「枕」
梁瀬 陽子
 長年使い続けてきた枕がとうとう破れてしまった。仕方なく一番近くの大型スーパーに出向くと、スーパーとはいえ結構な種類があるものだった。しばらく剥き出しにされた枕たちを撫でたり押したりしてみたが、一向に判断材料は見つからなかった。
「枕、おさがしですか」
「ええ」
 店員に声を掛けられて内心ため息をついた。高い買い物をするのが落ちなのである。
「どんなものをお使いだったんですか」
 店員は台詞をつないだ。
「あの、このくらいの……」
 と、愛用た枕の大きさを手でかたどる。
「まあ、ずいぶん小さいのをお使いでしたのねえ」
「ずっと使ってたものだったんで……」
 実際、枕といえばずっとそれだった。子供用のものだったのかもしれない。
「まあまあ。貴方なら、そうねえ、このくらいがいいんじゃないかしら。中身は何を使っていらしたの」
「ソバガラです」
「ソバガラねえ。今の主流はクッション製のものなんですけどね。でもソバガラ使っていらしたんなら固めのものが良いですかねえ」
 指し示されたまま棚に並べられた枕を触るが、ただちょっと頼りないような、そんな感じがしただけだった。
「これはどうかしら」
 コーナーの奥から店員が抱えてきたのは少し小ぶりの枕だった。しっかりしていてかつ通気性がいいのが特徴だと彼女は続けて説明した。
「ちょっと寝てみて」
 言われるままにベッドに寝そべると、いつものずっしりとした安定感が感じられた。
「ああ。いつもどおりです」
 なんの感動もない言葉だが、店員は「じゃあそれがいいわね」と笑顔で言った。
「カバーはこれなんかどうかしら」
 山積みのワゴンから青、緑、灰色の三種類が取り出された。
「じゃあ、これで」
 布団が青っぽいということで青を選んだ。
「これで大丈夫?」という確認にうなずくと、店員は「カバー着けときますね」といって、包装をやぶり始めた。
「いいんですか」
 なにもそこまで、と思いつつ聞いた。
「いいのよ。お兄さん学生さんでしょ、ちょうどウチの息子とおんなじ感じなのよー。あら、こんなこと言ってごめんなさいね」
 照れ隠しの笑い顔で店員はカバーを着け終えると、くるりとそれを包装紙で包む。
 案外に安い会計を終えると、彼女は晴れやかな笑顔で枕を手渡した。
「ありがとうございました」
 見送られて売り場を後にすると、くすぐったいような微笑が自然と浮かんできた。
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□名無しさんからの批評 (2003/10/10 14:14) フォント
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さらさらと読めました。
情景がよく浮かぶし、最後の店員が照れ隠しで笑うところは読んでいる自分も何となく微笑んでしまう。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 15:28) フォント
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純粋に、読みやすかったと思います。会話が主体の文章で、日常のひとコマをひっかかりなく描けるのはすごい事だと思います。
批評というよりも、もはや欲を言っている状態なのですが、文章表現の部分がもっと洗練されていたらもっと楽しく読めたかもなどと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 17:50) フォント
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感動がありませんでした。
枕を買いに行ってますが、枕である必要がないような気がしました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 19:17) フォント
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文章自体はさらっと読めて、内容も好感が持てるのですが、全体的に物足りなさを感じてしまいました。なんというか、ただちょっと良い話を聞いた感じがするだけで、主人公に対して「ふーん、良かったね。それで?」と意地悪に言ってしまいたくなるような感じです。
もう一歩、読者というものを意識してアピールをしてみたらいかがでしょう。たぶんぐっと惹きつける作品になると思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/12 05:02) フォント
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微笑ましいお話ですね。こういうの好きです。けれど、これなら枕じゃなくても良かったのでは?とも思います。次は題を生かすような作品を書いてもらいたいです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/12 22:58) フォント
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文章は読みやすいですが、主人公がラストに来るまで女性だと思っていました。
枕に関するエッセイ?という感じで、物語としての面白味が感じられませんでした。厳しいですが、一応「小説である」という条件ですので、芽にさせて頂きました。
□Rさんからの批評 (2003/10/13 18:46) フォント
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短めの文であっさり綴っていますね。なかなか難しいはずなのに、こういうところに力があるな、と感じさせられます。

ただ、話としてはイマイチです。あまりにも淡々としているので、オチ(きっと、店員さんが息子のことを語るところなんでしょうね)が弱い。
どうせだったら、店員さんの描写がほしかった。主人公よりも店員が中心に描かれているので、描写はいるのではないでしょうか。私はとりあえず、女か男かで最初疑問に思いました。
その描写を生かして主人公がどう思い、それが最後にどう変わったか、というのが一番書きやすい「話」なんだと思います。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 16:45) フォント
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枕を買いましたか。そうですか。話はよく分かりました。では、さようなら。
□匿名批評者さんからの批評 (2003/10/14 19:03) フォント
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日常の1コマを切り取って、それをさらさらと読ませるというのはそれなりの技術がいるとは思いますが、この作品はどちらかというと「淡々と」という感じで、それが逆にエッセイに近くさせているのだと思います。
主人公の背景を織り込めばまた違ういいものになると思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 16:21) フォント
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感想が無いと言うか、「だから何?」と言う言葉しか浮かびませんでした。
文章はすらすら読めるものなのに、小説と言うよりは、ただの日記になってしまっているのが惜しいです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 20:15) フォント
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ほんわりした日常でしたが、小説となると・・・
文章力は認めます。
□匿名さんからの批評 (2003/10/16 12:46) フォント
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親元を離れて暮らす主人公が、枕を一緒に選んでくれた女性店員に母の面影を見て、懐かしい想いを覚えた、とそういう話なのかなぁ、と思いました。
主人公の境遇、女性店員の外見や人柄によって、大きく印象の変わる話だと思うので、前半で二人の描写がもう少しあるといいと思いました。
日常の一コマを切り取ってきたさりげない作風は好きです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/18 20:49) フォント
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 新しい買い物をすると、早く使ってみたくてワクワクしますよね。最後の文章は、「ああ、解かるなあ」と思いました。

 ただ主人公の性別が最後の方で明らかになるので、感情移入ができませんでした。最初の方で解かるようにしてあったら、また違うのかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2003/11/01 02:41) フォント
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細かい突っ込みで申し訳ないですが『愛用た枕』は誤字ですよね。提出前に読み直した方が良いですよ。

『台詞をつないだ。』という表現はこの場合おかしいような気がします。
「捨て台詞」とか「こっちの台詞だ」とか、あとは舞台やドラマの台詞かというくらい独特なものだと思うのですが。

会話文が多いせいか、地の文が状況説明になりがちで主人公の感情が伝わりませんでした。
日記を読んでいるような気になりました。小説であることを意識して表現を工夫してください。
□名無しさんからの批評 (2003/11/01 21:17) フォント
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皆さんの指摘の繰り返しになるのですが、私も最後まで主人公は女性かと思ってました。小説というより日記という感じで読後に何の感想も残りませんでした。「愛用た」という誤字も気にかかりました。
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