「忠告」
セツナビト
『私ヲ投ゲナイデ下サイ……』
 そんな声が聞こえたのは、枕を持った腕を大きく振りかぶった、まさにその時だった。
 ぎょっとして、俺は腕を下ろした。両手で枕を抱え、見つめる。黒い生地に少し固めの白い布を巻きつけた、何の変哲も無い枕だ。顔を上げて、部屋を見渡してみる。この部屋にいるのは、同室の友人たちだけだ。修学旅行二日目、しかも和風な趣の部屋での夜ということもあり、皆楽しそうに枕を投げ合っている。多少問題はあるかもしれないが、特におかしな点は無い。
 あんな、妙に低くて、どこか悲しげな声で、何故か英語なまりな言葉をしゃべる存在など、この場にはいないはずなのだ。
 軽く頭を振って、俺は枕を足元に捨てた。ぼす、と音がする。そこから目をそらし、別の枕を拾おうと足を踏み出した、その時。
『……痛イデス……』
 次の瞬間には、俺はすでに枕を拾っていた。聞こえた。はっきりと聞こえた。何だ、何だ、何なんだ。枕を持つ手が震えた。
 そんな俺のすぐそばを、枕が飛んで行った。背後で、ぼす、と音がする。
「何やってんだよ。突っ立ってねえで、とっととその枕投げろよ」
 そう言いながら、友人のイガグリが近づいてきた。そんなことを言われても。俺はふるふると頭を振ることしか出来なかった。イガグリが、怪訝な顔で俺を見た。しかしすぐに、興味なさげに目をそらし、俺から離れていった。
 俺は、再び枕を見つめた。まさか。そんなことがあるのか。夢でも見てるんじゃないのか。ほほをつねってみる。痛い。じゃ、じゃあ、まさか本当に――
「何だ、今ごろセンコーにびびってんのか」
 顔を上げると、イガグリが大きく腕を振りかぶっているのが目に入った。そして、
「よ」
 という声とともにイガグリの腕から発射された枕が、俺の腹に命中した。
 一瞬の大きな痛みと動揺ののち、俺は、
 枕を投げていた。
 大きく腕を振りかぶって。手首のスナップを利かせて。ありったけの力で。
 枕が、イガグリに向かって飛んでいく。しかし、奴は体をずらし、それをよけた。
 そして、自分がした行為を理性が認識した直後、枕はイガグリの背後にある窓のガラスに衝突した。そのまま、耳を貫く強烈な音とともに、ガラスを突き破っていった。
 部屋が、しん、と静まり返る。
 そんな中で。
『ダカラ、投ゲナイデッテ言ッタノニ……』
 ふうっ、と、耳に息がかかった。
「っぎゃあああ―――!!」
 自分の絶叫が、部屋に、そして頭に響く。それが引いていくのと同時に、俺の意識もフェードアウトしていった。
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□名無しさんからの批評 (2003/10/10 01:28) フォント
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「私を投げないで」といっているのが枕であることは分るのですが、作者が伝えたいことが分りませんでした。
耳に息がかかったという節も必要性を感じないし、その声が聞えたことに対する恐怖心とかそういうものがまったくわかなかったです。
枕を投げて硝子を割ってしまった時点でその声は消えているはずなのでは?
表現としては改行の入れ方が絶妙で素晴らしいものがありました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 02:09) フォント
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文章は特に問題なく読めて、むしろうまいと思えたのですが、どうしてもラストが謎です。
オチをつけるためにはこうするしかなかったのかもしれませんが。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 12:07) フォント
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良いテンポで読ませてくれる作品だと思います。
ジャンル的にはホラーになるのでしょうか。
読者に「恐い」と思わせるなら、『耳に息がかかった。』というところで物語を終えてしまったほうが面白いかもしれません。ぞっとします。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 00:12) フォント
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『私ヲ投ゲナイデ下サイ……』と言っていたわりには、ガラスが割れただけなのには残念な気がしました。もっと、「何か」が起こった方が面白いと思います。彼らが後悔するような何かが。
正直、ガラスが割れてそれで?と思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 15:36) フォント
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上の批評と大体同じです。「忠告」というからにはもっとすごい(あるいはひどい)何かが起こって欲しかった。
あと、これはホラーでしょうか?読んでいて怖さはあまり伝わってきませんでした。怖がればいいのか笑えばいいのかわからない、という感じです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 23:22) フォント
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文章の流麗さは読んでて楽しいです。でも理不尽さを楽しむには文章量が少なすぎるかと思った。喋る枕が起点になっててしまってて、あんま理不尽じゃない気がしてしまう。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 12:43) フォント
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途中まではテンポ良く読めたのですが、ラストがどうにも納得いきません。既出ですが、耳に息を吹きかけたのは誰かわからないし、あの台詞で気絶するほどのショックがあるとも思えないのです。『ダカラ、投ゲナイデッテ言ッタノニ……』の「だから」にあたることは何かと考えれば、明らかなのは「ガラスが割れた」ということだけで、それは特に恐ろしい現象でもないように見えます。ホラー調な話だとすればもう少しそれらしい装飾があっても良いのかな、と思いました。枕が血を流した、とか。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 16:35) フォント
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この路線で行くならオチ一本勝負です。それが何事もなく終わってしまってはどうにもなりません。文章は普通に読めました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 19:23) フォント
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話の展開の仕方はうまいと思いました。
しかし、内容を振り返って考えてみると、ガラスが割れた後からが勝負なんじゃないかと。英語混じりの発音というのも生かしきれていないのが少し残念でした。
□cc2さんからの批評 (2003/10/14 21:08) フォント
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何が言いたいのか、良く分かりませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 00:46) フォント
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テンポのいい文章でしたが内容に共感も出来なければ唸るものもありませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 00:48) フォント
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すいません、↑の者ですが間違えました。
発想 葉
構成 葉
表現 蕾
総合 葉

です。
□匿名さんからの批評 (2003/10/15 12:51) フォント
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学生の立場からした場合、枕投げでガラスを割ってしまったという事もそれなりに重みのあることだと思うので、枕の淡々とした口調と学生らしい深刻さが、逆に物語にいい軽さを出していると思います。
ただ、落ちの部分がそれまでの雰囲気とずれている印象を受けました。急に重々しい怖さを出そうとして、無理しているという感じでした。「俺」の悲鳴はなくてもよかったと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 19:42) フォント
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文章力のある方ですね。
ただ、オチが今ひとつでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/16 12:51) フォント
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ストーリーとしてはとても面白かったです。枕がテーマと言うことに関して真正面から向き合った作品で、しかもんネタがわかりやすいです。
ただ、最後に枕は外に飛んでいったはずなのに、どうして耳元で声がするのかがよくわかりませんでした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/19 15:23) フォント
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期待させる構成と表現であったために、最後のオチの弱さが残念です。
□名無しさんからの批評 (2003/10/24 01:32) フォント
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だいたい他の評者の方が書いて下さったので、わたしの感じたことを。
作者の方がまだ「何を書きたいのか」をはっきりさせていないような感じを受けました。あれもこれも、と欲張って、結局まとまりのない短編になってしまった、というような…。
途中までとてもテンポ良く読めたのに、ラストが急にホラーちっくになってしまったのは残念。こんなに少年らしさが描けているのだから、いっそ先生に怒られちゃうくらいのベタなオチの方が、可愛いんじゃないかって気がしました。ホラーが書きたかったのなら、もう少し文章に陰湿さを持たせた方が入りやすいかも、と思いました。
個人的にはカラッとした文章に好感を持ったので、爽やかな物語を読んでみたいです。頑張って下さい。
□名無しさんからの批評 (2003/11/01 05:25) フォント
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枕で窓が割れるのか、という突っ込みを入れたいところですが、それ以上に、枕からなぜ片言の日本語が発せられたのかがわかりません。

すべての小説にオチが必要とは言いませんが、この場合は「実はこの宿に逗留していた外国人がいて、その人が非業の死を遂げた。この枕はその人が使っていたのかも」くらいの
オチがないと、読者は納得できないでしょう。

かなり多いので具体例は挙げませんが、読点が多すぎます。

改行する必要がないところでの改行も気になります。こっちは例を挙げます。
『一瞬の大きな痛みと動揺ののち、俺は、』と『枕を投げていた。』は「俺は枕を投げていた」で良いのでは。
『部屋が、しん、と静まり返る。』と『そんな中で。』は「部屋がしんと静まり返った中」でも良いかと。
 

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