「キャンパスと絵の具」
朝倉海人
 真っ白な、ただ真っ白な風景が僕の前に広がっていて、僕はその一面の白い場所に立っているのでした。左右どちらを見渡しても何が建っているわけでもなく、誰がいるわけでもない、そんな所に立っているのでした。
 さてさて、僕は一体これからどうしたものかとその場で考え込んでいますと、白い地平線の辺りで一人の年を取った男が歩いているのです。僕はとにかく誰か人と言葉を交わししたくて、その老人の方へと歩を進めているのでした。しかし、10分20分と歩き続けても目的の老人の所に着くことはなく、僕は少しばかり途方に暮れる思いで立ち止まるのでした。そもそも真っ白な空間で、僕は果たしてちゃんと進んでいるのかという確たる証拠はここには何もないのでした。
 「どうしました?」
 右隣を見てみると、そこには一人の警察官らしい制服を着た中年の男が聞いてくるのでありました。僕は、そんな所に人が居ただろうかと疑念を持ちましたが、今までの経緯を話したのです。警察官は耳に残る笑いをしながら僕の左前方を指差して「向こうに行きなさいよ」とだけ言うのでした。僕が礼を言ってその通り歩き出すと、先ほどの老人がそこに立っているのでありました。果たして僕はどこにきたのでしょうか?ということを尋ねてみると、「ここはあなたの心ではありませんか」と言うのです。はて、僕の心とは一体どういうことでしょう?と再び聞いたものの、老人はそのまま笑顔で立っているだけなのでした。
 「あなたの持っている枕を使いなさい」
 老人はそう言うと、僕の持っている枕を指差すのです。僕はこんな物を持っていただろうかと不思議に思いましたが、その枕を見ていると、何だか横になりたくなってくるのです。
 「横になりなされ。早く横になりなされ」
 老人の言葉に動かされるように僕は横になりました。すると、何やら僕の額辺りから飛び出していくのでありました。それら額から飛び出したモノたちは、この白い世界の四方八方へと飛び散っていくのです。そして一面白い場所でしたここも次第に黒くなっていくのでありました。
 「中々のモノをお持ちで」
 老人はそう言うとその場から立ち去ってしまうのでした。僕は慌てて追いかけようと必死に起き上がるのですが、この心地良さのせいなのか、起き上がることが出来ないのでありました。
 僕がこの枕で横になっている間、それまで静寂だったこの空間のあちらこちらから、叫び声にも似た不思議で不気味な、苛立たせるような音が響いているのです。僕はその音にまるで共鳴していくように、腐っていくのでありました。それすらも心地良いと感じるこの枕に抱かれ、僕は最早居なくなっているのでありました。
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□名無しさんからの批評 (2003/10/11 10:28) フォント
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真っ白な仮想的世界(心の中?)における僕と老人とのやり取りを中心にした短編。
仮想的世界を舞台にした小説の場合、それが現実世界とどのようなつながりを持っているのか、あるいは小説中で使用されるメタファーが現実世界における具体的な事象とどのような関係にあるのか等が小説の深みやおもしろさを測る上で重要な点となる。しかし本作品においてはそのつながりがはっきりせず、よってなぜ警察官が登場するのか、なぜ老人でなければいけないのか、心の中とはどういうことか、枕の意味するものは何かといったことが説明されないまま曖昧な状態で残されており、どこか宙ぶらりんな印象を受ける。またタイトルも作品に深みを与えるというよりは作品を安っぽくしている感があり残念だ。次作に期待したい。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 11:48) フォント
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冒頭部分から強く引き込まれて一気に最後まで読みました。が、(上の人と被りますが)結局これが何を示唆しているのかがはっきりと解らないまま終わってしまいました。私の読み方が甘いのかもしれませんが、読者を選ぶ作品なのかな、と。
□匿名さんからの批評 (2003/10/11 21:57) フォント
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取りあえずスーッと読めました。
情景も一番思い描きやすかった。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 22:54) フォント
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正直何がなんだか解らなかったです。こういうのは全てのイメージをつかむ必要はないのかもしれませんが疑問というか「何?」という個所が多すぎる。
読み手の問題なのかもしれませんが・・・

文章イメージは灰色の霧です(謎)
□匿名さんからの批評 (2003/10/11 23:16) フォント
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個人的にはとても好きなタイプの文章です。『僕』の世界に現れる各人物も唐突過ぎて、自分には心地のいい文章です。文体も世界観とよく合っていると思います。
ただ、文章のテンポが悪く、読んでて何かに引っかかるところがありました。具体的には、最初に老人を追いかけるところや、老人と会話を交わし始める部分が、少し不自然な印象を受けました。
後は、ラストで何が起こっているのか、具体的に想像できる材料がもう少し欲しかったです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/12 14:55) フォント
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私の感じたことは、一番最初に批評されている方のものとほぼ同じだったりします。むしろ読後にもやもやと感じていたものが、先の方の批評を読んで、「そうそう、これが言いたかったの!」と具体的に見えたくらいで…。そこをあえて、私の言葉で批評させていただきます。

読み終えた時、結局何が言いたかったのかが全くといっていいほど見えませんでした。文中に登場するものが何を比喩しているかを示すヒントが、少なくとも一読した限りでは見当たりません。それを期待しつつ読み進めていったら、見つからないまま終わってしまった、という感じ。
個人的には具体的表現を避けた文章は書く上でもとても好みなのですが、この手の表現を使う上で最も配慮すべきは、果たしてこの表現で自分の書きたいことが読者に伝わるのか、ということなのだと思います。(私自身まるで上手く出来ていません。上からものを言うような書き方になってしまい、申し訳ありません)

言葉の選び方や構成の中に、読み手を惹きつける魅力はとてもあると思います。次回作を楽しみにしています。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 13:52) フォント
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一読、よくわからなかったので繰り返して読んでみました。理解するよりも雰囲気を味わうための文章なら、「〜のでした」の多用が気になります。引っかかって読みづらかったので、使うなら要所だけにするともっと効果的だと思います。もっともその「〜でした」文が不思議な雰囲気を醸しているという面もある気がしますが。もうすこし洗練されたらもっと良くなると思うので、頑張ってください。
あと、「起き上がるのですが」「起き上がることが出来ない」というのは矛盾していると思います。最後の一段落もすこし唐突に感じました。

□名無しさんからの批評 (2003/10/13 14:12) フォント
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ユングの夢の世界かなーと思って読みました。
「その場所」とは無意識の世界で、警察官はオールド・ワイズ・マン(知恵者や賢老者)、歩いていた男はシャドウ(生きられなかった自分の反面)のようなもの?と気が付いたらそう思って読んでました。

額から飛び出したものは、彼が現実逃避したいモノ達で、枕は、無意識と現実を結ぶ入口だったのか?とか。
短い文章で深く読ませる小説です。
枕のお題をすんなりと、しかもこの小説になくてはならない「物」として出してくるあたりも上手だなあと思います。

□名無しさんからの批評 (2003/10/13 19:32) フォント
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言葉で世界を一から創りだそうとしているように感じました。表現はよいと思います。ですが1200文字の限界でしょうか、完全には創りだせないまま終ってしまったような印象を受けました。
この短さにあわせた世界を表現できるような物語か、話の流れを選ぶ必要があるかと思います。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 16:14) フォント
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分かりやすい解釈なんてさせてやらん、という強い意志を感じます。その上で強い印象を残す描写があると良いのですが、この作品には感じられませんでした。

壊れた世界なりの統一感が希薄なのが一番の問題だと思います。

ところで「中々のモノ」という表現にはこの作品にそぐわない下品な響きを感じました。これは私がその手の文章に毒されているからでしょうか?
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 15:27) フォント
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こういう話も、表現方法もとても好きです。
文章力もあって見習いたいです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 18:35) フォント
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独自の世界観を表現しようとされているのはわかるものの、読み手を選ぶ作品といった印象を受けました。それが狙いなのかもしれませんが。内容を完全に理解出来るまで、読み返そうとは思いませんでした。なので一読した感想です。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 01:20) フォント
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独自の世界を作り出す場合、どれだけ短い文章の中に意味を持たせ、尚且つその文章が重くなりすぎないようにしなければならないでしょう。
解釈が出来ない云々は、読み手各人の判断なので触れませんが、書き方は面白いと思います。
淡々と流れていく中でどれだけ読者を惹きつけるかだけだと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 13:04) フォント
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「のでした」と言う言い方がどうも好きになれませんでした。この言い方が多用されているので気になってすんなり読めませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 01:23) フォント
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冒頭部からして、読者に「非現実の世界だ」という認識を与えることには成功していると思います。

『のでした』『のでありました』の繰り返しは独特のリズムを生み出しているかとは思いますが、個人的には読んでいて疲れました。

『右隣を見てみると、〜聞いてくるのでありました。』は文章がおかしいと思います。

↑でも指摘されていますが『必死に起き上がるのですが』は「起き上がろうとするのですが」で良いのでは?後の『起き上がることが出来ない』と矛盾を感じました。

↑「分かりやすい解釈なんてさせてやらん、という強い意志を感じる」「読者を選ぶ作品なのかな」「読み手の問題なのかもしれませんが・・・」などと皆さんもおっしゃっていますが、私も独特の世界観を感じました。
それが良いか悪いかは別の話ですが、好きな人と嫌いな人が二分されるだろうなと思います。

最初の評者の方もおっしゃっていますが、タイトルと中身が合っていないと思いました。内容と比べるとタイトルが軽すぎるかという気がします。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 21:23) フォント
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独特な世界観ですね。理解力のせいか、ちょっと解かりづらかったですが、いい雰囲気だと思います。「…でありました」という語り口調の物語は馴染みがないので飲み込むのに時間がかかりました。
それと、根本的なことなんですけど、タイトルはにある「キャンパス」というのは大学のことだと思うんですけど。あのー、キャンバスじゃないでしょうか……。
□匿名希望さんからの批評 (2003/10/24 07:26) フォント
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コトバが美しい。警官がでてくるのも何かのメタファー?なんて思ってしまいます。結末の部分はきっと悩んだんでしょうねーー。楽しませて頂きました。次回作、期待しています。
□アオイさんからの批評 (2003/10/30 12:17) フォント
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ストーリーも、雰囲気も、「〜のでありました」という言葉も、私の好みに入ります。ただ、老人が去ってしまったあとのラストは、もう少しパンチの効いた表現が欲しかったです。なんとなく余韻は残ったのですが。
□名無しさんからの批評 (2003/11/06 06:10) フォント
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夢の中で夢を見ているような、つじつまの合わない世界にいるような、そんな雰囲気に読者を連れていくのは巧いなぁと感じました。ただ、なんかそれだけ、って感じを受けました。世にも奇妙な世界みたいな…こういう物語はどんな終わりがあっても良いんだろうけど、読後、あまり良い感じがしなかったのが残念です。
文章表現は巧みだと思うので、もう少し、書きたいこと、伝えたいことを見せてくれたら良いのにな…と思ってしまう作品でした。
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