「that is my dearest blue sky」
小野寺けやき
 夜明け前の、何もかもが静まり返る時間には、心の中が真っ暗になる気がした。
 それならば眠っていればいいのに、目を開けて思考を閉じずに、明るくなる空を一人きりで見つめた。それはこの街に一人で暮らし始めた私が、最初に覚えたことだった。
 他の誰とも交わらない時間が欲しいと思う、それ自体は随分と昔からのことだった。一つだけ、長く住み慣れた街を離れて変わったのは、そんな時間に決まって、暗く深く重苦しいものが胸へ訪れるようになったこと。
 太陽の下では笑って過ごし、夜にはその静けさに漂って。そして秋と冬を越した。誰の前でもこんなことは口にしなかった。一緒にいる時間は楽しくて、それで本当に充分だったから。それなのに、自分が触れられるところには何もないような気がしていた。

 今、目の前の窓の外。ほんのり明るんだ濃紺と家並みの間に、わずかのオレンジが差す。

 あの春の日。夜明けの光も奪う暗闇が私から消えた。コートを着て熱いお茶を口にしてもまだ、寒さの消えない部屋。だんだんと眩しくなっていく空を、あの人と二人で眺めた。
 ぽつりぽつりと話をしながら、人の働く時間になってもずっと、窓の外ばかり見ていた。夜通しで騒いだ後の、不鮮明な記憶だけど。ただ、空の色が雲の様がきれいできれいで、言葉もなくして見とれていたのは覚えている。私が知っている、一番きれいな空。
 あの人が隣にいたのは本当に偶然だった。それでも、私に至上の青を刻み付けたのは彼なのだ。薄暗い空が目覚めていく喜びを知って、そして幸福になった。
 何かの折に頭上を仰いでは、その色をいとおしむようになった。広がっていただけの空が、きらきら光っては私を幸せにした。あまりにも胸を打つ景色は、名前を呼んで知らせたくなる。ただ深遠だったあの夜明け前の空にさえ、そんな気持ちにさせられた。

 青から橙へのグラデーションを、水色が支配するまでは一瞬。初夏の朝は始まっていて、今頃は何をしているのかと、またぼんやり思う。今日も晴れたから、眺めていた窓を開けベッドの上の布団を外の空気にさらしてみる。
 最後に枕を持ってベランダへ。目線を落とした先には自転車や車の列が。ぽすんと、枕に顔をよせる。寝不足の頭がゆれて、春の日が蘇る。彼が帰った後もこの枕にゆられ、まどろみの中でひどく安心したのだった。

 あれから。とりまく気温も湿度も、毎日も変わった。その中で、この心地は失くさずにいようと強く思い続けている。あの人もそんな風に今日を迎えているだろう。それすらも糧になる。今はもう、しっかりと立てる。枕を陽の下に預け、一日の支度のために光あふれる部屋へと向かおう。
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□匿名批評者さんからの批評 (2003/10/10 01:34) フォント
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私の場合、まず読んで途中で止まることなく読めるかどうかというのを基準にしているんですが、この作品は読点のつけ方をもう少し工夫すると、リズムよく流れるように読める気がする。
また、体言止めを多様し過ぎている感じが個人的にする。体言止めは一度や二度なら効果的に作用するのだろうが、あまり多用するとリズムが悪くなる。
表現方法とかはいいと思うので次回に期待したい。
□名無しさんからの批評 (2003/10/10 12:38) フォント
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読点が多く、体言止を多用することでぽつぽつと語るようなリズムだと思いました。
一段落でのリズムはそれでいいのだと思いますが、全体の流れが掴みにくかったです。
私の気持ちがどこからどこへ流れているのかが解りずらく、最後の一文であっけにとられた印象でした。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 15:11) フォント
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私が好む文章とは多少違った表現方法であったので、批評するのに苦労しました。
全体的に歯切れの良い文章だと思いました。
最後の段落の「あれから。」など段落の最初に短めの一文をよく差し込まれているように感じましたが、「あれから、」でも良いような気もします。好みの問題かもしれませんが。いずれ白黒つけてみたいです。(自分だけで)
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 19:40) フォント
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詩的な表現が上手いなあ、と思いました。
ただ、そのせいでずいぶん現実感が薄れてしまっているというか、なんとなく恋している女の子の、えらい美化した自分語りのように見えてしまわなくもないです。
結局読者に何を思わせたいのかという部分を、もう少し明確に解るように書いてみると、かなり印象が変わるかもしれません。
□名無しさんからの批評 (2003/10/11 23:14) フォント
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短いスパンで読むと印象深いのですが、全体を通すとバラバラした感じがします。
物語的には線香花火のような儚さが持つ美しさ的なイメージがしました。

文章イメージはサナトリウムです(謎)
□若葉さんからの批評 (2003/10/12 21:16) フォント
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 色彩の豊かな文章で、カラフルな情景が想像できました。

 ただ、やはり体言止めが気になります。というか、読点でいい箇所を句点にするから体言止めになってしまう訳で。厳密に言うと、『他の誰とも交わらない時間が欲しいと思う、それ自体は……』この読点は読点でいいと思うし、『夜にはその静けさに漂って。そして秋と……』この句点は読点がいいと思います。ぜひ句読点の付け方の違いを研究してみてください。

 いろいろ細かいことを指摘しましたが、こういうリリカルな作品は大好きなので、今後を期待します。頑張ってください。
□若葉さんからの批評 (2003/10/12 21:19) フォント
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 上(↑)で批評した若葉です。ミスがありました。ごめんなさい。

 厳密に言うと、『他の誰とも交わらない時間が欲しいと思う、それ自体は……』この読点は句点でいいと思うし、でした。
 失礼しました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 13:34) フォント
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キレイな文章だと思いました。
ですが、読み終わって曖昧な気持ちになりました。
もう少し読み手に作者の読ませたい部分をアピールすると読みやすくなると思います。
□名無しさんからの批評 (2003/10/13 13:51) フォント
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現在と過去を行ったり来たりする視点の揺れがあるけれど、それ自体は文章の流れに起伏を持たせていて良いと思います。ただ、「私」の視点からの一人語りに終始して、客観的な立場からの「私」が見えてこないためか、話全体が雲の上を歩くような不確かさに覆われている気がします。小説として読むには物足りない感じがあるので、「私」と世界を繋ぐ描写をいれた方がよいと思いました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 00:19) フォント
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韻文を評価できるほど傲慢ではないつもりです。エンタティメントとすれば読みづらさがあると思いますけど、構成をいじれば読みやすくなるところがあるのかもしれない。具体的に思いつかないですけど
夜明けの静けさは僕も好きです。こんな日は仕事休みますけど。
□水夫さんからの批評 (2003/10/14 17:12) フォント
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「ひとり」「彼との夜」「現在」という3部になっているのかな。全体として散漫な印象です。

タイトルにもあるとおりテーマは枕じゃなくて「空」でしょうか。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 22:23) フォント
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文学少女の習作といった具合でしょうか。文章表現に作者が酔っている様な気がしますが、読み手はもっとシビアかと。僕は2〜3行読んだ段階で読む気をなくしました。
□名無しさんからの批評 (2003/10/14 23:28) フォント
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最初に読んだ時の印象は、二次創作っぽいっというものでした。えぇと、悪い意味で。

表面的な言葉の羅列の背後に作者が見ている具体的な光景(オリジナル作品の世界観等)というものがあって、作者はその世界観に浸りきって文章を書いているのだけれど、その世界観を共有していないものにとっては今ひとつつかみ所がないとでもいいましょうか。

重要なのは二次創作であるかどうかという点ではなく、作者がその内に浸って書いているような世界を読者が共有しきれないということです。ナルシスティックと言っても良いかもしれません。自分が書いたものが自分以外の力によって否応なく壊されていくような経験(曖昧ないい方ですが)をされることも必要かと。

厳しいことを書きましたが、これからもがんばってください。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 01:55) フォント
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That's a poetry.って感じでいいなあ。詩が連続しているという感じかなあ。スキだな。うんうん。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 16:00) フォント
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ちょっと読みにくいと言う印象を受けました。誌的な文章を目指したとは思いますが、句読点の使い方が気になります。
また、この文章のテーマとしては枕は適切では無いと感じます。今月のテーマが枕だから最後に枕をとってつけたと言う感じをうけます。
独特な表現力を持った方だと思うので、今度はテーマに率直に向き合った文章が見たいです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/15 20:50) フォント
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全体的にとてもいいと思いました。
好みです。
□名無しさんからの批評 (2003/10/22 10:48) フォント
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物語である、という条件を考えると少しずれているような気もします。
文章表現は素敵だと思いますので、次作に期待します。
□匿名さんからの批評 (2003/10/23 12:55) フォント
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詩的な描写が多い文章ですね。一つ一つの表現はとても素敵だと思いました。
ただ、表現を頑張りすぎて、ストーリーの流れや全体のまとまりがちぐはぐな印象を受けました。頑張って文章を読まないと、よくわからないというか。国語のテストの問題文のような感じ、というと頑張り具合がわかるでしょうか。
手段(詩的表現をふんだんに使うこと)のために目的(小説を書くこと)があるという感じもします。
雰囲気を楽しむ小説、という目で見れば、良い作品だと思います。
□名無しさんからの批評 (2003/11/01 04:48) フォント
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総合
確かに体言止は多いかもしれませんが、表現力はかなりのレベルだと思います。

厳しいことを言いますが、小説としてのインパクトに欠けることが、この作品の致命的な欠点のような気がします。
アップされてから何度か読んでいて、読んでいる時には上手いなと思えるのですが、何度読んでも読み終わるとどんな話だったのかが思い出せないのです。
テクニックだけに頼らず、内容を練っていただければと思います。

どなたかが指摘されていますが、私も『あれから。』は句点でなくて良いと思いました。

皆さん「詩的」とおっしゃっていますが、同意です。小説としてどうかということを意識した方が良いでしょう。
□名無しさんからの批評 (2003/11/06 05:52) フォント
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表現はとても美しいのに、こんなにも物足りないのは残念に思います。タイトルが言い訳みたいに思えてしまいました。普段は詩を書かれる方なのでしょうか?表現はどれをとってもひとつひとつ丁寧で作者の思いも伝わってくるのですが、「小説」となるともう少し読み手に託すものがあっても良いのではないか、と思います。書き手がその世界にどっぷり浸かりきってしまっているようで、読んでいて居心地の悪さを感じました。
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