感と彼女に対する罪悪感で』は並列にせず、間に接続詞などを挟んで対比させた方が良いと思います。
文字数を変えないようにするなら、「僕の中の何かが解放されたような夜だったが、肉体の満足感とは裏腹に彼女への罪悪感に苛まれた」とするのも手ですし。
文字数がきつかったのかとはお察ししますが、お互い頑張りましょう。

個人的にはこういうホラー仕立ての話は大好きなので、次回も期待させていただきます。
□ともろさんからの批評 (2003/10/13 15:34) フォント
発想
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総合
「発想」:
枕→腕枕にした時点で良い発想力だと思います。前半はかなり緊迫感があって素晴らしい。

「構成」:
起承転結を理解してるという印象でした。テンポもいい。後半はやや焦りすぎたような印象を受けました。

「表現」:
最初に一行が良い。文句なしに読者を引き込む。ただ表現自体に味がないというか、独自性がありません。読者の目を引くような斬新な表現が欲しいところでした。

「総合」:
楽しんで読めたので「花」としました。オチの陳腐さはやはり否めませんが。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 23:49) フォント
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総合
個人的には、序盤のロマンスで持った興味が、オチでちょっとズレた感覚がありました。
文章はとても上手いと思います。こういうホラーがあまり好きではないだけかもしれないです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 07:28) フォント
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彼女、恐ろしかったです。
ただ、文字数制限があるからだとは思いますが、最後のほうがあらすじだけになっていたのはすこし残念でした。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 12:12) フォント
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「ゲーム・キッズのような印象」に賛成。普通に楽しめました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 15:06) フォント
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こんな感じでしょうか。
趣味の問題ですけど。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 02:02) フォント
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こういう話の場合、抽象的な事項から具体的な事項を書いていった方がいいような気がする。
終盤は逆に色々情報をつめない今の感じのほうがいいと思った。突然文章が終わってもいいし、彼女が主人公の腕を切り刻む様子を描くのもありかもしれないけど(その場合、えらく人を選ぶ作品になってしまいますが)
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 02:10) フォント
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うーーむ、ゲームキッズシリーズ?男性からすると包丁で刺されるほど愛されているという設定はいいですが、(タトエ腕だけでも)ジョセイはそこまで優しくありません。包丁で刺されたラストに違和感(やはりこうくるか?とはおもいつつ)包丁で刺す優しさと、性愛には執着しないジョセイ。ううむ。どうなんでしょ?私が知ってる限りでは黙っていなくなるという、うん。
このジョセイは左腕フェチで、家には左腕が沢山あるとかだと、ステキだなぁ。(ほんとか)なんだか感想文になってしまい、申し訳ない。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 17:37) フォント
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 ストーリー的には悪くないのですが、会話文の組み込み方をもうちょっと考察することをお勧めします。
 会話文を独立させるのであれば次の文章は段落を変えますし、地の文に入れるのであれば会話分も含めて一文になるはずです(例えば『ある日、僕は彼女に、「どうしていつも一人なの?」と声をかけてみた。』とか)。
 必要ない改行もあったので、段落について研究してみてはいかがでしょう。

 感情移入がしにくかったです。心理描写がもうちょっとほしいところです。それと、彼女との馴れ初めは詳しいのに、物語のラストが唐突でした。慌てて終わらせた感じがします。
□名無しさんからの批評 (2003/10/22 00:14) フォント
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総合
ラストが慌てて終わらせたと言う感じを受けます。
もう少し彼女との出会いなんかを短くまとめて、ラストの展開に重点を置いてほしかったです。
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